天才過ぎて世間から嫌われた男が、異世界にて無双するらしい。

暗喩

第24話 男との決闘。


ーーーーーー

  ベゴニア村の広場にて、俺は見知らぬ男と睨み合っていた。

  そんな中、真剣な眼差しで男は語った。

「戦う前に一つ質問したい。お前は何を抱えてこの世界に来たんだ......?」


ーー俺はその質問の意味がよく分からなかった。


ーー何故なら俺は、電車に乗っていたらいつの間にか転移させられただけだから......。


「理由などわからん......。」

  俺はその問いかけにうつむき気味に答えた。


ーーすると彼は、俺の深刻な様子を見ると、ニヤッと笑いながら語った。


「悪意、嫉妬、絶望、恐怖、劣等感、苦痛......。これが何を意味するか分かるか?」

  俺はその問いに答えられずに男を睨み続けていた。

  そして彼は、続ける様にして話した。

「これは俺が今まで会った事のある『異世界人』から聞いた言葉だ。要は俺達は、全員がマイナスの感情を持っているって事だよ!」


ーー俺はそれを聞いた時、その言葉の意味する事に気がついた。


ーー少なくともこの男の出会った『異世界人』達は、負の感情を抱えている。


ーー例外なく俺もそれに当てはまるのだ......。


「つまり......。」

  俺は、過去の出来事を思い出しながらその先の答えは言わずに察するまでに留めた。


ーー信じたくない......。


  すると男はその禁断の答えをさらっと答えたのだった。

「俺の推測ではあるが、そんな負の感情を持った奴がこの世界に転移して来ちまったって事だよ......。その結果を見てみろ!その『異世界人』達が自分の心の穴を埋める為に取った行動は......。『世界征服』だろ?!俺達はただ『自己満足』で動いているだけなんだよ!」


ーー俺は、その時彼から潔いまでの『諦め』を感じたのだった。


ーーそして、俺の心の奥から波の様に押し寄せる『孤独』『絶望』......。ーー


ーー俺が中学三年の時......。


  科学者をしていた父の姿を見るのが好きだった俺は、子どもの頃から良く研究所に足を運んでいたのであった。

  父は病から人を救う為に特効薬の研究を何年にも続ける権威で、俺もそれを手伝う事が多かった。

  父の憶測に俺が実験をする。

  そんな形で毎日は過ぎて行っていた。


ーー父を手伝える事が嬉しかった。


ーー嫌々というのは分かっていたが、それこそが俺にとって唯一『家族』を感じられる時間だったから......。


  だが、実験を繰り返して行く内に、俺は父の大きな『誤り』に気がついてしまった。

  それは根本的な物で、俺はそれを基に密かに研究をした。


ーーすると、俺の結論は正しかったのだった......。


  正直なところ、俺はその結果を父に話そうか迷っていた。


ーー彼は数年という膨大な時間を消費してしまっているのだから......。


  そこで俺は論文を完成させると、自分の部屋の机の奥に仕舞ったのだった......。

  それからも父の研究を手伝い続けた。


ーー結果を知っていても、知らないフリをしたまま......。


  そんな日々を繰り返している内に、父はどんどん病んでいった。


ーーそして、その感情が爆発する出来事は起きた。


  母が俺の部屋を掃除している時、たまたま俺の論文を見つけてしまったのだ......。

  母はそれを父へと渡し、それを見た父は血相を変えて俺の元へやって来たのだ。

「お前......。完成させていたのか......?」

  父は俺に問いかける。

  俺は、本能的に父へ嘘をつくべきだと考え、

「いや、それは単純に憶測なんだ......。別にそれは正解でも何でもないよ......。」

と、目を逸らしながら答えた。


ーーだが父は馬鹿ではない。


  その論文を見てすぐにこの論文の正当性を理解してしまったのだった......。

  そして父は大きくため息をつき、口を開く。

「実はもう、お前と暮らすのに限界を感じていたんだ......。」

  俺はその言葉を聞いた時、薄々と気づいていた父の気持ちが確信へ変わるのが分かったのだった......。

  最後に彼は後ろを向いたままで、

「お前を見ていると、うちの家族は自信がなくなる......。悪い事は言わないから、出て行ってくれ......。」

と、吐き捨てる様にして告げたのだった。


ーー俺は固まってしまった。


ーーそこに親が抱く無償の愛は皆無であった。


ーーそして俺という存在自体が害である事を察したのだった......。


  それからはマンションを借りて、一人で生活する事を強いられた。

  俺はそれに反論する事も出来ずに、『孤独』という闇へと突き落とされて行ったのだった......。

  そして、頼れる者が誰もいなくなった事で『絶望』を感じたのだった......。ーー


ーー俺は、過去を思い出すと、『絶望』にも似た、苦しい表情になってしまっていた。


  すると男はその顔を見るなり、

「いいぜ!!その表情!!今まで会ってきた奴らもみんな同じ顔になっていたよ!!俺達なんて所詮はその程度なんだからよ!」

と、ニターっと悪い笑顔で喜んでいた。


ーー俺も、この男と同じなのかもしれない。


ーー俺の願いは我儘で、誰も幸せにはしないのかもしれない。


ーー自分に自信を持てなくなる......。


ーーでも......。


「俺は、この世界を救うんだ......。」

  俺は、心の声をその男に思い切りぶつけた。

  すると男は、腕に纏わせた『異能』を武器に、俺に物凄い勢いで襲いかかってきたのだ。

  俺はすかさずそれを水の『異能』で作った刀により抑える。


ーー二つの攻撃が交わった時、村の広場には爆音が響き渡った......。


  男は更に腕へと力を強め、

「いつまでも戯言抜かしやがって......。馬鹿には分からせないといけないみたいだな!」

と、不敵な笑みを浮かべながら叫んでいた。


ーーどんな理由があっても、俺は初志貫徹して見せる。

  そんな気持ちを強く持った所で、戦いは始まったのだった......。

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