天才過ぎて世間から嫌われた男が、異世界にて無双するらしい。

暗喩

第38話 正式なる入隊。


ーーーーーー

  俺と桜は、昨日の決意を基に、森山葉月の所へと足を運んでいたのだった。

  三度目にお目にかかる王宮は、相変わらず圧倒的存在感で聳え立っている......。

一応はこの前の話の中で、数日間の猶予を貰ったのだが、俺と桜は次の日の朝、いても立っても居られなくなり、飛び込みでやって来てしまったのだ。


ーー出来るだけ早く、キュアリスを助けたい。


  そんな気持ちの中で......。

  それに関しては桜も同じ様で、意気込みが態度に滲み出ているのが、すぐに分かったのであった。


ーーそして、先日の王宮広場から裏口にある先日入城した入り口へとたどり着く。


  すると、そこには二人の屈強な守衛が立っていた。

  俺は、その男達に声を掛ける。

「申し訳ないのだが、森山葉月はいるか?」

  俺がそう質問をすると、守衛達は俺と桜の事をじーっと見た後で、

「佐山雄二様、観音寺桜様。軍帥殿からお伺いしております。どうぞお入りください......。」

と、表情を崩す事なく、俺と桜を中へと案内したのであった。ーー


ーー広い城の内部を少し歩いた後で守衛から案内された部屋は、先日の簡素な場所ではなく、所謂、王家の応接室に相応しい一室であった。


  その部屋は、天井からシャンデリアが吊るされ、綺麗に掃除が行き届いている白い壁に、高価そうな絵、暖炉なんかもあったりした。

  俺と桜は、部屋に入ると、この前の部屋との違いに、只、圧倒されていたのであった......。

  守衛は、俺と桜が立ったまま固まっているのを見ると、

「では、お掛けになってお待ちください。」

と、目の前にある高級そうなソファに座る様促した後で、部屋から去って行くのであった。

  俺と桜は、彼が部屋から出て行くと、一言お礼を言った後で、ソファに腰を掛けるのであった。


ーー前回の部屋と違い、何故、俺と桜を客人として招き入れているのであろう......。


  俺は、その事が不思議で仕方が無かった。

  だが今は、入隊をする事でキュアリスを助ける事に没頭しようと、気持ちを切り替えるのであった。

「桜、今日からは何が起きるかわからない。気を引き締めて行動しような。」

  俺が桜へとそう伝えると、彼女は、

「分かってるよ。桜は雄二と一緒なら何でも出来る。」

と、にこやかに答えた。

  俺は、そんな桜を見て、

「これからはより、頑張らなければならない......。」

と、強く誓うのであった。


ーーそんな時、ドアからノック音が聞こえて来た。


ーー森山葉月......。


ーーいつか、『聖騎士』になって、キュアリスを助けてやるからな......。


  俺は、そんな気持ちで、ドアの方を向いたのであった。


ーーそして、ドアが開く......。


  すると、そこには、森山葉月がいた。


ーー更にその後ろには、王女であるキャロリールがいたのであった......。


  俺は、その事の意味が、良く分かっていなかった。

  そんな表情を浮かべている俺と桜を横目に、森山葉月と王女は、対面のソファへとゆっくり腰掛けるのであった。

  そして、王女は一つため息をした後で、俺と桜に向けて口を開く。

「二人とも、久しぶりであるな!!」

  俺は、その悠々とした笑顔に、弱々しい声で、

「ベゴニア村以来だな......。」

と、目を逸らしながら答えたのであった。

  すると森山葉月は、万遍の笑みを浮かべている王女に気を遣う様な素振りを見せた後で、俺と桜に話し始めた。

「ご決断が随分早かったですね......。まあ、私は、今日には来るのでは、と考えておりましたが......。それで、一応お伺いしておきますが、どの様な結論に達したのですか?」

  彼女が質問をすると俺は、森山葉月を真っ直ぐに見つめて、喉に力を強めて告げた。

「キュアリスを助ける為にも、俺と桜は国王軍へ入隊するよ。」

  彼女は、それを聞くと、微笑んだ後で、

「ならば、これからは共に頑張りましょうね。」

と、俺達の入隊を快く受け入れたのであった。

  そんな、結末が分かっているあっさりとしたやり取りを終えた俺は、ふと、隣に座っている王女の方に目をやった。


ーーすると、王女は何故かすすり泣いているのであった。


ーー俺は何故、王女が俺達のやり取りを見て、泣いているのかを全く理解出来なかったのであった。


  そして、王女が震え声で喋り出す。

「ありがとう......。是非ともキュアリスを助けてやってくれ......。」

  そう言うと、王女は目を覆ったまま、再び泣き始めるのであった。

  森山葉月は、涙に暮れる王女に、労りの眼差しを送った後で、俺と桜へ説明をするのであった。

「実は昨日、あなた達が国王軍に入隊する可能性がある話を、キャロリール陛下にしたのです......。」

  彼女の話によると、その話をした途端、王女は顔色を変えたそうだ。

  そして、その返答を隣で聞いていたい。

  そう言ったらしい。

  森山葉月はてっきり、キュアリスを『聖騎士』に擁立したのは王女であると思っていたらしいのだが......。

  実際の所は、枢密院の会議の中で、『初代聖騎士』の復活が希望されていた......。

  それに対して王女は反対の姿勢を崩さなかったらしいのだが、数日前にキュアリスは城に突如として現れ、『聖騎士』に復帰する事を志願してきたらしい。

  それが決定打となり、王女の気持ちとは裏腹に、キュアリスは『聖騎士』になってしまったと......。

「あたしは、キュアリスに戦争をして欲しくはない......。何度も説得した。だが、全く聞く耳を持ってくれ無かったのだ。それに、彼女は......。」

  王女は、自分の気持ちを伝えた後で、何かを言いかけた。

  俺は、それを聞くと、

「キュアリスには何があるんだ......?」

と、質問をした。

  すると王女は、一瞬ハッとした顔をして、すぐに居直り、

「それは、言えぬ......。約束だから......。」

と、あからさまに何かを隠す態度を取ったのだった。


ーーそれを聞いた時、キュアリスには、何か大きな秘密が隠されている事を察した。


ーーそれは全く見当がつかない。


  だが、キュアリスに対する気持ちは王女と同じである事を理解した。


ーーそして、俺は宣言した。


「いつか、俺が『聖騎士』になって、必ずキュアリスを救って見せる!!」

  それを聞くと、王女も森山葉月も微笑んだ後で、大きく頷くのであった。

  王女は涙を拭った後で、俺と桜に向け、通告をした......。

「これより、佐山雄二、並びに観音寺桜には、我が『ベリスタ王国国王軍』に任命する!!」


ーーそれをきっかけにして、俺と桜は正式に『ベリスタ王国国王軍』への入隊が決定したのだった。


ーー王女とも約束してしまった以上、もう引き下がる事は出来ない。


ーーいや、頭から引き下がる気などないのだ。


  最後に、その通告を受けた後、森山葉月が、徐に俺と桜に告げた。

「では、早速ではありますが、明日からあなた達は、『特殊異能部隊』の方への配属となります。心して従事して頂ければと思います。」

俺と桜はそれを聞くと、強く決意を固め、明日からの生活に気合を入れるのであった......。

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コメント

  • ノベルバユーザー253131

    作者さん書き方が上手ですね!

    0
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