天才過ぎて世間から嫌われた男が、異世界にて無双するらしい。

暗喩

第43話 親睦会は盛り上がりを増す。


ーーーーーー

  俺と桜、そして『特殊異能部隊』の御一行は街に繰り出すと、ミルトが変わった佇まいの店で、オススメと言っていた場所へと足を運んだのであった。

  その店に到着すると、部隊の者達は何も言わない物の、驚いているのが簡単に予想出来た。


ーーだが、それを見て、誰よりも驚いていたのは俺だった......。


  何故ならその店は、周囲の中世西洋風の建物とは完全に切り離された、まさに、『日本料理店』そのものであったからだ......。

  木造家屋に白い壁、入り口は引き戸になっていて、周囲には提灯が吊るされていた。

  看板には、日本語で『異世界の料理店』と書かれていた。


  俺はその文字を見た時、何処か懐かしさを感じたのであった......。

「どう?!面白いでしょ!!ここを見つけた時、思わずガッツポーズしちゃったよ!!味も一級品なんだよ!!」

  ミルトは、呆然とする俺に対してハイテンションで詰め寄って来たのだった。

  桜はミルトのその発言を聞くと、同じ様に喜び出し、

「なんか分からないけど、凄い面白い場所だね!!早く入ろうよ!!」

俺は、その様子を見ると驚きを隠した後で、ため息をついて、

「じゃあ、中に入るとするか......。」

と、号令を掛けた後で、入り口の引き戸を開けるのだった。


ーーーーーー

  『特殊異能部隊』御一行が店内に入ると、店主と思しき男は威勢良く、

「へい、らっしゃい!!!!」

と、歓迎するのであった。

  その男の容姿は、寿司屋の様な格好をしていた。

  店内もカウンターがあり、奥には畳で出来た座敷もあった。

  客は一人もいないものの俺達は、十名以上の団体だったので、奥にある座敷へと案内されたのだった。

  相変わらず制服をピッチリと纏っている部隊の連中は、座敷の上へと土足のまま入ろうとした。

  俺はそれを見ると、昔の世界の名残なのか、注意をする。

「ちょっと待て......。みんな、靴を脱いでから上がってくれ......。」

  俺がそう注意をすると、部隊の者達は不審がりながらも、靴を脱いで上がるのだった。

「妙な知識をお持ちなのですね。流石は我が部隊の隊長......。」

  リュイはそう称えたのだが、俺はその称賛を無視して靴を脱ぎ、懐かしい畳の上に腰を下ろすのだった。

  そんなこんなで全員が座った所で、俺は皆に向け、挨拶をする。

「みんな、親睦会に参加して頂き、大変感謝する。今日は、親交を深める為にも、大いに楽しんでくれ!!」

  俺がそう挨拶を終えると皆は、背筋をピンと伸ばしたまま、拍手をするのであった。


ーーは、恥ずかしい......。


  俺は、余りにも真面目で、余所余所しい彼女達の態度を見て、羞恥心を覚えるのであった......。


ーーこの親睦会は一体、どうなってしまうんだ......?


