天才過ぎて世間から嫌われた男が、異世界にて無双するらしい。

暗喩

第42話 マジックアイテム。

 
ーーーーーー

  俺と桜は親睦会の準備を始める為に一度、宿の方へ戻ろうとしていた。

  そんな時、リュイが俺に向け、こう告げたのだった。

「隊長殿。もし一度、宿の方へお戻りになるのであれば、施設の方へ荷物の方を全て持って来てください。軍帥殿の計らいで、隊長用の部屋をずっと空けておりましたので......。」


ーー俺はそれを聞くと、森山葉月の計画に見事に引っ掛かった様な気がして、何とも言えぬ気持ちになったのだった......。


  そして続けてリュイが、訓練用の服の胸ポケットから見覚えのあるルビーのペンダントを俺に渡して来た。

「これは、軍本部との連絡手段の際に使うマジックアイテムです!有事の際はここから連絡が来るので、代表して持っていてください!」


ーー俺は、それを見ると、キュアリスの事を思い出したのだった。


  そのペンダントは、俺が『ヘベレスシティ』で彼女に託した物に酷似していたから......。

  そして俺はリュイに聞いてみた。

「このペンダントは、元々誰かの物だったりしたのか......?」

  すると彼女はキョトンとした顔をして、

「いえ......。これは軍に所属する全員の指揮者が持っている物ですよ。単純に支給されている物ですので、持ち主とかは無いですよ。」

と、当たり前の様な口調で答えた。


ーー俺はそれを聞くと、少しだけ残念な気持ちになった......。


ーーそして、途端に切なくなるのであった......。


「分かった......。じゃあ、これは大事に持っておくよ。」

  俺はリュイにそう伝えると、桜と共に宿へ戻るのであった。


ーーーーーー

  宿から施設に戻り、荷物を部屋に入れた後で、俺は今回の親睦会について軍に報告せねば、という事で、早速ペンダントを使ってみる事にした。


ーー「遊びに行く暇などない!」


と、怒られるかもしれないのを覚悟して......。

  俺は、ペンダントを口元に持って行き、念じる......。

  すると、返事が返って来るのだった。

「如何、致しました......?」

  俺はその声を聞くとすぐに、森山葉月である事がわかった......。

  そして俺は、彼女が出た事で思いをぶつけようと思い、嫌味な声で皮肉を言ったのであった。

「いろいろと長い時間をかけて、段取り組んでくれてありがとな。」

  そう伝えると、森山葉月の笑い声が聞こえて来た。

  その後で、

「あなた達ならいつか必ず来ると思っていたので......。ご用件は、それだけですか?」

と、まるで俺と桜が入隊する事が分かっていたかの様な口ぶりで答えた。


ーーそんな彼女の言葉は、俺を全て見透かしている様な気がして、嫌な気持ちになった......。


  俺がそれにより悔しそうな表情を浮かべていると、隣で歩いている桜が、

「まだ話す事あるでしょ?」

と、俺の袖を引っ張って来た。

  俺はそれを思い出すと我に返った後で、森山葉月に対して、

「今日は、部隊の人間達を連れて親睦会を開こうと思っているんだ。だから、もし仮に施設に来ても、俺達は留守にしているぞ。それを伝えようと思っていたんだ。」

と、報告をしたのだった。

  すると森山葉月は、

「それは良い事ですね。少しでも彼女達の必死さを取り除いてあげてください。」

と、お願いする様な口調をしたのだった。

  俺はそれに対して、元気な声で、

「任せておけ!ならば、数時間いなくなるから、何か早急の報告があったらマジックアイテムの方に呼びかけてくれ!!」

  そう伝えると、彼女は了承をしたのを確認して、俺はルビーのペンダントをポケットの中へ仕舞うのだった。ーー


ーーーーーー

  報告を聞き終えた森山葉月は、微笑んでいた。

  そして、目の前にいる少女に対して声を掛ける。

「佐山雄二さん、良い人じゃないですか。」

  その少女はそれを聞くと、何処か切なさを感じる笑顔でその呼びかけに弱々しい声で答える。

「だから言ってるじゃない......。」

  彼女の情けない口調に対して、森山葉月は表情を変えないまま、続ける。

「まさか、あの時、彼の隣にいたあなたが『初代聖騎士』であったとは、夢にも思っていませんでした......。あなたが現役の頃から、一度も兜の中の顔を見た事が無かったので......。」

  少女はそれを聞くと、少しだけムッとした表情を浮かべた後で、

「もう、その話は良いじゃない......。」

と、体を小さくしていた。

  そんなまるで、『聖騎士』とはかけ離れた彼女の態度を見た森山葉月は、少女に向け、提案をする。

「これから数時間、彼らはいなくなるみたいですが、何か、渡す物があるのなら絶好の機会なのでは?」

  少女はそれを聞くと、小さく微笑んだ後で、

「確かにそうだね。何も言わずに消えてしまったから......。手紙くらいは渡さないと。」

と、俯きながら決心していた。

  それを皮切りに、少女はひっそりと『特殊異能部隊』の施設に向かう準備を始めるのであった。


ーーーーーー

  すっかり出掛ける準備を終えた部隊の者達を見ると、俺は愕然とした。

  どの者も、軍の制服を身に纏っていたからだ......。

「何故みんな、そんな格好をしているんだ......?」

  俺がリュイに驚愕の表情でそう尋ねると、彼女は笑顔で、

「これが我々の余所行きの格好なので。」

と、悪意のないままに返事をした。


ーーとても親睦会に行く服装とは思えない......。


  俺は、そんな事を思いながら、並んでいる皆を見たのだった。

  制服を着崩しているミルトを見て安心するのだが......。

  しかし、それ以外の者の本気の表情を見ていると、何を言っても無駄だと確信した。

  そして俺は、うんざりした顔をしながら号令を掛けた。

「じゃあ、行くとするか。」

  それを聞くと全員が口を揃えて、

「了解しました!隊長殿!」

と、統一の取れた返事をした。


ーーこれから向かう所は戦場じゃないぞ......。


  俺は深くため息をついた後で、皆を引き連れて街へと向かうのであった......。

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