天才過ぎて世間から嫌われた男が、異世界にて無双するらしい。

暗喩

第30話 別れと首都。


ーーーーーー


ーー彼女は思い出していた。


ーー小さな村で過ごす日々を。


ーー村には綺麗な花が沢山咲いている。


  日の出の浅暗い空の下で家を出ると、その一つの花に顔を近づけると甘い香りが漂ってくる。

  彼女はその香りを嗅ぐと、にこやかな笑顔をして少しだけ切ない気持ちになる。

  他愛のないひと時に哀愁を感じるのだ。

  そして、家の中に戻るといつも通り一人では食べ切れぬ程の料理を作るのであった......。ーー


ーー「キュアリス......?」


  俺は、遠目を見つめている彼女に向けて、そう声をかけた。

  村を出る日の朝もそうだった。


ーー彼女はずっと、部屋の中で上の空になっていたのである。


「いや、なんでもないよ!!ごめんね。」

  彼女は取り繕う様にして明るい口調で答えた。


ーーキュアリスは、昨日の王女とポルの一件以来、ぎこちない所作を見せている。


ーーその後で必ず、一瞬切ない顔を見せるのだ......。


  俺は、その動きに対して不信感は多少あったものの、あえて追求する事を自粛していたのだった。


ーー彼女を傷つけたくない。


ーーその一心で......。


  そこで俺は、ゴールが近づいている旅に鼓舞するかの様に立ち上がり、キュアリスと桜に向けて、

「じゃあ、『首都リバイル』へと向かうか!!」

と、満を辞して宣言した。

  すると二人は明るい口調で、

「そうだね!!」

と、張り切っていた。


ーーーーーー

  すっかり準備を済ませてお世話になったルインドの家を出る時、彼が話しかけて来た。

「今回の一件は本当に感謝するよ。」

  彼は俺にそうお礼を述べてきた。

  俺はそれに対して、

「こちらこそ、色々とご馳走になったよ。ありがとな。」

と、お礼で返した。

「俺も暫くしたらフリードに会いに行こうと思っているんだ。ここの所あの様な状況だったので、会えてなかったからな......。」

  ルインドは、フリードに会いに行く為にロンブロー・シティへと向かう事を俺に告げた。

「それなら多分、街の前にある一軒家に彼は住んでいると思うぞ。桜が建てた家だ。『魔法』の研究をすると張り切っていたからな!」

  俺は、フリードが別れ際に口にした言葉をルインドへと伝えた。

  そんな俺の発言に対して彼は微笑んだ後で、

「そうなのか!!奴はまだ『魔法』の研究を続けているんだな!!それならば、是非とも語り合いたいもんだ!!」

と、息巻いていた。


ーー彼の通っていた学校とはどうやら、『魔法学校』であったらしい......。

  
  だから、この前の時も『人間の気配』を感じる事が出来ていたのだ......。
  
  俺は彼の風貌からは想像出来ない『魔法使い』というカテゴリーに少しだけ笑ってしまった。

  それを見るとルインドは、

「何がおかしいんだ?」

と、疑問形で返して来たが、俺は知らないフリをした。

「いや、特に何も無いよ......。」

  そんな心にも無い一言を返答すると俺は、一つ息を吸い込んだ後で、

「また会おうな! 」

と、別れを告げた。

  すると彼も小さく頷いた。

「きっと、いつかに会う時、佐山雄二は大物になっていそうだな!! 」


ーーそう言って高らかに笑い声を上げて肩を組む彼に小さく微笑むと、俺達はルインドの家から出て行くのであった......。


ーーーーーー

  ルインドの家から村の広場に差し掛かった辺りで獣人族達が俺達に別れを告げに来たのだった。

  そこで、皆が感謝を口にした。


ーー俺は、ここ最近、自分が昔の自分でないと思う程に素直に人と接する事が出来る様になっている。


ーーそんな自分自身の変化に驚き、そして、感動をしていた......。


「みんなありがとう!!!」

  俺は、万遍の笑みで皆に別れを告げ、その場から去ろうとしていた。

  だが、桜だけは小さく俯いてソワソワとしている。


