天才過ぎて世間から嫌われた男が、異世界にて無双するらしい。

暗喩

第22話 外部からの刺客。


ーーーーーー

  村を回る事になった俺達は、ルインドから注意事項を聞かされた。

「村の外には絶対に出るなよ。後、村の中を歩く時、最初嫌な思いをするかもしれない。すぐに収めるから我慢しててくれ。そして、『モンステラ・ロキシー』の名前は、決して出すんじゃねえぞ。うちの村の者も皆、目の敵にしているからな......。」

  俺はそれを聞くと大きく頷いて、彼の言い付けを聞く事を了承した。

  そして俺達は部屋を出て行った。

  部屋を出るとルインドは再び真顔に戻り、先程の喜怒哀楽は何処かに消えてしまったのではないか、と言う錯覚さえ感じる程の変わり映えだった。


ーーきっと村の隊長として、凛としていなければならないのだろう......。


  俺はそう解釈して、彼に理由を聞く事をやめたのだった。


ーーそんな時、桜達が部屋を出てきた音を聞きつけたのか、俺達目掛けて走って来たのだ。


ーー桜とその子はしっかりと手を繋ぎながら......。


  そして桜は俺とキュアリスに向かって、

「雄二!キュアリス!桜、ちゃんとリフェスちゃんと仲良くなれたよ!積み木をしたり、お人形遊びしたり...。すごく可愛いし!」

  そうはしゃぎながら、友達が出来た事に喜んでいる様子だった。

  リフェスはルインドにしがみついた後で、

「......パパ......。桜ちゃんといっぱい遊べたよ......。友達、出来たんだ......。」

と、消えてしまうかの様な掠れた声で囁いていた。


ーー俺は、桜に友達が出来た事を心から喜んでいた。


ーールインドは一瞬だけ目を見開いた後で、リフェスへと口を開いた。


「そうだったんだな......。それは本当に良かったな......。」

  彼の表情は一つも変わらないままだったが、上を向いたまま震えた声で話していた。


ーーきっと、余程嬉しかったのだろう......。


  俺はそう思うと、キュアリスと目を合わせて静かにその暖かい雰囲気に浸ったのだった......。


  ルインドは暫くすると、切り替えた様に俺達を見て、

「じゃあ、村の中を案内してやるよ。」

と、外へ出る様に促すのであった......。


ーーーーーー

  俺達は外へ出ると、先程入って来た村の入り口とは逆方向にある広場へと向かっている最中だった。

  桜とリフェスは余程ウマが合ったのか、

「あたし......。外に出るの久々......。」

リフェスは桜に向かってそんな言葉を零していた。

  そんなリフェスの感動に対して桜は、

「そうなんだね!でも、一緒なら楽しいでしょ?!」

と、笑顔で彼女に問いかけた。

  リフェスはその質問に対して微笑を浮かべながら、

「うん......。」

と、控えめな口調で答えた。


ーーその様子をルインドは只、見つめていたのであった......。


  そして広場へ到着すると、村民の一人はルインドに気づき、

「おや、ルインドさん!今日は珍客と同行ですか!」

と、彼を見た後で俺達の事を睨んだ。

  するとそれに続く様にして周りにいる獣人族達も俺達に冷たい視線を向けたのだった......。


ーー今となっては余程人間に対して敵対心があるのだろう......。


  俺はそんな事を考えていた。

  桜とリフェスはその異様な視線にビクッと体を固まらせていた......。

  キュアリスは、その余りにも殺伐とした空気感に困惑しながらも、しっかりと桜とリフェスを抱きしめたのだった。


ーールインドは流石にその光景にうんざりとしたのか、

「この人間達は今までの様な者達とは違う!それはこの俺が保証する!」

と、相変わらず表情を変える事なく宣言した。

  すると彼らは、

「まあ、ルインドさんが言うのであれば間違いないだろう......。」

などと、納得する事でその場は収まったのであった。


ーーどうやらこの村におけるルインドの言葉は絶対な様だ......。


  俺達は、彼らの目が柔らかなったのを確認すると、安心して溜息を吐いたのであった......。


  それから俺は、穏やかになった空気感の中で彼らの様子を見ていた。

  剣を巧みに操る老人や、その教えに食らいつく少年。

  組手をやっている青年達に、弓を引く少女。


ーーその一人一人はどの者達も、しっかりとした型を持っていて、戦闘における達人級である事は素人目にしても十分に伝わって来たのであった......。


  そこで俺は、ルインドへ呟いた。

「どの者達も鍛え上げられているな......。何も嗜んでいない俺でもすぐにわかるよ......。」

  ルインドは俺の呟きを聞くと、

「まあな。俺達はいつ何処で攻撃を受けるか分からねえ。だから、それに備えなきゃいけねえんだよ。」

と、体に力を入れながら答えた。

  そしてその後で、

「本当は......。」

と、何かを言いかけた。



ーーだがそんな時、俺は村の外れに広がるの茂みからこぶし大の鉛が飛んで来るのを発見した。



ーーそれは、物凄い勢いでルインドを目掛けて
一直線にやって来た......。


  俺は咄嗟に、

「危ない!避けろ!」

と、ルインドに伝えた。

  俺の言葉を聞いた彼は、勢いよく体を捻らせたのであった。


ーーそしてその鉛は彼をすり抜けて近くの民家へと当たった後、大きく爆発したのだった......。


ーー幸いその民家には誰もいなかった様で、全員無事であった......。


  ルインドは、その粉々になった家を見た後で、

「本当に厄介な物だ......。最近は面倒な『遊び』が蔓延しちまっているからな......。」

と、力を込めて語った。


ーー『遊び』......。


  俺はその言葉を聞くと、先程、彼が話していた獣人族に対する世間からの差別の話を思い出した。


ーーそしてすぐに、憎しみにも似た感情が生まれた。


  ルインドはその後、

「ちょっと仕事が出来ちまったから、待っていてくれ。だがさっきも言ったが、絶対にこの村から出るんじゃねえぞ!」

と、釘を刺して早々と集まった仲間達と共に村から出て行った......。


ーー俺はその後ろ姿を見て、この村の抱える問題の大きさを強く感じているのであった......。
 

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