天才過ぎて世間から嫌われた男が、異世界にて無双するらしい。

暗喩

第53話 男との再会。

ーーーーーー


ーー俺はふと、元いたあの世界の事を思い出していた......。


  辛い過去の中で何故か、一人俺に手を差し伸べる男の姿が蘇る。

  その男は、名前も顔も分からなくて、誰なのかもさっぱりだ......。


  しかし、俺がどうしても耐えられない辛い出来事に遭遇した時、必ず側に居てくれる、優しい存在だった......。


ーーだが、詳しい事は思い出せない......。


ーーまるで蜃気楼で包み込まれた様なぼんやりとした物だ......。


ーー只、親友と決別した辺りを最後に、彼の記憶は途切れる。


ーー実際にその記憶を朧げに思い出したのは、今、この瞬間だった。ーー


  キッカケは分からない。

  まず、本当にその様な事が本当にあったのかも疑わしい程に断片的な物であった......。ーー


ーー「雄二、どうしたの......?」

  馬を走らせる俺にしっかりと掴まっている桜が俺に向けて、心配そうな顔で声をかけてきた。

「ごめんな。ちょっと昔の事を思い出してしまってて......。」

  すると桜は、顔を真っ赤にしながら口を膨らませた後で、

「それ、キュアリスがダメだって言ってたでしょ。」

と、周囲に聞こえない程の大きさで俺を叱るのであった。


ーー何だろうか。


ーー最近は桜がどんどんキュアリスの様な発言をしてくる......。


  だが、俺はそれに対して考える事をやめて、

「悪かったな、これから気をつけるよ......。」

と、答えるのであった。


ーーそんな時、ミルトがみんなに向けて叫び出す。


「あっ!!あれって、『フレンディア』じゃない?!」

  俺はそれを聞くと、慌ててミルトが指を指す方向に視線を移す。


ーーそこに見えたのは街だった......。


  低い門の上から、多くの煙突が並び、そこから煙が立っているのが伺える。


ーーどうやら『フレンディア』とは、工業の栄えている街の様だ....。


  俺はそんな事を思った。


ーーそれにしても、あの亡霊の一件以来、野宿が二日も続いてしまった......。


  その問題について、部隊の疲労の観点から俺は、急いで休息を取る事を最優先する事に決めたのだった......。


ーーーーーー

  『フレンディア』の入り口門の中へ入ると、工場と思しきしっかりとした外壁の工場が見えた。

  それを囲む様にして所狭しに並ぶ木造の家屋......。

  その一つ一つには、小さな煙突があり、そこからの煙が町全体に焦げ臭い匂いを放っていた。


  俺はその街の様子を、今までの場所との違いから、衝撃を受けていたのである。

  そんな『フレンディア』にある軍の支部へと向かうのであった......。


ーーーーーー

  俺と桜、それに部隊の皆は、街の門から少し傾斜のある街の丘を登り、頂上付近に差し掛かった所で、支部を見つけた。


ーーだが、入り口が二つある。


  一つは、『ベリスタ王国 国王軍 フレンディア支部』と表記されており、この辺り一帯を守る組織である事が分かる。

  そしてもう一つは、その支部に隣接する様な形で存在感を示している、『ベリスタ王国 魔法専門部』と言うものだ。

  俺はそれを見た時、何故この工業の街に『魔法』の機関が存在するのか、甚だ疑問を覚えた。


ーーそれにしても、部隊の疲れも加味すると、一刻も早く休憩を取ってもらいたい......。


  俺はそう考えると、とりあえず支部の方の入り口のドアを叩くことにした。


ーーと、その時だった......。


「あれ?!もしかして、佐山雄二さんじゃないですか?!」

  その声は只、明るく、何処かで聞き覚えのあるお気楽な口調だった。

  そして俺は、声が聞こえる方へと振り返る......。


ーーすると、そこにいたのは、『ロンブローシティ』で出会った、フリードそのものだった。


  俺はそれに気がつくと、反射に近い形で、とりあえず返事をした。

「久しぶりだな。元気にしていたか?」

  俺がそう答えると、フリードは万遍の笑みで俺にこう言った。

「新聞を読んだら、雄二さんが戦争の一番手に任命されたって書いてあってビックリしましたよ!『国王軍』に入ったんですね!」

  彼のその、何の表裏のない口調に、部隊の皆は、只、呆然としていた。

  すると俺の隣にいた桜が、フリードに向かって、

「久しぶり!!家はちゃんと綺麗にしているの?!」

と、笑顔で手を振りながらそう喋りかけた。

  それを聞いたフリードは、桜にニコニコの笑顔で、

「当たり前じゃないか!!桜ちゃんが作ってくれた家だよ?!もちろん、増築に増築を重ねて、今では立派な『魔法』の研究施設だよ!!」

そう答えた。

  その発言に対し桜は、満更でもない表情を浮かべた後で、

「それなら良かった......。これからも、ちゃんと整理整頓して住むんだよ!!」

と大きな声で言いながら胸を張っていた。


ーーだが何故、フリードがここにいるのかがどうしても疑問に思った。


  そこで、俺は彼に問いかける。

「それにしてもどうしても、この街にいるんだ?」

  すると彼は、一瞬難しい顔をした後で、

「実は僕、『魔法専門部』の方に籍を置いているんですよ!それで開戦した事がキッカケで、僕にも召集がかかったんですよ!!」

と、さりげなく俺の知らない情報を伝え始めた。


ーーフリードもまた、国家の機関に所属するものだったのだ......。


  俺がそんな、狐につままれた様な顔をしていると、彼は続ける様にして疑問を投げかけた。

「でも、一番驚いたのは、キュアリスさんが『聖騎士』......。」

  俺はそれに対して、彼の会話を遮断して、

「じゃあ、俺達は支部に挨拶をしなければいけないので、またな!!」

と、言って、部隊の者達と共にすぐにその場を去ろうと試みた。

  その時、フリードはいつになく真剣な顔でこう言った。

「待ってください。後で、時間がある時にでも、『魔法専門部』の方に来てください。伝えたい事があるので......。」

  俺はそれを聞くと、

「わかった。夕方にはそっちに顔を出すよ......。」

と答えて、そのまま支部の中へと足を踏み入れるのであった......。


ーー彼のその真剣な雰囲気から、俺は何があるのか疑問を抱く......。


ーー全くと言っていい程、見当がつかないから......。

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コメント

  • ノベルバユーザー228500

    度が過ぎる天才の癖に毎回なんか苦労するよな
    すぐ考えるのやめるし…

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