天才過ぎて世間から嫌われた男が、異世界にて無双するらしい。

暗喩

第44話 お別れの言葉。


ーーーーーー


  俺は、何故か部屋にいるキュアリスを前にして、呆然と立ち尽くしていた......。

「キュア......リス......?」

  俺は絞り出した様な声で紛れもなく本人である彼女に対して、無意味な確認を取った。

  俺の手から灯された小さな火だけの薄暗い部屋の中で、キュアリスは観念した様に振り返って俺の方に体を向けた。


ーー彼女は真剣な眼差しで俺を見つめる。


  それを確認すると俺は、こんな誰が仕向けたのかも分からない非現実的な状況にも関わらず、彼女の顔を見て、安心をしたのだった。

「や、やあ、キュアリス。久しぶりだな!いきなり何処かへ行ってしまったから、心配したよ!」

  俺は今にも裏返りそうな声でそう言った。

  それに対してキュアリスは、返事をする事は無かった......。


ーーそのまま黙って俺の事を見つめている......。


ーー俺はその間合いに耐えられず、喋り続けるのであった。


「えっと......。お前が『初代聖騎士』だったなんて、知らなかったよー!そうならそうと、最初から言ってくれれば良かったのに!」

  俺が取り繕いながらそう伝えても、彼女はずっと表情を変えずに無言のままであった。


ーーそれを見ていると俺は、彼女がここに来た理由が朧げながらわかった気がしたのだ......。


ーーだからこそ、俺は中身のない会話を続けた。


ーー只一方的に、間合いを取らぬ様に......。


ーー分かっている答えを、打ち消す為に......。


ーー無駄な事だとわかっていても......。


  そんな中俺は、最後にこう伝えた。

「また、桜と三人で過ごそうぜ!!キュアリスだって、そう思うだろ?」


ーーその言葉の後、俺は言葉を詰まらせてしまった。


ーーすると途端に、薄暗い部屋は暫く静寂に包まれる......。


ーーそれを確認すると、先程まで黙っていたキュアリスは、ゆっくりと口を開いた。


「本当は手紙で伝えようと思ってここに来たのだけど......。実は私、もう雄二や桜とは会えなくなるの......。」


ーー俺はそれを聞くと、その言葉の意味を深く理解したのだった。


ーーだが、どうしても心の奥で受け入れられなかった。


ーーキュアリスと別れてしまうなど......。


「へ、変な冗談は止そうぜ......。」

  俺は、今にも泣き出しそうな気持ちを押し殺して、苦笑いをした。

  しかし、彼女はそんな俺に対して、俯きながら、

「ごめんなさい......。」

と、小さく呟いたのだった。

  それを聞くと俺は、何も話せなった。


ーーどんなに引き止めても無駄だと言う事を確信して......。


  その後、彼女は俺に背を向けて、ゆっくりと窓を開ける。

  俺はその様子を只、呆然と見ていた。

  すると窓に手を掛けたキュアリスは、俺の方へ振り返った。

「こんなお別れになっちゃってごめんなさい......。さようなら......。」


  キュアリスは、震え声でそう呟くと、窓から風の『異能』を使って、消えて行った......。

  俺は、星空の下でどんどんと小さくなっていくその姿を目で追いかけたまま、立ち尽くすのであった......。


ーー本当にキュアリスとは二度と会えない事を自覚して......。


  それから暫く、俺はそのままの状態でいた。


ーー何も考える事が出来ずに真っ白な頭の中で......。


ーーすると、ドアの方から足音が聞こえて来た。


  俺はその音を聞くと、考えも無しにゆっくりと振り返った。

  そこには、悲しい顔をするミルトと、今にも泣き出しそうな表情を浮かべている桜がいた。

「キュアリス、酷いよ......。」

  桜はポロポロと涙を流しながら俯いていた。

「ご、ごめんなさい。決して盗み聞きするつもりでは無くて......。」

  ミルトは俺に向け、そう謝罪を述べた。


ーー俺は、それを聞くと無理矢理感情を押し込めて、二人に向け笑顔で告げた。


「いやー!見苦しい所を見せたな!!みんなが待っているから、早く店に戻ろう!」

  俺はそう言うと、足早に部屋から出ようとした。

  するとミルトは、

「でも......。」

と、俺を制止する様にして言った。

  俺はそれに対して、

「本当に大丈夫だから!!」

と、半ば空元気でそう答えた。

  そして、桜には、万遍の笑顔で、

「安心しろ!!いつか俺が必ずキュアリスは助けてやるから!!」

と、明るい口調で伝えた。

  すると桜は、何かを感じ取ったのか、泣きながら俺に抱きついて、

「例え雄二にどんな事があっても、桜は絶対に雄二の味方であり続けるから......。」

  そう呟いたのだった。

  俺はその発言に対して、一瞬グッとくるものがあったが、それすらもかき消す様にして高らかに笑い、店へと戻る為に足を運ぶのであった......。


ーー段々と乖離していく気持ちの中で......。

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