天才過ぎて世間から嫌われた男が、異世界にて無双するらしい。

暗喩

第47話 軍帥からの指令。


ーーーーーー

  先日の一件以来、俺を含めた部隊は本当の意味での信頼関係を築けていた。

  俺は今まで『異能』を披露する事なく、体力面を鍛えていのだが、最近は『異能』においても訓練する様になった。

  射撃場で水の『異能』を用いた弾丸を打ち込んでみたり、グラウンドで土の異能の防御壁を作ったりした。

  その全てに俺の『度が過ぎる才能』は有効になり、周囲の隊員達は、驚きの表情を隠せずに俺を見ていたのだ。

  だが、その後すぐには歓喜の声が響き渡り、皆が口を揃えて俺を称賛した。

  その中でもリュイに関してはもはや、狂喜乱舞に近い状況になっていて、

「さ、流石は我が部隊の隊長!!最早これは、素晴らしいとしか言い様がありません!!」

などと、毎回の様に大袈裟に喜んでいたのだった。

  桜は俺達がそんな様子で励んでいる姿を見て、微笑んでいるのであった。

  するとミルトは気になる事を口にした。

「やっぱり葉月さんと同じ『異世界の人』は違うねー!」


ーー俺はその言葉を聞くと、必要以上に反応するのであった。


  そして彼女に問いかける。

「お前もしかして、森山葉月と知り合いだったのか......?」

  俺が少し怒り気味に問い詰めるとミルトは、冷や汗をかきながら真剣な表情の俺から目を逸らし、

「あれ......?言ってなかったけ?あたしが小さい頃から葉月さんにお世話になっているって話......。」

と、惚けていたのだ。


ーーだから、軍での俺の行動を知っていたのか......。


  俺はそれに気がついて、深くため息をつくのであった。

「まあいいや......。そろそろ、訓練を再開するぞ。」

  俺がそう皆に告げると、威勢の良い返事か返ってきて各々が鍛錬を再開するのであった。


ーー今の『特殊異能部隊』は、非常に雰囲気が良い。


ーーしかし俺は、そんな雰囲気がそろそろ壊れてしまう事を懸念していた。


  それは、森山葉月からの指令をそろそろ伝えねばならなかったからだ......。


ーー「後、ひと月程は時間があります。折を見て伝える事をお願いしますよ......。」ーー


  もう既にあの日以来一週間程の時間が経っていた。

  そんな中で、話し出すタイミングをずっと伺っていたのだ......。

  ふと俺が訓練をしながら悩んだ表情を浮かべていると、桜は俺の元へやって来て、

「何か、言いたい事があるの?」

と、察した様に聞いて来た。

  俺はそれに対して、

「少しすればわかるよ......。」

と、手から水の『異能』を出しながら答えたのであった......。

  そして俺は決心した。


ーー今日の訓練終わりにみんなに伝えよう......。


ーーーーーー

  もう日が沈みかけた訓練場で俺は、皆に向けて今日の総括をした。

「今日もご苦労だったな。みんな、日を増すごとに『異能』が上達しているのがわかるぞ。」

  俺がそう言うと皆は喜んでいた。

  リュイはそれに対して、
 
「隊長殿のリーダシップのおかげですよ!!」

と、万遍の笑みで答えたのであった。


ーーここ一週間はみんな、自分に自信を持ち始めている。


  俺は、そんな風に思った。

  それを感じると、まさに今が話すチャンスだと考えたのであった。

  そして俺は、皆に向けて、神妙な顔で口を開いた。

「それから、みんなに話したい事があるんだ......。」

  俺がそう話し出すと、先程までの平穏な雰囲気は一転して、困惑の空気が漂う......。

  俺はそれを確認すると、黙りこくっている皆に対して、続けるのであった。

「実は、ベリスタ王国は、今月末にも『ヘリスタディ帝国』との開戦を宣言する。」


ーーそれを聞いた途端、周りの隊員達は騒めき始めるのであった。


  俺は、そんな皆の戸惑いを横目に、更に追い討ちをかける。

「その第一部隊として、我々の、『特殊異能部隊』が先陣を切る事が、軍帥から告げられたのだ......。」


ーー俺がそう告げると、皆は少し間が空いた後で、喜びの雄叫びを上げ始めたのだった。


「そんな名誉な事、ありませんよ!!我々、お国の為、平和の為にも頑張ります!!」

リュイはそんな風に両手を突き上げながら、俺に向け、戦争への抱負を熱く語るだった。


ーーだが、その突き上げた拳は、小さく震えていた......。


ーーよく見ると、全員が自分に言い聞かせる様に振る舞っている......。


  そんな彼女達を見て、少しだけ心が痛くなるのであった。


ーー頭で考えていても、戦争に行くなど、本当は怖いに決まっているのだから......。


  俺は、そう皆に宣言すると、皆と同じ空元気で、

「しっかりと励んで行こうな!!」

と、叫ぶのであった。


ーーいよいよ戦争が始まってしまう......。


  そんな不穏な自分の気持ちに、息苦しさを感じるのであった。

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