天才過ぎて世間から嫌われた男が、異世界にて無双するらしい。

暗喩

第45話 惨めな自分。


ーーーーーー

  店へと戻る最中で俺は、桜とミルトに向けて、ひたすらに明るく喋り続ける。


ーー自分でも、何を言っているのか分からない程に......。


  その痛々しいまでの光景を見て、二人は涙ぐんでいたのが分かった。

  俺は、自分が如何に情けない事をしているのかよく理解している。


ーーだが、どうしても間を取る事を恐れていたのだ。


ーーキュアリスを思い出す事を......。


  ふと見ると、ミルトは何かを言いたげな顔をしている......。

  だが、それを言えずに只、黙って俺の話を聞いていたのだ。

  そんな中、俺はどうしても一つだけ言おうと思っていた事を口にした。

「今回の事は、部隊の連中には黙っていてくれ......。」

  その言葉を聞くと二人は、大袈裟に頷いた。

  俺はそれを確認すると再び、喋り出すのであった......。


ーーーーーー

  俺は店内に戻ると、まだ談笑の続いている部隊の元へと戻った。

「ただいま戻りました!!」

  明らかにおかしいテンションで彼女達に元気良く、そう伝えた。

  するとリュイは、だいぶ酔った口調で、

「やっと戻って来ましたね~。隊長殿~。」

と、俺に駆け寄って来た。

  それに対して俺は、

「いやいやー!!飲み過ぎて、道に迷っちゃったんだ!!じゃあ、今日はトコトン飲むか!!」

と、元気良く皆に告げた。

  それに対して何も知らない全員は、

「隊長殿に、乾杯!!!」

と、合図をして、夜は更けていくのであった。


ーーその間、俺は決して桜とミルトの方を見る事なく......。


ーーーーーー

  時計の針が重なる時間をとうに過ぎた深夜、俺は、ミルトに肩を掴まれながら帰宅していた。

「悪いねー!!介抱してもらっちゃって......。」

  俺は酔いにより、半分しか認識出来ない意識の中で、彼女にお礼を伝えた。

  すると彼女は、照れ笑いをしながら、

「気にしないで!!私もよくある事だし......。」

そう、答えるのであった。

  桜も桜で、俺の腕を一生懸命に抱えようと頑張りながら、

「桜も手伝うよ!!雄二は桜がいなきゃ、ダメだから!!」

と、必死の形相をしていた。


ーー俺は、朦朧とする意識の中で、二人の暖かさに胸が熱くなったのだった。


ーーそして、再び先程の事を思い出す......。


ーー「さようなら......。」ーー


ーー小さな村で出会った優しい少女の事を......。


ーー彼女と一緒に山を登ったり、街を歩いたり、村で宴をしたり、時には苦難を乗り越えたり......。


  その全てが固く凍ってしまっていた俺の心を暖めて行ったのだ。


ーー俺はこの世界に来て、優しくて、一生懸命で、表裏の全くない彼女に出会った事により、沢山の希望を見出す事が出来たのだ......。


  そんな事を考えていると、頬からは自然に涙が伝って行った。

  そして、鼻をすすりながら呟く......。

「キュアリス......。」

  俺は、その言葉を最後に意識が遠のいて、その場で深い眠りへと落ちていくのであった......。ーー


ーーーーーー

  俺は、激しい頭痛の中で、目を覚ました。

  帰りを歩いていた途中から、俺の記憶は途切れていて、眠ってしまったのだ。

  そんな中、辺りを見渡すと、昨日引っ越して来たばかりの、施設内の部屋にある、まだ新しいベッドの上にいる事を確認をした。


ーー昨日キュアリスから別れを告げられた場所に......。


  俺は、ミルトがわざわざ部屋まで運んでくれた事にすぐ気がついたのであった。


ーー申し訳ない事をしてしまった......。


  そんな時、ふと、温もりを感じる隣に目をやる。


ーーそこには、まだ眠ったままでいる桜が、俺に寄り添う様に横になっていた......。


  それはまるで、『助けてあげる。』とでも言わん程に......。

  俺は、そんな桜を見ると、少しだけキュアリスについての出来事を忘れられそうな気がしたのだった......。


ーーーーーー

  その日から、俺は『特殊異能部隊』の指揮官として、彼女達を全力で支える事を決めた。

  あの親睦会以来、すっかりと打ち解けた彼女達は、少しだけ必死さが残るものの、柔らかい雰囲気の中で訓練は進んでいた。

  俺もその訓練に参加して、彼女達と共に汗を流す事により、信頼関係を築けている気がした。


ーー何よりも、動いていたい。


ーーそんな気持ちで訓練に打ち込んだ。


ーーキュアリスの事を忘れる為にも......。


ーー誰よりも頑張らねば......。


  そして、そんな日々は二週間程が過ぎて行ったのだ......。

「何だか最近、周りの信頼関係は強固な物になって来たな。」

  ふと、俺がリュイにそう呟いた。

  するとリュイは、少しだけぎこちない笑顔で、

