天才過ぎて世間から嫌われた男が、異世界にて無双するらしい。

暗喩

第49話 王宮の最上階。

ーーーーーー

  次の日、朝焼けの中で俺は、準備を終えて王宮へと向かう正装へと着替えていた。

  緑色の詰め襟に袖を通すと、もうひと月以上経ったにも関わらず、俺は改めて自分が『国王軍』に入隊した事を自覚したのであった。

  俺のそんな姿を見た桜は、真剣な眼差しをしたまま、

「凄く似合っているよ。頑張ってきてね......。」

と、鼓舞するかの様に伝えるのであった。


ーー何だか最近、桜がどんどんとキュアリスに似てきた気がする......。


  俺はそんな気分にさせられた後で、彼女に対して、

「ありがとう。では、行ってくるよ......。」

そう伝えて、帽子を被って部屋を後にするのであった。

  下に降りると、部隊の者達が俺と同じく正装を見に纏って待っていた。

  そして、一斉にその場へ跪いた。

「隊長殿。いよいよですね......。我々一同、ご報告を心よりお待ちしております。」

  リュイが先頭で代表して俺にそう申して来た。

  俺はそれを聞くと、無理に笑いながら、
  
「了解した......。」

と、皆に告げて、そそくさと施設から出て行くのであった。


ーーーーーー

  施設の門を出ると、そこには一つの馬車が待っていた。

  そしてそこには、一人の精悍な顔立ちをしたタキシード姿の少女が待っていた。

  彼女は俺の存在に気がつくと、触れている馬から手を離し、俺の方へと背筋をピンと張った後で、こう告げた。

「お待ちしておりました、佐山雄二隊長殿。私が今回王宮まで送迎させて頂きます、アメールと申します。それでは早速、馬車の方へお乗りください......。」

  彼女はそう言うと、荷車のドアを開けて、俺に中へ入る様、促すのであった。

  俺はその誘導を受け入れると、そのまま入り込むのであった......。


ーーーーーー

  約五分程、馬を走らせるとすぐに王宮へと辿り着いた。

  前に訪れた時とは違い、アメールという女は馬車を正面玄関の方へと止めたのだった。

  俺は、そこに到着すると、ゴクリと生唾を飲み込む......。


ーーこれから、この場所へ入るのだな......。


  俺はそう考えると、王宮へと足を踏み入れるのであった......。


ーーーーーー

  王宮の中へ入ると、中には再び案内人がおり、その男は俺を、迷わぬ様に誘導する。

  中は広々としていて、何回来ても迷う自信がある程に広いこの城の中を彼の先導の下、歩き続けるのであった。

  そして、最上階にある、如何にも一般人は入り込めない様な一室の前で彼は立ち止まった。

「こちらになります。隊長殿......。」

  俺はそれを聞くと彼にお礼を伝えて、その中へと入った。


ーーするとそこには、屈強な男と、スレンダーな女、小学生くらいの身長の少年がいた。


ーーそのど真ん中に圧倒的な存在感で君臨しているのは、森山葉月だった......。


「ようこそ、佐山雄二さん。」

  彼女は呆然と立ち尽くしたままの俺を見て、余裕の表情を浮かべながら、そう言った。

  すると近くにいた屈強な男は、俺を見るなり、

「お前が噂の佐山雄二か!!」

と、猛々しいまでの笑顔でそう叫んだ。

  それに対して、スレンダーな女性が彼を叱る様にして、

「あまりいきなり強い口調で話すのはいけないよ!!」

と、制止をする。

  その二人の様子を見て、少年はゲラゲラと笑っているのであった......。


ーーそこにいる三名は全員、俺と同じく軍服を着ている。


  俺はその様子から、彼らは軍の人間である事を確信するのであった。

  そんな彼らに対して森山葉月は、ギロッと睨みつけた。

と、途端に彼らは、大人しくなって、黙り込むのであった。

  それを確認すると森山葉月は俺に向けて、

「とりあえずお掛けになって下さい。」

と、笑顔で告げた。

  俺はその言葉を聞くと、すっかり大人しくなった三名を横目に静かに腰掛けるのであった......。

「今回はお越し頂き、ありがとうございます。」

  森山葉月は相変わらず表情を崩す事なく、俺に社交辞令をする。

  俺はそれに対して、作り笑いを浮かべながら、

「いやいや。お待たせして申し訳ないな。」

と、その場を取り繕う様に答えた。

「それで......。」

  俺は続ける様にして、彼女に問いかけようとした。

  すると彼女はその質問を理解した様に、

「あなた方は今回の戦争において、物凄く重要な鍵となるのです......。」

と、早々と本題を切り出した。

  彼女が言うには、俺達には『ヘリスタディ帝国』との開戦における、先鋒的役割を担って欲しいとの事だ。

  理由としては、俺がもう既に敵国の『暗躍部隊』と一戦交えた事から、その結論に至ったらしい。

  森山葉月は、その戦い振りを見て、『特殊異能部隊』の編成を思いついたとの事だった。

