天才過ぎて世間から嫌われた男が、異世界にて無双するらしい。

暗喩

第27話 村の外にて。


ーーーーーー

  食事を終えた俺は、ルインドに呼び出された。

  そして、外へ出る様に促されたのだった。

「村の外へ出たのだろう......?」

  彼は暗い表情を浮かべながらそう問いかけた。

  それを聞いた時俺は、倒れる前に見た大量の墓を思い出した。

  それから俺は、少し視線を下に逸らして小さく頷いたのであった。
  
  すると彼は俺がそれを認めた事を確認すると、

「ついて来い......。」

と、溜息を吐いたまま歩き出した。


ーー村の外へ出ると、戦乱の跡がまだ色濃く残る茂みが見えた。


ーーそれは、まさに戦争の末路とも言える光景で、見た者全てを圧倒する事が容易に想像できた。


  その先に、先日気を失う直前で見た大量の墓が俺の目の前には広がっていた......。

  その一つ一つには名前が刻まれていて、彼らが命を落として行ったのが分かった。


ーーそれにしても改めて見ると、どの墓もやけに新しい......。


ーーまるで最近建てた様な佇まいである......。


「ここにある墓は......。」

  俺がそう小さく呟くと、ルインドは下を向いて表情を隠した後で、

「この数年で命を落とした者達の墓だ......。」

と、答えた。


ーーその墓は、村の周りを囲い込む様に点在していて、その数はゆうに千を超える、いわゆる一つの霊園の様になっていた。


ーーたったの何年かで千を軽く越える獣人族達が命を落としていった事を俺は理解したのだ......。


ーー人間による『遊び』の為に......。


  俺はその事実を知ると、只々言葉を失っていたのだった。

「どうだ?これは全て人間がやった事だ。まだお前が来た時は早朝にやられた遺体が残ってたんだよ。もし、人間であるお前がこれを見たら、妙な気を起こすんじゃねえか、とまだ疑っちまっててな......。」

  彼は、その墓を見ながらどうして俺を外へ出さぬ様にしたのかを説明した。


ーーあの時、ルインドは俺に心を許した訳では無かった様だったのだ。


ーーもしかしたら俺達も彼らと同じ様にと......。


「だとしたら、なぜあの時俺達を村の中に招き入れたんだ......?」

  俺は、そこだけが謎であったのだ......。

「それは......。」

  彼は一度俯いて、黙ってしまっている。

  俺はその様子から、隙があれば殺すつもりでいたのかもしれないと考えてしまっていた。


ーー幾らフリードの知り合いとは言え、人間からここまで非道い仕打ちを受けてきたのだ。


ーーそう思われても仕方がないと......。


ーーそして、彼は意を決した様な表情を浮かべて俺の顔を見て真剣な目で口を開いた。


「俺は、昔の様に人間と仲良くしたかったからだ......。」


ーー彼から出た発言は、全てであったのだ......。


ーー疑おうと嫌がられようと決して崩れない気持ち......。


  現に、俺の余計に考えていた『憎しみ』は、今の彼からは何も感じられないのだから......。

  只純粋に、真っ直ぐに人間と共存したい。

  それだけの理由で俺達を歓迎した。


ーーその考えは俺に衝撃を与えた。


  幾ら頭の片隅で思っていたとしても人間は疑う生き物だ。

  俺も同様で、まずは他人を疑う事から始めてしまっている。


ーー受け入れる事もせず......。


  そんな驚嘆な顔をしている俺を見て、ルインドは続けたのだった。

「だが、もうこの様な惨劇は起きないはずだよ......。」

  俺はそれを聞いて何故自信満々に宣言しているのかが疑問だった......。

「どうして確証が持てるんだ...?また村が攻められる可能性だって......。」

  俺が不安を口にするとその言葉を抑え込むかの様にルインドは喋り出した。

「俺が復活した一昨日から『魔法』を使って森の動物の耳を借りていたんだ......。その時、その悪しき『遊び』を運営していたと思われる者が『この村は危険だ。撤退すべき。』と、何者かに報告しているのを聞いた。」


ーー成る程。


ーー彼は『魔法』によりその情報を掴んだのか。


  そして俺が妙な納得をしている所で、

「それは、お前とあの男との戦闘を見て決めた様だぞ。」

と、俺にニコリとしながら続けた。
  
  最後に彼は、跪いた後で頭を下げて、

「今回、俺達を助けてくれてありがとう......。」

と、俺に感謝を述べたのだった。


ーー俺がこの村を救った......?


  俺はその実感が湧かずに立ち尽くしていた。


ーー俺はただ、ルインドを助けたかっただけだった......。


ーーそれに俺は今、彼から大切な事を学んだのだから......。


「そんなつもりじゃ無かったんだ......。お礼を言うのはこっちの方なんだよ。」

  俺は俯き気味に伝えた。


  すると彼は、俺の嘘偽りのない気持ちを察したのか立ち上がり、ニコリと笑った後で、

「ならば、今はそう言う事にしておこう。」

と、答えたのだった。

  俺はそれに微笑みながら、

「そうだな!お互い様と言う事にしておいてくれ!」

と、勢いよく伝えた。

「おう!後、今日はお前の快気祝いを村全体でやろう!大いに盛り上がってくれ!」

  ルインドは多分お礼の意味を含めて俺の快気祝いを開いてくれると言った。

  俺はそれを有り難く受け入れて、村へと帰るのであった......。


ーーーーーー


ーー村へ戻ると、多くの獣人族達が俺に感謝を述べた。


  中には泣いている者もいる......。


ーー今までの仕打ちが余程辛かったのであろう......。


  俺は照れ臭さを感じつつも先程とは違い、その感謝を受け入れる事にしたのだった。


ーーそんな時、桜と手を繋いでいるリフェスが俺の前にやって来た。

  俺の顔を見ず、耳を下に垂らして、尻尾を垂らした状態で......。


  そして、下を向いた後に決心したかの様に俺の顔を見て、

「あの......。パパを助けてくれてありがとう......。」

と、一言述べた。


ーーこの子は、曲がりなりにも不器用に俺にこの事を伝えたかったのだろう......。


  そんな事を考えていると、俺は上を向いてしまった。

  そして俺は、絞り出す様な声で、

「パパ、無事で良かったな......。」

と、呟いたのだった。

  彼女はそれに元気良く、

「うん!」

と、返事をしたのだ。


ーーこれからは安心して生きてくれよ......。


  そんな気持ちを胸に抱えつつ......。


  その様子を見ると、リフェスの隣にいた桜が、俺にしがみついてきて、

「雄二、元気になって良かったよ!」

と、嬉々として話した。


ーー俺はその言葉を聞いて、もう耐えられなくなった......。


  そして、嗚咽を漏らしながら、

「桜、ありがとな......。」

と、少ない言葉で伝えた。

  すると彼女は俺にしがみつく力を更に強めて、

「あれ?泣いてるー?大人なのに!!」

と、茶化してきた。

  それに対して俺は、

「な、泣いてねえから!これは汗だし!」

と、取り繕ったのだった。


ーーこの村に来て、やっと冗談を言える状況になった......。

  
  そんな小さな幸せを抱えつつ、俺は充実感を感じるのだった......。


ーー再び忍びくる影に気づく事もなく......。ーー

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