天才過ぎて世間から嫌われた男が、異世界にて無双するらしい。

暗喩

第52話 その街の真相。

ーーーーーー

  宿舎に入ると、中には支部の兵士達がシェルフと同様に仰々しい態度を取っている。

  一度各々の部屋に戻り、支度をしたら食事を用意してくれるという話になり、俺と桜も同様に食堂へと足を運んだ。

  そこに全員が揃うと、支部長であるシェルフは俺達に伝えた。

「では、皆さんが揃った所で、食事の方に手を付けてください!!」

  部隊のみんながそれに対して、食事を摂り始めた。


ーー顔くらいある大きなステーキに、卵のスープ。


  その食事は、これから戦争に行く人間が摂るには余りにも豪華であった。

  更には、酒まで用意する。

  まるで今から宴会でも始めるかのでは、と思ってしまう程に......。

  俺はそんな大袈裟なシェルフに対して、

「飽くまで俺達はこれから、戦争に行くんだ......。だから、酒は控えさせて頂くよ。」

と、丁重にお断りするのであった。

  それを聞いたシェルフは少し残念そうな顔をした後で、

「そ、そうでしたね......。隊長殿、空回りしてしまい、失礼しました!」

と、ハッと我に返り答えたのだった......。

  それを聞くと、ミルトは残念そうな顔をしていたのだった......。

  俺はそれに気がつくと、空腹感から疑う事も忘れて食事に手をつけるのだった......。


ーーーーーー

  約一時間程で全員が食事を終えた。

  俺は満腹感から一つため息をつくのであった......。

  その、絶妙な味を堪能した後で......。

  桜も沢山食べ過ぎたのかお腹を抑えながら、

「ここの食事はすごく美味しいね!!まるで、キュアリスが作ったご飯みたい!!」

と、満足げにしていた。


ーーだが、『キュアリス』という名前を聞いた部隊のみんなは一斉に俺と桜を見た。


  そして、リュイは驚愕の表情で問いかける。

「隊長殿......。もしかして、かの尊き『初代聖騎士』と親しき関係なのですか......?」


ーーこれはまずい......。


ーー俺が入隊した理由が詮索されかねないのだから......。


  俺が『聖騎士』を目指している事は黙っていると、森山葉月と約束した。


  だからこそ俺は、慌てて桜の口を押さえた後で、

「いや、たまたま同じ名前だっただけだよ!それよりも、これから直ぐに今後における会議を始めるぞ!」

と、取り繕うのであった。

  するとリュイを始めとする部隊の連中は一瞬疑惑の目を向けて来たが、納得してくれた様子だった......。


ーー不幸にも知ってしまったミルトを除いて......。


ーーーーーー

  大袈裟なシェルフを始めとする支部の連中を完全に信用していない俺は、一つの会議室を借りる事にした。

  それをシェルフに伝えると、またもわざとらしい振る舞いで、

「大歓迎でございます!宜しかったら、食堂の隣の会議室をお使いください!」

と、快諾してくれた。

  そして、皆が再び集まる。

  俺はそれを確認すると、全員に『魔法』を掛けた。


ーーすると皆、一斉に頭を押さえるのであった。


「これは、言葉を発せずに相手に伝える『魔法』だ。」

  俺は、心の中でそう呟いた。


  俺がそう言葉を発する事なくそう伝えると、皆はそれに納得をした。

「この頭痛の原因は『魔法』でしたか......。でも何故、支部と言う安全な場所にいながら、この様な対策をするのですか......?」

  リュイがそう伝えてくると、俺は少し考えた。


ーーこれから戦争へ向かうにも関わらず、俺の憶測だけで不安がらせても仕方ない......。


  そして俺は皆に伝える。

「これは予行演習だ。今後も『魔法』による伝達を必要とする場面もあるかもしれん。その時にいきなりより、先に一度試しておいた方がいいと思ってな。」

  そうすると、皆はその説得力の前にひれ伏した。


ーーそれから本題へと入った。


  俺がどうしても伝えたかった事は、『ヘリスタディ帝国』の連中が『魔法』の類にかなり精通している事だ。

  俺も一度それにより足元を掬われかけた。

  だからこそ、彼らの『魔法』には注意をして欲しい。

  俺はその全てを克明に彼女達に伝えた。

「承知しました。それにしても、隊長殿は一度、あちらの軍と戦った事があったのですね!!」

リュイは俺の話を聞き終えると、無言のまま興奮している......。


  俺はそれに対して苦笑いしながら、
  
「たまたまな......。」

と、答えるのであった。
 
  そして、伝えるべきを伝え終えると、俺は皆の『魔法』を解いて部屋を出るのであった。

  部屋を出ると、シェルフが扉の前で待っていた。

「作戦会議はどうでしたか?とりあえず、今日の所は、ごゆっくりとお休みください......。」