  俺の部隊の人間は、皆、戦闘力には長けている。

  そこで結果を残す事により、戦争を優位に進めて行きたいと......。


ーーそれを聞くと、前の俺の予想が当たっている事を確信したのであった......。


  そして、彼女は俺に告げる......。

「開戦の宣言は、明日の朝、キャロリール王女殿下から伝えられます。それが終わり次第、あなた方には戦地へと向かって頂きたいのです......。」

  俺はそれを聞くと、真剣な表情になり、彼女に向けて問いかけた。

「その場所は......?」

  俺の質問に頷いた森山葉月は、静かに口を開くのだった。

「それは、『メルパルク山脈』です......。」


ーー俺は、彼女の口から出た、『メルパルク山脈』と言う言葉に、一瞬だけ動揺した。


ーーそこは、俺が『スケアリー・ドラゴン』を倒した所であり、グリンデルが調査を行なっている場所だから......。


  気がつくと、冷や汗をかいていた。

  そんな俺に対して、彼女は続ける。

「実はここ何日かの間、グリンデルとの連絡が取れなくなっているのです......。多分、敵国が何らかの動きを示した事がわかります......。」


  俺はそれを聞くと、考えた......。


ーーグリンデルは無事なのか......?


  そして、それをこの目で確かめたくなった。
  
「わかった......。明日からは至急、『メルパルク山脈』へと向かうよ。」

  俺がそう言うと森山葉月は、ニコッと笑った後で、

「健闘をお祈り申し上げますよ。」

と、激励の言葉を口にする。

  それに対して俺は頷く事で、『特殊異能部隊』の『メルパルク山脈』への派兵は確定したのだった......。

  最後に、森山葉月は俺に告げた。

「でも、もし仮に危なくなった時は、早めに報告してください。その時は、『聖騎士』を派遣しますので......。」

  俺は、彼女の口から出た『聖騎士』と言う言葉を聞くと、途端に苛立った。


ーーキュアリスだけは絶対に巻き込まない。


ーー『聖騎士』と言う位だから、誰よりも強いのであろう......。


ーーだが、彼女は俺が助ける。


ーーそう心に誓ったのだから......。


  俺はそんな気持ちを込めて叫んだ。

「それだけは、絶対にさせない!!」

  部屋中に怒鳴り声を聞くと、周囲にいる三名は唖然とした表情を浮かべていた。

  しかし、森山葉月だけは俺のその叫びに対して、安堵の表情を浮かべていたのだ......。

「では、頑張ってくださいね......。」

  俺に向けてそう呟いた。


ーー多分、彼女は俺を試していたのであろう......。


  彼女が意図した確認作業を理解すると、俺は更に苛立ちを覚えるのであった......。

  そんな時、先程まで黙って話を聞いていた屈強な男が様子を伺いながら、森山葉月に向け、話し出す。

「じゃあ、とりあえず話は終わりって事でいいのかな......?」

  それを聞いた森山葉月は、男に向け、答える。

「ええ......。伝えるべきは伝えました。」


ーー俺は部屋へ入った時からずっと疑問だった。


ーーこの三名は一体、何者なのかと......。


  そこで、森山葉月に向けて問いかけた。

「ここにいる三人は、一体誰なんだ?」

  すると彼女は、座っている三名を見渡した後で俺に視線を向け、

「彼らは国の最高戦力です......。」

誇らしげにそう呟いた。

  彼女の説明によると、屈強な男は、『バラドレアス』と言う名で、国家の陸地における最強の指揮官である。

  同様にスレンダーな女性『ニルンド』は、空を、少年『センドル』は海と、それぞれがその場所を守る役割を担っているらしい。


ーーここにいる三名は、この国を左右する者達であったのだ......。


  俺がそれを聞き唖然としていると、森山葉月は、とぼけた顔をしながら、

「佐山雄二さんには、一度会わせておこうと思いまして......。」

と、呟いたのだった。


ーーいつかこいつらとも共闘するかもしれない......。


ーーきっと森山葉月はそう睨んだのであろう......。


  俺はそう理解すると、彼らに対して、

「また会う事もあるかもしれない......。宜しくな。」

と、手を差し出した。

  彼らはそれに対して笑顔になり、その手を取った。

  そして、バラドレアスは俺にこう言った。

「まあ、国家における初陣だ。気持ちを強く持って行ってこい!」

  それに対して、ニルンドとセンドルも頷いていた。
  
  そんな俺達を見た森山葉月は俺に向け、こう言った。

「では、明日からは心を引き締めて下さいね。」

  俺はそれに小さく頷いて。

それを最後に、明日からの派兵の準備をする為に、施設へと戻るのであった......。

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