天才過ぎて世間から嫌われた男が、異世界にて無双するらしい。

暗喩

第37話 心に決めたこと。


ーーーーーー

  森山葉月が部屋から出て行った後、俺は、只管に考える......。


ーーどうすれば、キュアリスと桜の二人を戦争の手から解放出来るのかを......。


  結局の所、キュアリスを助けるならば、今度は桜が犠牲になってしまうのだから......。

  だからこそ俺は、単騎で挑みたいと思っていた。

  しかし、森山葉月はその提案を完膚なきまでに打ち砕いたのである。


ーー彼女も馬鹿ではない。


  幾ら、俺に『度が過ぎる才能』があった所で、感情をコントロール出来なければ、それこそ戦争をする上でのリスクの他、何者でも無くなってしまう.....。


ーーそれを、一番自覚しているのは、俺自身なのだから......。


  だからこそ、俺はこんなにも悩んでいるのだ。


ーーどうすれば良いのだ......。


ーー全てが上手く行く眺望が全く見えない......。


  そんな風に難しく考えている俺に対して、桜は心配そうに見つめて、控え目に口にするのであった。

「桜もキュアリスを助けたい......。それに、雄二からも離れたくないし....。」


ーーその時俺は、既におかしくなった。


ーー感情が逆流してしまう......。


  そして、俺はその気持ちを思わず口にしてしまったのだ......。

「誰の為にこれだけ悩んでると思っているんだ!!軽はずみにそんな事を口にするんじゃない!!」

  俺から放たれた暴言を聞くと、桜はみるみる内に表情が崩れて行った。


ーー彼女は静かにすすり泣く......。


ーー哀愁の混ざった弱々しい顔で......。


  その様を見ていると、俺は息苦しくなるのであった。

  その後に、物凄い後悔の波が押し寄せる......。


ーーまるで、過去の懺悔まで引っ括めて行く様に......。


  俺は、一瞬でも桜に声を荒げた事を深く後悔した。

  そして、彼女へと謝る......。

「怒鳴ってしまってすまなかった......。俺もどうかしているみたいだな......。」

  俺が、泣きじゃくる彼女へとそう告げると、再び反省の気持ちを強く感じるのであった......。


ーーそんな時、まだ目から涙が溢れ続ける桜は、そのままの状態で顔を上げ、俺に向かって口を開いたのであった。


「だって桜には、雄二とキュアリスしかいないんだもん......。」

  俺はそれを聞いた時、彼女から目を逸らした。


ーーまさか、この子は......。


  そして、桜に向けて目を合わせる事なく、

「何言っているんだよ......。お前には、パパもママもいるじゃないか......。二人だって、桜が兵士になるなんて言ったら、悲しむんじゃないか......?」

と、明るい声で伝えた。


ーーすると突然、桜は、俺に抱きついて来た。


「もう、パパとママに会えない事、桜はずっと知っているよ......。」


ーー桜は、自分の親ともう会えない事を、知ってしまっていたのだ......。


  それに対し、俺は彼女の小さな体から、離れる様にして、

「な、何言っているんだ......。そんな訳が......。」

と、その場を取り繕おうと茶を濁すと、桜は俺の発言を遮断して、

「もう、優しい嘘はつかなくて良いんだよ......。」

と、俺の胸に顔を埋めながら囁いたのであった......。


ーー桜は、俺とキュアリスとの旅の中で、何かを察してしまったのかもしれない......。


  俺は、そんな自分の不甲斐なさに、項垂れてしまったのであった。

  そして、桜は言った。

「もう桜を、一人にしないで......。」


ーーその、弱々しくもか細いその口調を聞くと、俺は自然に上を向いて行った......。


ーーこんなにも幼い桜は、全て分かった上で、俺達には気丈に振る舞っていたのだ......。


  多分、俺は、子どもだから上手く騙せていたとでも思っていたのかもしれない。

  しかし、決してそんな事は無かったのだ......。

  だからこそ俺は、嘘をつく事を辞め、震え声の中で正直に桜に告げたのであった。

「今まで嘘をついてしまってすまなかった......。だが、今回の件に関して、桜も巻き込む事は、断固として反対なんだ。お前には、幸せになってほしいから......。」

  俺がそう伝えると桜は、俺の胸の中で、呟いた。

「桜は、雄二とキュアリスといる時が、一番幸せなんだよ......。」


ーー俺は、その言葉を聞くと、涙が止まらなくなった......。


  そして、嗚咽を漏らしながら、彼女に問いかけた。

「俺も桜も、死ぬかもしれないんだぞ......。」
  
  すると桜は泣き笑いを浮かべながら、俺に向け、

「うん......そんな事、分かってるよ。でも、雄二と離れ離れになるよりよっぽどいい......。桜は、一緒にキュアリスを助けたい。雄二の事だって助けたいよ......。」


ーー『助けたい』......。


ーー俺は、そんな言葉を貰った事が人生で一度もなかった......。


  だが、今、目の前にいる桜は、俺に向け、今、はっきりとその言葉を口にしたのだった......。


  そして俺は、それをきっかけに目の前を歪ませる涙を拭い、決心を固めて、彼女に向け、しっかりとした口調で伝えた。

「俺は戦争でどんなに辛い気持ちになっても、絶対にお前を守り続けてやる。例え、俺が死んでもな!」

  それを聞くと桜は、

「それはお互い様だよ!危ない時は、必ず雄二を助けるから......。だから、一緒にキュアリスを助けよう!」

と、笑顔で答えた。


ーーそして俺達は、キュアリスを助ける第一歩として、国王軍に入隊する事を決意したのだった......。


ーーこれからどんな悲劇が起こるのかわからない。


ーーだが、キュアリスの為にも決して意思を曲げずに『聖騎士』を目指す事を、俺は心に誓ったのであった。

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