天才過ぎて世間から嫌われた男が、異世界にて無双するらしい。

暗喩

第29話 王女様と幼馴染。


ーーーーーー

  俺は突如として現れた王女を前にして、何もする事が出来ず、只立ち尽くしていたのだった。


ーーどうして彼女は王女であるにも関わらず、一人で現れたのか......。


ーーそれに何故、彼女はキュアリスと親しげにしているのか......。


  俺は、そんな全ての疑問に答えを導き出せずにいた......。

  すると先程までドヤ顔を決め込んでいた王女は、今度はキュアリスの隣にいる俺の方に視線を移して、近寄って来たのだった。

「偶然とはいえ、キュアリスや佐山雄二に会えたのは意外だった!!」

  彼女は俺に向け、そんな事を言って来たのだった。


ーーどうやら彼女は俺の事を知っている様だった......。


ーーそれにしてもこの圧倒的な雰囲気......。


  そして相変わらず呆然としている俺に対して彼女は、

「葉月やグリンデルから話は聞いている。先日の『スケアリー・ドラゴン』の一件、感謝申し上げる!!」

と、お礼を述べたのだった。


ーー彼らは俺の事を王女にも報告していたのか......。


  俺はそれに気がつくと、相変わらずとんでもない雰囲気を出し続ける王女に対して、

「とんでもございません。有難きお言葉......。」

と、余り現実味の無い国の長に対して、何故か敬語になってしまい答えた。

  俺の発言に王女は満足した様で、一つ安堵のため息を吐いた。

  その後、息を吸い込んで、周囲で固まっている獣人族達に向けて、大きく叫んだのであった。

「どうやらもう既に全て終わってしまっていた様だが、ここに宣言しておく!獣人族に対する如何なる差別や侵略、蹂躙は、国家を持ってして禁止に致す!!これは絶対なのだ!あたしが決めた事だから!!」