  そんな気持ちを持って......。

  そして俺が挨拶を終えると、この店に行き慣れているミルトは、適当な料理を頼んでから、オーダーを聞き始めるのであった。

「とりあえずみんな、一杯目はビールで良いかな?!」


ーー前に聞いた話だが、この世界では、十五歳からアルコールを飲む事が許されているらしい。


  それを聞くとリュイは、
 
「何を言っているんだ!!兵士が飲酒など、許される筈がないだろうが!!」

と、ミルトに向かって怒号を浴びせる。

  そして彼女は俺の方へ勢い良く首を動かし、

「そう思いませんか?!隊長!!」

と、凄い剣幕で詰め寄って来たのだ。

  それに対して俺は、オドオドしながらも小さい声で、

「いや......。し、親睦会なんだし、別に良いんじゃないか......?」

と、答えるのであった。

  それを聞いたリュイは、その真剣な表情から弱々しい表情に変わり、

「た、隊長がそう言うのでは仕方がありません......。ならば、全員分のビールと、桜殿の分のオレンジジュースを頼む!!」

と、内心アルコールを飲みたかったのか、潔くオーダーを伝えるのであった。


ーーそして、全員に飲み物が届く......。


  それを確認した俺は、大きな声で乾杯の合図をする事で、親睦会はスタートしたのであった。

  ふと、隣に座っている桜の方に目をやると、彼女は難しい顔をして刺身とにらめっこをしているのだった。

「こ、これって、本当に食べれるの......?」

  そんな桜に向けて俺は、フォークで刺身を一つ取り、少し醤油をつけた後で、彼女の口元へと運んだ。

「美味しいから騙されたと思って食べてみな。」

  その言葉を信用した桜は、少し涙目になりながらも、それを口の中へと入れたのだった。

  その後、暫く口を動かす......。

  そして、それを飲み込んだ後で桜は、

「お、美味しい......。雄二!!これ、すごく美味しいんだね!!」

と、感動しているのであった。

  それに一安心すると俺は、手元にあるビールを見る。

  さっきは乾杯の後、日本国における法律を気にして口にする事なくちゃぶ台の上に置いたのだが......。


ーーここは異世界だ。


ーー合法なんだから、別に良いではないか......。


と、初めて飲むアルコールに対して葛藤をした。

  するとその様子を見ていたのか、ミルトが駆け寄って来て、ニヤニヤとしながら、

「早く飲んでくださいよ、隊長殿。」

と、もう既に空けてしまったグラスを見せつけながら言って来た。


ーーならば、仕方がない......。


  俺は、ヤケクソになって、ビールを一気に飲み干したのであった。

  すると、苦味が口の中全体を支配した。

  その後、体全体を支配するなんとも言えない感覚......。

  そのクラクラする感覚の中で、ミルトに向けて、

「全部飲み干したぞ。これで良いんだろ?」

と、何故か自信満々に言ってみせた。

  それに対してミルトは、ヘラヘラと笑いながら、俺にハイタッチを要求して来た。

  俺はそれに応じて、思い切りタッチをするのであった。


ーーそんな中、ふと、周りに目をやると、部隊の者達は、俺とミルトの様子を呆然として見ていた。


ーー何故か、その視線を見ていると、俺は悪者扱いされている気持ちになった。


  そこで、ヤケクソになって皆に伝えた。

「折角の親睦会なんだから、もっと盛り上がってくれ!!なんか、凄く恥ずかしいわ!!」

  俺がそう皆に告げると、周りは苦笑いしながらも、ジワジワと談笑を始めるのであった。


ーー何となくだが、砕けられるかもな......。


  俺は、少し熱くなった体の中で、そう感じるのであった......。


ーーーーーー

  親睦会が始まって、既に二時間程が経っている。

  先程までお通夜の様になっていた座敷の上とは一転して、変な盛り上がり方を見せていた。

  酒の勢いもあるのか、彼女達の笑い声は、一際大きな物になっていたのだ。

  リュイは、俺にしがみつきながら、

「本当に隊長として来てくれて、ありがとうございます......。私、本当に嬉しかったんですよ?!分かってくれますよね......?」

と言って、号泣している。

  それに乗っかる様にして、ミルヴィールは笑いながら、

「本当に嬉しかったんです~。ありがとうございます!!」

と言って、俺の顔面に抱きついてくる。


ーー再び柔らかい感覚が俺の顔全体を支配する......。


  だが、すぐ我に返った後でその二つの山脈から離れて、

「そ、そう言ってもらえると本当に有難いよ!!」

と、顔を赤らめるのであった。