  俺は、シェルフからそう聞くと、怪しさを覚えつつ、ある決意をした。


ーーこの場所で何かあったら、俺が全員を助ける。


ーーーーーー

  シェルフが用意した部屋へ着くと、桜は余程疲れていたのか、布団に入るなり眠ってしまった。

  俺はその潔いまでの寝顔を見て、微笑ましい気分にさせられる。


ーー優しい寝顔で寝ているな......。


  そのまま俺は、気を引き締めた。


ーーーーーー

  もう既に深夜になっている。

  だが、何かが起きるわけではない。

  何も起きぬまま、只、静寂だけが辺りを包み込む......。


ーーもう何時間この状況でいるだろう......。


  俺はその何もない環境で只管に有事を待つのであった......。


ーーそんな時、部屋の外から話し声が聞こえてきた。


  俺はそれを聞くと、その方向へと耳を傾ける......。

「こんなもんで宜しかったのですかね......。」

  男の声でそう聞こえる。

  それに対して、シェルフの声で、

「これだけの事をしたのだ。気持ち良く送り出そうではないか。是非とも、『ヘリスタディ帝国』を打倒して欲しいものだ。もう、やられてしまうのは沢山だからな......。」

と、俺達へのお願いとも取れる言葉が聞こえる。


ーー俺は、物音一つ立てずにその会話を聞くと、自分が勘ぐっていた事がどれだけ浅はかであったかを実感した。


ーーここまで労いの気持ちを持っている彼らを、疑ってしまったのだから......。


  俺はそれに関して反省をすると、自分の行動に恥ずかしさを感じて、ベットに入るのであった......。


ーーーーーー

  翌朝になると、みんなはスッキリとした顔で朝食を摂り、出発の予定時間に間に合う様な形で宿舎の前に集合していた。

 そこには、支部の兵士全員と、『ノルト』の市民までもが『特殊異能部隊』の見送りに来てくれていた。

  それを見ると俺は部隊を代表して、

「いろいろとお世話になりました。これから、国の為に戦って来ます。」

と、お礼を丁寧に述べた。


ーー何の表裏も無く、素直な気持ちで......。


  すると、シェルフが口を開いた。

「これから大変な事もあるかもしれませんが、どうか、お国の為にも頑張って来てください!!」

  彼は感情を一気に込めながら、力強い口調で我々に対して激励の言葉を口にした。

  俺は、その言葉に強く頷いた後で、市民の歓声に包まれつつ、街を去るのであった......。


ーーお世話になった彼らの為にも、頑張らねば......。


  ミルトは、彼らのご厚意に感動する様に、

「本当にいい人達だったね......。」

と、呟いた。

  俺はそれに対して、猜疑心を持ってしまった事を反省しつつ、

「そうだな......。」

と、答えるのであった。


ーーそう言えば、昨日は疑っていた為に、軍の本部へと報告出来なかったな......。


  俺はそう考えると、馬から一度降りた後で、部隊から離れて、マジックアイテムを取り出した。

  そして、森山葉月へと報告をする。

「昨日は、『ノルト』ですっかりお世話になったよ。」

  俺がそう報告すると、森山葉月はおかしな事を言い出した。

「何を言っているのですか......?『ノルト』からは、まだ到着していないと言う報告がありましたよ。私はてっきり、野宿でもしているのかと思いました。」

  俺はそれを聞くと、彼女が何を言っているのかさっぱりわからなかった。

「何を言っているんだよ......。だって、『シェルフ』という男がちゃんと支部長をしていると言っていたし......。」

  彼女はそれを聞くと、暫く間があった後に、こう答えるのであった。

「その方だったら、二年前に亡くなってる筈ですが......。」


ーー俺はそれを聞くと、一瞬で青ざめた......。


  どうやら、『ノルト』という街は二年前に、『ヘリスタディ帝国』による大量虐殺があった地らしい。

  俺はそれを聞くと、思う事があった。


ーー彼らは亡霊となっても、彼の国との戦争を決意した俺達をどうしても労いたかったのかもしれない......。


  それに気がつくと、森山葉月には野宿した事にし、謝罪をした。

  そして、部隊の連中へその事を話すのはやめて、次の街、『フレンディア』を目指すのであった......。

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コメント

  • ノベルバユーザー239457

    そういえば5話位でキュアリスがキャアリスになってました!!

    0
  • 夕音 朝月

    魂の力すげぇw&料理はあって無いようなものじゃんw

    2
  • rui

    いやなんだ亡霊の街ってw

    2
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