  その宣言は村中に響き渡る.......。


  村人達はその言葉に対して一斉にあんぐりとする。


ーーそして......。


  彼らは一斉に喜びの雄叫びを上げるのだった。

「王女様の後ろ盾があれば、もう絶対にここが襲われる事はない!!」

  その中で、ルインドが一際大きな声で喜んだ。


ーーやっとこの村に完全な安心出来る状況が整ったのだった。


  俺と矢立の戦闘で一時は『遊び』は収まるかもしれない。


ーーだが時が経てば再びやってくる可能性はある。


ーーだからこそ、この王女の発した『宣言』は重要なのだ。


  王女は彼らの喜んでいる様子を見て、再び満足したみたいで、大きな声で笑っているのであった。


ーーすると、いつ現れたのか彼女の隣にはタイトなスーツを着た緑のショートカットの気の弱そうな女性が現れた。


「か、勝手に一人で出て行ってはダメじゃないですか......。」

  その女性がそう弱々しい声で叱ると王女は、

「なんだ!!ポル!!追ってきていたのか!!あたしは一人で行くと行ったはずだぞ!!」

と、怒りを表現していたのだ。

「ご、ごめんなさい......。でも、協議会からの命令なので仕方なくて......。」

  ポルと言う女性は王女に怒鳴られると泣きそうな顔をして反論した。

  それを見ると王女は顔を一瞬だけ曇らせた後、真っ赤な顔になって彼女から目を逸らしながら告げた。

「まあ仕方がない。我が秘書よ!今日はキュアリスと久々に会えて機嫌が良いのだ。今回だけは特別に許してやるわい!!」

  それを聞くとポルは深々と頭を下げ、

「あ、ありがとうございます!」

と、お礼を申し上げたのだった。


ーーどうやらこの気の弱そうなポルと言う女性は王女の秘書をしている様だ......。


そしてポルは、村の中をジロジロと見る......。


ーーポルの視線が止まった先には、先程の王女と同じ様にキュアリスがいた。


ーーそんな二人の距離感に、俺は思った。


  どうやらポルもまた、キュアリスの知り合いである事を......。

「キュアリスー!!!!久しぶりだねー!!!!」

  彼女も王女と同じ様なリアクションを持ってして、キュアリスへと抱きついた。

  そして、何故か王女もまたキュアリスに抱きつき始めた。


ーーこの混沌とした状況は一体何なのだ......。


  俺は、訳が分からなくなっていた......。

  そこで二人に体を掴まれて身動きが取れなくなっているキュアリスに向けて、

「何で王女様と秘書がお前と親しげにしているんだ?」

と、半ば引き気味に聞いてみた。

  すると、キュアリスは彼女達の体を退けながら、ため息をついて答えた。

「実は、私の生まれは『首都リバイル』なの。そこで、幼馴染として二人とは親交があったの......。」


ーーそう言う事だったのか......。


ーーだが、それにしても王女や政府の人間と親交があるなど、不思議でしかない......。


ーーーーもしかしたら、キュアリスも同様に貴族の類であったのでは......。


  そんな事を考えたのだった。

  俺は、キュアリスの過去については殆ど知らない。


ーーいや、気を遣って聞く事を避けていたのだ......。
 

  何かパンドラの箱を開けてしまう様な気分に駆り立てられて、結局聞けずじまいでいたのだった......。

  俺がそんな深刻な顔をしていると、王女は軽く答えた。

「別にキュアリスは貴族とかでは無いぞ!!」


ーー彼女は俺の気持ちが分かるのか......?


  俺はそんな猜疑心すら感じるのであった。


ーーそして、得意げな顔をした彼女は続けた。


「だが、キュアリスは王国において......。」


ーーポルは王女が何かを喋り出した途端、

「そろそろ帰らないといけませんよ!!キャロリール様にはやって頂かねばならぬ事が沢山あるのですから......。」

と、何かを遮断する様にして彼女の口を塞ぎ、足早に帰る準備を始めたのだった。

「私達はそろそろ帰りますが...。グリンデルさんからあなた達が『首都リバイル』を目指していると聞きました......。ここから数日間東へ歩けば到着しますので......。辿り着いた時は是非、私達の下へ来てください......。」

  ポルは控え目な声で俺へと告げた。

  俺はそれを聞くと、

「分かった。ありがとな。」

と、感謝を述べたのだった。

  王女は最後に、キュアリスへと何かを耳打ちしているのが分かった。

  キュアリスはそれを聞くと、一瞬だけ真剣な顔になって、

「またリバイルでお会いしましょう。」

と、別れの言葉を告げたのだった。


ーー俺はそのやり取りを見て、内容が気になったが、詮索する事はやめておこうと思った。


  そして、王女とポルはすっかり準備が終わった様で、広場の中央へ立ち上がると、彼女らの周りからは暴風が吹き荒れた。


ーーーーその風は線になり、東の方向へと伸びていった。


  すっかり王女への敬意を表するかの如く、道筋が出来ると、彼女達はその軌道に乗って飛んで行ったのであった......。


ーーーーまるで嵐の様な人達であった。


  俺は、その様子を瞬きをする事なくただ、見届けていたのだった......。

「この国の王女様って色々と凄い人だな......。」

  俺がキュアリスへ呆然とした顔で呟くと彼女は、

「昔からの事だから......。そんな事より、明日から旅立つんだから、早く準備始めなきゃ!!」

と、彼女はそそくさと準備へ取り掛かる為にルインドの家へと戻って行くのだった。


ーー『首都リバイル』までは後少し......。


ーー改めて気を引き締めねば。


  俺は、そんな気持ちを強く抱いて旅への決意をしたのだった。


ーーだが、一つだけ疑問がある。


ーーーー王女が風の『異能』を使っているのであれば、キュアリスは俺に説明する時、既にその確認が取れている事を、知っていた筈では......?

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