天才過ぎて世間から嫌われた男が、異世界にて無双するらしい。

暗喩

第23話 異変の先にあったもの。

ーーーーーー


ーー「あれ?!僕の靴が無い!!」ーー


  これは、俺が小学生の時に放った言葉だ。


ーーその後、すぐに聞こえて来る笑い声。


ーーその声の主達は、『遊び』として俺の心を傷つけて行った......。


  教科書への落書きや、全員での無視行為。

  時にはリンチに遭ったりもした......。


ーーいつも泣いている俺を元親友が助けてくれたのだが......。


  俺は『遊びのおもちゃ』として、苛めを何度も経験したのだった......。


ーー今この村にある状況はそれに似ている。


  程度の違いはあるにせよ、人が明らかな悪意を持ってしてこの村に攻め込んで来ている様は、ルインド言葉から簡単に予想する事が出来る......。


ーールインドが出て行ってからは、村全体が緊急態勢に入っていて、今俺達は村の中心にある広場へと移っていた。


ーー村の外からは途切れる事なく響き渡る来る轟音......。


ーーもう既に小一時間止まらない......。


  その音を聞くと、外では熾烈な戦いが繰り広げられている事が容易に想像できたのだった......。


  周りを見渡すと、皆が戦闘に控えて武器を持っていて、俺達も例外無くいつ敵が来ても良い準備をしていた。

「大丈夫だから......。私がいるからね。」

  ふと、キュアリスの声が聞こえた。

  キュアリスは、小さく震えている桜とリフェスを宥めるかの様に寄り添っているのが分かった。

  特にリフェスは過呼吸気味になってしまっていて、絶望を具現化した様な表情を浮かべていた......。


ーーきっと大きなトラウマが存在するのだろう......。


  俺は彼女の様子から、何か過去に大変な事があったと感じた。

  そして、その突然の緊張感に、俺を含めて周り者全てが固唾を飲んでいたのだった......。


ーーすると一人の青年が口を開いた。


「少しおかしいぞ......。ルインドさん達がここまで長い戦いをしているのは、見た事がない......。」


ーー周囲の者達は、その言葉を聞くと一瞬だけ怯えた表情を浮かべた後、更に武器を持つ腕に力を入れていた。


ーーだがその後すぐ、先程まで周囲を脅かしていた轟音がピタリと止まったのだった......。


ーー何とか終わったのだな......。


  すっかり静寂に包まれた空間の中で俺は、彼らのルインドへ対する信頼感から勝利を確信したのだった。

  村人達もホッと胸を撫で下ろして武器を仕舞っていた。


ーーそして、村の入り口からゆっくりとした足音が聞こえて来た。


  村人達はそこに笑顔で駆けて行き、彼らの勇姿を見ようとしていた。

  俺も例外無く、彼に一つ労いの言葉をかけようとしていたのだった......。


ーー入り口へと到着すると、そこにはルインドがいた。


ーーひとりの男に首元を掴まれて虫の息になっている姿で......。


  ルインドは、立つ事も出来ぬほどボロボロになっていて、男に引きずられて来た事が分かった。

  その後、男によって地面に勢い良く投げつけられてルインドはその場で苦しんでいる......。

  そんな中、血塗れになり血を吐いているルインドは、

「すまねぇ......。皆を守り切れなかった......。」

と、弱々しい口調で伝えた。

  その途端、一瞬訪れた安堵の雰囲気は一転して、恐怖へと変わったのだった......。


ーー村で一番強いルインドの変わり果てた姿を見て、誰もが戦意を喪失してしまっていたのだ......。


ーー男はパーカーを来ていて、茶髪にピアスという風貌だった。


ーーパーカーの胸に書いてある英語のプリントを見た時に、俺はこの男が『異世界人』である事を確信したのだった......。


  そしてルインドを倒したと思われる男は、俺達に向けて口を開いた。

「ったく......。つまんねえな!!街でお犬さん達を狩るとお金が貰える『遊び』が流行ってるって聞いたから来てみたら、全く張り合いがないもんだ!......雑魚過ぎだろ。お前ら......。」

  俺はその男の放った言葉を聞いた時、この『異世界人』に対する怒りが込み上げて来た。


ーー命は『遊び』なんかじゃないんだぞ......。


  そんな事を考えながら憎悪の目で見ている俺をチラッと見た後で無視した彼はその後、

「......まあいいや。お前らの中で一番強いのこいつだろ?遊んでやったけど、つまんないもんだったよ......。こいつの周りにいた他の雑魚どもは疲れたみたいでおねんねのしてるけどな......。」

と言って、『異能』を拳の辺りに纏い始めた。


ーーその色は赤色と緑色の二色が織り混ざっていて、どうやら『火』と『草』の『異能』を混ぜている様に思えた。


  そしてその拳を倒れているルインドの方へと向け、

「こいつ倒したら、このお犬さんごっこは終わりって事だろ?!お前ら全員によーく見せてやるよ。こいつの脳漿飛び散る姿をよ!」

そう言うと、そのまま腕を振り上げたのだった。


ーー俺は、その時自分の言葉を思い出した。


ーー「俺は世界を救いたい......。」ーー


ーーキュアリスや森山葉月にも宣言したあの言葉を......。


  そして俺は、強く思った。


ーー誰もが平和に生きられる世界を作る為にしたい......。


ーーもう誰にも悲しい思いをさせたくなんかない......。


ーーそして俺は、スッと前に出て行って、男の腕に目掛けて水の『異能』を放った。


  すると、男は腕をゆっくりと仕舞った。


  俺はその瞬間、ルインドを土の『異能』で村人達の元へ運び、後ろで怯える桜に向けて、

「俺の後ろに高い壁を作ってくれ!!みんなを巻き込むわけには行かない!!」

そう指図した。


  すると彼女は一度焦った顔をした後で、

「わ、わかった!」

と言って、土の『異能』で高く立派な壁を作り上げ、俺と男の二人を隔てたのであった......。


ーーその最中で聞こえたキュアリスの、

「絶対に負けないでね!」

という叫び声と共に......。


  すっかり不意打ちを受けて二人だけになった村の入り口にて男はうんざりとした顔をした後で俺に向け、

「お前、邪魔するんじゃねえよ......。殺すぞ......。」

と、鬼の様な形相で言った。

  俺はそれを聞くと、

「お前、『異世界人』だろ......。俺も『異世界人』だ。あっちの世界の事は、あっちの人間同士で精算しなければならないからな......。俺はお前を許さない。だから倒してやるよ......。」

と、真剣な表情で答えた。


ーーそして俺は水のオーラを纏って刀を作り上げた。


  すると彼は、不敵な笑みを浮かべた後で、

「お前も転移して来た人間だったんだな!!あの雑魚犬共より暇つぶしになりそうだ!!」

そう言うと、再び体に二色のオーラに身を包んだ。


ーーお前だけは絶対に許さない......。



  俺はそんな気持ちの中で、男との戦いに臨むのであった。

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