「そ、そうですね......。これも、隊長殿のおかげですよ......。」

と、答えるのであった。

  俺はその返事を聞くと、自分に何かを言い聞かせる様に、大きく頷くのであった......。

  桜は最近、俺が穏やかになった事を、喜んでいる様子だった。

  だが、彼女も何故か、ぎこちない。

  よく考えると、皆が俺に対してぎこちない対応を取っていたのだ......。

  それに気づくと俺は、何がおかしいのかを考え出すのであった。


ーーだが、いくら考えても何故自分が、その様な態度を取られているのか、全く見当がつかない。


  俺はその答えを見出す事が出来ず、思わずリュイに聞いてみたのだった。

「最近みんなが俺に対して余所余所しい気がするのだが、それの理由って言うのは何なのだ......?」

  リュイはそれを聞くと、如何にも確信を突かれた様な顔をした後で、

「そんな事は無いと思いますが......。」

と、目を逸らした。


ーー明らかに何かがおかしい......。


  俺は、それに対して語尾を強めて、

「はっきりと言ってくれ!」

と、真剣な表情で詰め寄るのだった。

  するとリュイは、観念した様な顔をして、

「大変申し上げづらいのですが......。最近、隊長殿を見ていると、昔の私達を見ている様な気がしてしまって......。」

と、申し訳なさそうな口調で答えたのだった。


ーー俺はそれを聞くと、あの日から今までの事を思い出した。


ーー確かにうまく行っていた筈だ。


  そこで俺は、その答えに対して、続けて質問をしたのだ。

「それは一体、どう言う意味なんだ......?」

  俺がそう質問すると、リュイは意を決した様にして答えたのだった。

「その......。隊長殿の必死さと言いますか......。何かに取り憑かれた様に訓練に励む姿を見ていると、どうも、余り干渉しない方が良いのではと......。」


ーー俺はそれを聞くと、自分に対する情けなさを痛感するのであった......。


ーー俺がここに初めてやって来た時、彼女達に感じた事を、事もあろうか、自分がやってしまっていたのだから......。


ーーキュアリスを忘れる為だけに、誰よりも必死になっていて、周りが見えなくなっていたのかもしれない......。


  だからこそ、彼女達は俺と距離を置く様にしていたのだ。

  そして俺は、リュイからの指摘に絶句するのであった。


ーー結果、俺の浅はかな行動は、みんなに迷惑をかけていた......。


ーーここにいる全ての人に気を遣わせていたのだから......。


  俺はそれに気づくと、彼女にこう告げるのであった。

「今まですまなかった......。少し頭を冷やしてくるよ......。」

  リュイはそれを聞くと、心配そうな顔で俺を見つめた後に、

「承知しました......。」

と、短い返事をするのであった。ーー


ーーーーーー

  俺は一度、一人で部屋へ戻りベッドの上に座り込むと、今までの事全てを後悔していた。

  そして、その後で思った。


ーー俺は、なんて最低な人間なんだ。


ーー結局、自分の事しか考えていないじゃないか......。


  そんな風に自己嫌悪に陥った。

  ふと、目の前にある姿鏡を見る。
 

ーーそこに映った俺は、目も当てられぬ程、情けない表情をしていた。


ーー俺はそんな自分の顔を見ると、苦痛を味わうのであった......。


ーーだが、そんな時、俺のポケットから聞き覚えのある声が聞こえた。


「すみません。応答お願いします。」

  俺は一瞬躊躇したものの、軍服のポケットの中に手を突っ込み、ルビーのペンダントを慌てて取り出した。


ーーその後俺は、恐る恐るその声に向けて返事をするのであった......。

「どうしたんだ......?」

  俺がその声に対して答えると、その声の主は、こんな事を告げたのだった。

「本来、この様な事に『マジックアイテム』を使うのは宜しくないのですが......。今日の夜、空いていますか?」

  その言葉を聞くと、俺は、断ろうかと迷った。


ーーだが、彼女の真剣な口調を聞くと、何故か体が断る事を拒絶したのだった。


  そして、俺は彼女に告げる。

「ああ......。俺も丁度話したい事があるのでな......。」

  それを聞いた彼女は、小さく笑うと、

「ならば、この前あなた達が親睦会を開いた場所で待っています。」

と、俺に伝えた後、すぐに交信は切れたのであった......。


ーーそして俺は今夜、『森山葉月』と会う事になったのであった......。

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コメント

  • rui

    ほんとゆーじくん情けないなぁ

    0
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