天才過ぎて世間から嫌われた男が、異世界にて無双するらしい。

暗喩

第21話 獣人族の気持ち。


ーーーーーー

  俺達はルインドに連れられ『ベゴニア村』に入ると、驚いていた。

  何とその村の者達の多くが、表に出て武術の修練に励んでいたのだ。

  規律よく建ち並ぶ木造の家屋の中心にある広場にて木刀を振ったり、武術に励んだりもしている。

  それは、年寄りから桜くらい幼い子どもまでいて、まさに村全体が軍隊と呼べる程の光景だった。

  そして、何よりも驚いたのは、全員が獣耳である事だ。

  俺がいた元の世界ではその様な種族がいなかったのもあり、衝撃を受けたのは容易に想像できるであろう。

  そこで俺は、この世界に人間以外の種族がいる事を理解したのであった。

  桜は獣人族を見るとはしゃぎ出して、
 
「かわいい!!!桜も耳が欲しいよー!!どうやったら生えるの!?」

と、恍惚の目で見渡していたのだった。

  俺は、桜のそのはしゃぎっぷりを見るとすぐに彼女の口を塞いで見せた。

  キュアリスは、その光景を見ると何かを言いたげだったが、そのまま黙っていた。

  俺のそんな様子を見るとルインドは、

「よく修練されているだろ。奴らはみんな自ら進んで鍛えているんだよ。」

と、相変わらず表情を変えないまま誇らしげな口調で話した。

  俺はそれを聞くと、ちょっとした疑問が湧いたので聞いて見ることにした。

「でも何で、全員がここまでストイックに訓練しているんだ?」

  すると彼は少し深刻な表情を浮かべながら、

「中でゆっくりと話そう。」


と言って、いま丁度到着した一軒の一際大きな家屋の中へ入る様促したのであった......。


ーーーーーー

  俺達は家の中へ通された。

  すると中では家の中を楽しく駆け回る一人の少女がいた。

  彼女も例外なく獣耳が生えていて、尻尾を振りながら楽しそうな笑顔を見せていた。


ーーだが彼女は、俺達の存在に気づくと、いきなり真顔に戻って廊下の奥の角へ駆けて行ってしまった......。


ーーどうやら少女は極度の人見知りなのだろう。


  俺はその様子から容易にそれを想像できた。

  ルインドは逃げて行った彼女を見つめながら、

「俺の娘、リフェスに悪気はねえんだ。気を悪くしたら悪かったな......。」

と、俺達に謝罪を述べた。

  あの、リフェスという少女は彼の娘であった様だ。


ーーそして俺はそんな彼女をそっとしておこうと思って見なかった事にしようとした。


ーーだが、俺の手を握っていた桜は目を輝かせていた......。


「かわいいーー!!!!ねえ、ルインド!!あの子と遊んできていい!?」

  そう言って、ルインドに確認を取ってきた。

  するとルインドは、

「仲良くなれるか分からねえけど、遊んできな。」

と、初めて小さく微笑んだ後で、そのお願いを受け入れていた。

  それを聞くと桜は、

「やった!!じゃあ雄二、行ってくるね!!」

と、笑顔で俺の手を解いて少女の元へ走って行った。


ーー正直、俺は止めようと思っていたが、ルインドが言うなら仕方ないと思ったので、容認した。


  その後、俺とキュアリスは奥の客室に通された。


  そして、ソファに腰掛けるとルインドは、途端に笑顔になり、

「フリードは元気にしているのか?!」

と、先程の表情と打って変わって明るく振舞っていた。


ーー尻尾に関してもかなり振り回しているのが分かった。


  俺とキュアリスは、その変貌に圧倒されて返す言葉もなく呆然としていたのだが、そんな俺達の事をお構い無しにして、

「実はフリードとはロンブローシティにある学校に通ってた時からの親友なんだ!だから、暫く会えてはいねえんだけど、久々に会いたいもんだよ!」

と、半ば興奮気味で続けた。


ーー俺はその変化に焦っていた。


  あまりにも突然に明るくなった彼の姿を見ると、この男の本性はこちらなのだと理解した。


ーーそうならば、傍若無人なフリードと仲が良いのも容易に想像できたのであった......。


  俺は、そんなとにかく明るいルインドに対して、この村について質問をしたのだ。

