天才過ぎて世間から嫌われた男が、異世界にて無双するらしい。

暗喩

第40話 部隊の指揮官。


ーーーーーー

  施設の奥の訓練場へと到着すると、そこには綺麗に整列した少年少女達が俺と桜の前に立っていた。

  その数は、約十五名程と、こじんまりとしたものだった。

  そして、そこにいるのは全員が、俺と同年代か、それよりも下の若者ばかりであった。


ーー俺は、部隊と言うからには、グリンデルの様な屈強な兵士達をイメージしていたのである。


  だからこそ、このこじんまりとした少年少女を見て、少しだけ驚かされるのであった。


ーーふと、その一人一人をじっくりと拝見してみた。


ーー先程騒ぎを起こしていたミルヴィールやリュイは良いとして......。


  他の者達も同じ様に真剣な表情で俺を見ている......。


ーーだが、三列に並ぶその部隊の一番後ろには、一人だけ欠伸をしている緑色の髪をした少女がいる......。


ーー俺は、その少女で視線を止める......。


ーーそして、欠伸を終えて涙目になった彼女は、ゆっくりと俺の方へ目を向けた。


ーー「......あっ!!!!」


  その少女は俺を見ると、驚いて、思わず声を上げるのあった。

  それも、その筈だ。

  彼女は、先日に無理矢理、喫茶店に連れていかれた、『ミルト』そのものであったのだから......。

  ミルトは俺と桜の存在に気づくと、そのまま俺の元へと駆け寄って来て、

「なんで、あなたがここにいるの?!」

と、耳が痛くなる程に大きな声で問いかけて来たのだ。

  俺は、その勢いに萎縮して、無言になってしまった。

  するとその様子を呆然とした表情で見ていたリュイは、ミルトの頭を殴って、

「隊長殿に失礼であろう!!慎みなさい!!」

と、怒鳴ってから、彼女を元いた場所へと戻すのであった。

  その後でリュイは苦虫を噛み潰す様な顔をしながら、全員に告げた。

「今日からこの、『特殊異能部隊』は、ここにおられる、佐山雄二殿と、観音寺桜殿に指揮してもらう事になっている!!皆、失礼のない様にしなさい!!」

  その言葉を聞くと、部隊の少年少女達は姿勢を正し、

「よろしくお願いします!!」

と、元気良く挨拶をするのであった。


ーー驚きを隠せていない只一人を除いて......。


  俺は、それに対してまだ把握出来ていないこの状況に苦笑いを浮かべながら、蚊の鳴くような頼りない声で、

「よ、よろしくな......。」

と、困惑しながら答えるのであった......。


ーーーーーー

  一旦落ち着く為に、その場を去った俺と桜は、『隊長室』などと、高らかに書いてある一室へと案内された。

  そこには、

「俺と桜の為に用意しました。」

とでも言いたげなまでに、まだピカピカなデスクが二つと、応接用のテーブルと三人掛けのソファが二つあった。

  俺と桜は、案内してくれたリュイが一旦部屋を出ていくのを確認すると、ソファの方に腰を落とす。

  それと同時にため息をつくのであった。

「何なんだ。この状況は......。」

  俺は、ぐったりとした口調で桜に声をかけると、桜も、

「もう、訳が分からないよ......。」

と、俺にもたれ掛かる様にして文句を言っていた。

「何故、俺達が『隊長』なんぞと呼ばれているんだ......?」

  俺が再び疑問を抱くと、桜は、俺の腕を掴んだ後で、

「桜だって分からないよ......。」

と、更にしな垂れていたのだった。

  すると、ドアの外からノック音が聞こえてくる。

  俺は、あの、リュイと言う少女が再びやって来るのを理解すると、うんざりとした口調で、

「どうぞ......。」

と、部屋に入る事を許可した。

  部屋に入って来たリュイは、紅茶セットをお盆の上に乗せて入って来た。

「隊長殿、お疲れ様です。こちらをどうぞ......。」

  そう言うと、俺と桜の腰掛けるソファの前にひざまづいて、仰々しい手つきで紅茶を淹れるのであった。

  俺はそのご厚意をとりあえず受け入れた後で、彼女に質問をしたのであった。