ーー俺はその理由がすぐに分かった。


  何故なら彼女は、リフェスとしっかりお別れをしていなかったからだ。

  俺はその様子を見て、

「ちゃんとお別れして来た方がいいんじゃないのか?」

と、桜に提案した。

  すると相変わらず俯いている桜は、

「昨日の夜からリフェスちゃん、部屋から出てくれなかったの......。」

と、ベソをかいていた。


ーーリフェスはきっと、桜との別れに余程ショックを受けているのかもしれない......。


  俺はそう思うと、一度空を見上げてから再び、桜の方を見た。

「でもずっと友達だから、また会えるから......。」

  桜は心の奥にあるモヤモヤをグッと堪えて呟いた。
  
  そして、笑顔になって、

「じゃあ、行こうよ!!」

と、空元気を見せたのだった。


  多少モヤモヤがあったものの、俺達は入り口の門を通り過ぎたのだった......。ーー


ーーその時、背後から大きな声が聞こえて来た。

「桜ちゃん!!!!また来てね!!!!」

  俺達はその声を聞くと慌てて後ろを振り返った。


ーーするとそこには、息を荒くしたリフェスが涙目で立っていた。


  それを見ると桜は、みるみる内に表情が崩れて行き、そのままリフェスの元へと駆けて、思い切り抱きしめた。

「当たり前だよ!!!!だって、桜の大事な友達だもん!!!!」

  リフェスはその言葉を聞くと涙を拭いながら、大きく頷いていた。

  そして、桜は泣き笑いをしながら、リフェスに告げた。

「また会う時はもっとたくさん遊ぼうね!!!!バイバイ!!!!」

  その言葉を最後に俺達は村を離れて行くのであった......。


ーー何度も振り向いては手を振る桜に込み上げてくる涙を抑えつつ......。


ーー桜にとってリフェスは、もう既にかけがえのない存在なんだな......。


  俺はそんな事を考えていると優しい気持ちになって、

「リフェスちゃん、良い友達だな......。」

と、桜に囁いた。

  すると彼女は、

「当たり前でしょ!!リフェスは桜の親友なんだから!!!

と、まだ若干の涙を拭えずにいる最高の笑顔で答えた。

  それを聞くと、俺とキュアリスはまだ湿った瞼を拭いながら、しっかりと目を合わせて微笑んだ。


ーーーーーー

  ベゴニア村を離れてから数日、俺達は草原の広がる平地を永遠と歩いていた。


ーー予定では後少しで首都だ。


  俺は、順調に進んで来た道のりを思い出しながら、強く感じていた。

  周りを歩く人が増えているのが、その予想に説得力をもたらす。


ーー俺は、今まで旅をした。


ーー沢山の人々に出会い、その中で人々との暖かさに触れた。


ーーそれは、時間では測りきれない程、大切な日々であったのだ。


ーー俺がこの世界に来て、目指した場所。


ーーその場所は、一瞬とも取れる程、濃密な時の中で辿り着いてしまったのである......。


  そして、ふと立ち止まったきキュアリスは、ゆっくりと口を開いた。

「ここが『ベリスタ王国』の首都、『リバイル』だよ。」

  俺は彼女の言葉を聞くと、顔を上げた。

  そこには、一際大きい門と、その先に見える大きな城がそびえ立つ、まさに『首都』という名に相応しい街が圧倒的存在感を発揮していた......。

  この数ヶ月、色々な事に巻き込まれながら目指した場所。


ーーそのゴールとなる地へ辿り着いた安堵.......。


  俺はその感覚が体の隅々まで支配して行くのが分かった。

  それと同時に、俺がこの世界に来た謎や、キュアリスの過去。

  全ての手掛かりがこの街には潜んでいる気がした......。


ーーしっかりと気を引き締めなければ......。


  俺はそんな感嘆と共に、強い自覚、意志を持つと、

「じゃあ行くか......。」

と二人に告げ『首都リバイル』への一歩目を踏み出したのだった。
 

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