「そうだったんだな。フリードと親友なのも理解出来たよ。だが、何故この村の者達は皆、あそこまで鍛錬を続けるんだ?」

  彼はそれを聴き終えると、笑顔から一転して顔を曇らせた。

  そして、ルインドは口を開いたのだ。

「その事なんだが......。我々の種族は元々が戦士気質な所があったのは事実だ。しかし最近では全く人間と関われなくなっちまったんだよ...。」

  彼が言うには、獣人族もほんの少し前迄は、普通に人間の街に出たり、国家の兵隊になったりと交流が盛んにあったらしい。

  中には戦場にて実績を残し、将校になった者もいる程だと。

  その最たる例が、先代のヘベレス王国、騎馬隊
隊長をやっていた、『モンステラ・ロキシー』と言う男らしい。

  彼は、ベゴニア村における英雄の扱いであった。


ーーおととしのヘリスタディ帝国との合戦までは......。


  その合戦に於いて、彼は指揮官として従事していたのだが、どんなキッカケがあったのか、突然発作を起こしたかの様に寝返ってしまい、結果、仲間達をどんどんと斬りつけて行った。

  結局、その合戦は撤退して、ロキシーは感情を殺したかの様な表情のままヘリスタディ軍と共に行ってしまったのだと。

  それからと言うもの、獣人族は獰猛で裏切り者と言うのが世間の定説になってしまい、挙句の果てに村を攻めに来る輩まで現れる始末だと言う。

  だからこそ、この村の者は自分を守る為に更に鍛錬を重ねているのだとか。


ーー俺達が守衛によって村を通してもらえなかったのもそれで道理が立つ......。


 そんな事を思った。

「ロキシーさんは、そんな人では無かったんだ!信頼もあって、時に優しく、時には厳しく接してくれた...。絶対に何か裏があっての事としか考えられねえよ!」

  ルインドは、テーブルを思い切り叩きながら感情を表現していた。

  俺はそれを聞いた時、再び『魔法』の作用による物である事を確信した。

「だが、それならばそれは、『魔法』によって操られていたからじゃないか?そうなると、世間が許さないのもわかるが、弁明の余地はありそうだけどな......。」

  俺は彼に向かってそう伝えた。

  すると彼は、

「そんな事は全員が分かっているんだよ。只でさえ獣人族、人であらず。世間は何か理由をつけて、そう仕向けたかったんだよ。そんな事は分かっていたけど......。」

と、苦虫を噛み潰した顔をしていた。


ーー俺は、その言葉を聞き終えた後で、この世界にも差別と言う概念がある事を知った......。


ーー世間......。


  それは偏見の塊で出来た集合体の様な物だ。

  少しでも人と違えば、それは普通ではなくなってしまう。

  俺はそんな事を何度も経験してきた。

  だからこそ、彼らのそのもどかしい気持ちが痛い程分かるのだった......。

  俺が言葉を選べずにそのまま黙り込んでいると、キュアリスが口を開いたの。

「そんな事、全く関係ないのにね......。私はそう言うの大嫌いだし!!」

  ルインドはその言葉を聞くと、一瞬驚いた様な顔をした後で、小さく微笑んで、

「もっとそう言ってくれる奴がいると、俺達ももう少し行きやすい世界になるのかもしれないな......。君然りフリード然り......。本当にありがとう。」

と、最後にキュアリスへ感謝を述べた。


ーー俺も、昔の世界の事を思い出して、少しだけ卑屈になっていたのかもしれない......。


ーーフリードとルインドの絆も、そう言う所にあったのだろう......。


  そう考えると、自分に恥ずかしさを感じたのだった。

  するとルインドは、

「もしよかったら、俺達の村をゆっくり見て行くといい。この村の自警団の隊長はこの俺だ。俺がいれば、お前達への目も少しはマシになるだろう。村の様子が気になっていたんだろ?」

と、俺の好奇心を読み取ったかの様な発言をした。

「ならば、お言葉に甘えさせてもらうよ。」

  俺はその厚意に甘える事にした。


ーーそして、俺達は村の中をゆっくりと回る事になったのだった......。

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