「ここの部隊って、一体どう言う事をやるんだ?」

  俺がそんな問いかけを投げかけると、リュイはこっちを向き、笑顔の中で俺に説明を始めるのであった。

「まだ、出来たばかりの部隊ですからね......。知らなくても当然ですよね!」

  リュイの説明によると、この、『特殊異能部隊』が出来たのはたったの数週間の話らしく、彼女達は皆、まだ最近入隊したばかりの新卒らしい。


ーー道理で施設がまだ新しいと感じた訳だ......。


  更に、名についている『異能』とは、剣技や武術を使う戦法よりも、『異能』に特化して戦闘をする部隊である事を意味するらしい。

  そして、彼女は俺と桜に向け、

「ですけど、これまで正式な隊長が不在だったのです......。そんな時、森山葉月軍帥の指令であなた達が派遣されて来たんですよ。」

と、締め括ったのであった......。


ーー森山葉月は、俺と桜を指揮官にするつもりで話を進めていたんだな......。


  俺は、それに気がつくと、大きくため息をつくのであった......。

  話を聞き終えて、より疲れた表情を浮かべていると、リュイは嬉々として気になる事を口にした。

「ここは私達が、国にお願いをして、やっと入れた部隊なんですよ。」

  俺は、その意味を掴めぬまま、彼女に質問する。

「そうだったのか......。だが、何故こんなに若い人間ばかりが集まったんだ......?」

  するとリュイは、身の上話を始めるのであった。

「実は、ここにいる兵士の大半は、戦争により親を亡くしているんですよ。」

  俺はそれを聞くと、彼女達の事を考え、胸が苦しくなるのであった......。


ーーここにいる一人一人が、悲しい過去の持ち主なのだから......。


  そして、彼女は続ける。

「私達、『異能』の力に関しては地域でも随一でした。だからこそ、これからはその力を使って、誰もが笑顔になれる世の中を作りたいと......。それで、周囲の制止を振り切って、少しずつ集まって、入隊を志願して来たのです。今日の早朝に突然入隊して来た『ミルト』だけは、少し違うみたいですが......。」

  俺は一旦、ミルトの事を置いておいた後で気づいた。

  どうやら彼女達は、過去の悲しみから、純粋に平和な国家を作る為だけに入隊を志願したらしい。

「そんな時、軍帥殿が我々の為に、特殊部隊を作ってくれたのです!」

  リュイは、少し興奮気味に、そう語ったのであった。
  

ーー平和の為に戦う......。


  そんな志を持った若者達を集めて作った部隊こそが、『特殊異能部隊』なのだ。

  そして、最後にリュイは笑顔で話す。

「やっと隊長が来てくれました。三ヶ月も隊長不在でやってましたからね......。もしかしたら、このまま指揮官不在のまま終わってしまうのではと......。だから、私は今、凄く嬉しいのです!」


ーー俺は、その言葉を聞くと、この純粋な彼女達の気持ちを理解したのであった。


ーーそれじゃ、俺達と同じじゃないか......。


ーー多分森山葉月は、初めて会った時から俺と桜にこの部隊の指揮をさせようとしていたのだろう......。


ーーどこか、似ているこの人達と引き合わせることを......。


  俺はそれを理解すると、リュイに対して、

「俺と桜は、戦争に関して、全く知識はない。頼りないかもしれないが、これからは宜しく頼むよ。」

と、頼りない決意を口にした。

  桜も笑顔で、

「そう言う事なら、桜達は協力しなきゃだね!」

と、張り切っているのであった。

  すると、彼女は笑顔のままに、

「はい!共に平和な世の中を作りましょう!これからも宜しくお願いします!」

と、明るい口調で答えた。


ーーそれを聞くと、キュアリスを助けた後で、俺は『聖騎士』となってこの国を救う事を堅く誓って、この部隊の指揮官を心から引き受けたのであった。

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