  再び隣の桜を見ると、俺を気味悪がっているのが分かった......。

  ミルトはその件を見て、爆笑していたのだった。


ーー俺も、少しだけ酔ってきている......。


  最初の一杯からもう既に何杯か飲んでいるので......。

  そう自覚すると、少し外の空気を吸いたくなったのであった。

  そして、しがみついているリュイを振りほどいた後で、俺は、

「外の空気を吸ってくる。」

と言い残して店の外へ出るあった。

「大丈夫......?」

  桜は、そんな俺を心配して付いてきたのだった。

  後、もう一人......。


ーーーーーー

  俺は桜と手を繋いで外へ出ると、一度施設を目指す事にした。

  そこまでは歩いて十分程だし、酔っ払って知らない道を歩いて迷ってしまっても大問題だったので......。

  すると、そんな俺の様子を見ながら一人、ニヤニヤとしている奴がいた。

「隊長殿、大丈夫ですかー?」

  その、興味本位でしかない口調の主は、ミルトであった。

  俺はその問いに対して、余り呂律の回らぬ口で、

「だ、大丈夫だよ!!」

と、答えた。

  それからすぐに、十分程ある宿舎へ到着したのであった。

  到着する頃には、俺は、ほんの少しだけ元に戻っていた。

  そんな時、ミルトは一言放った。

「今日の親睦会で、だいぶみんなと打ち解けられそうだよ......。」

  俺はそれを聞くと、彼女に目を合わせる事なく、

「そいつは良かったよ。それこそが本来の目的だからな......。」

と、俺と同じく今日配属になったばかりのミルトに答えた。

  するとミルトは、笑顔になった後で、

「うん!!なんかあの緊張感が、将来的に弱点になりそうだったからね......。」

と、言ったのであった。


ーーどうやら、ミルトも俺と同じ考えを持っていたらしい......。


  俺はそれに気がつくと、少し彼女を見直すのだった。

  桜は、俺がまともに会話しているのを見て安心したのか、

「やっと雄二が元に戻って良かったよ!!」

と、安堵の表情を浮かべた後で、ニコニコとしているのであった。

  そんな桜を見ていたミルトは、いきなりプルプルと震えだした。

  そして、大きな声で、

「前から言おうと思ってたんだけど、桜ちゃんって、本当に可愛いよね!!」

と言って、無理矢理桜に抱きつくのであった。

  桜は少しだけ嫌がりながらも、照れた表情を浮かべて、

「全然そんな事ないから!!」

と、全否定をしていた。

  俺は、そんな様子を見た後で微笑みながら、二人を横目に一人施設の中へと入るのであった。


ーー別に何か用事がある訳でもないのだが......。


  真っ暗な施設内部は静寂に包まれていた。

  そのまま奥にある訓練場へ行くと、今までの努力の証とも取れる射撃の的や、走った事により、すり減って道になっている芝生が見えた。

  俺はその一つ一つを見る度に感心をするのであった。


ーーみんな、凄く頑張っていたんだな......。


そう思うと俺はふと、思いついた事があった。


ーーこれからの事を、手記に記そう......。


  俺は、そう考えると、すぐに入ったばかりの自分の部屋へと足を運ぶのであった。


ーーーーーー

  真っ暗な施設の中を、一歩一歩探る様にして部屋を目指す。

  多分、明かりをつけなかったのは、この暗がりを楽しんでいたからかもしれない。


ーーそして、二階にある部屋へとやっと辿り着いた。


  俺は渡された鍵をドアの下にある穴に差し込む。

  ドアが開いた事を確認すると、俺はその中に入った......。


ーーすると、誰も居ない筈の部屋の中から、ゴソゴソと物音が聞こえるのであった。


  俺は、もしかしたら何処かの国のスパイが潜り込んだのではと懸念した。

  そして、その音の方向へとゆっくりと火を灯した。


ーーそこに居たのは......。


ーー紛れもなく、キュアリスだったのである......。


  俺は、彼女を見ると、呆然と立ち尽くすのであった。

  彼女は、俺の存在に気がつくと慌てた様子を見せた。


ーー何故、ここにキュアリスがいるのだ......?



俺は驚きと疑問を同時に抱くのであった......。

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コメント

  • rui

    店で飲み食いしてて、外の空気吸ってくるのは分かる。ただ支払い終わってない段階で施設というか帰るのってどうなん?意味がわからないヽ(・∀・)ノ

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