天才過ぎて世間から嫌われた男が、異世界にて無双するらしい。

暗喩

第18話 トラウマと幸せ。


ーーーーーー

  再び旅を始める決意をした俺達は、フリードへの家の明け渡しの為の荷物を纏めた後で、街に必要な物を買い出しを終えた所だった。

  俺は街の中に入った後、まだ綺麗な街を眺めていた。

  その建物一つ一つが、彼らの手で復興させた事を物語っていた。

  更に街行く人は活気付いていて、笑顔が絶えない。


ーーなんて強い人達だ......。


ーー俺もそこまで強くなれるのか......。


  そんな事を思いながら、暫く考える事のなかった過去について思い出していた。ーー


ーー「お前を見ていると、自分が惨めで仕方がなくなる。」ーー


ーー元親友からの一言を......。


  彼は幼い頃からの親友で、唯一『度が過ぎる才能』を持つ俺に、引け目なく接してくれる存在だった。

  学校から帰る時も遊びに行く時も、いつも彼は一緒で、当時誰からも認められる事の無かった俺の心の拠り所であった。


ーーあの出来事が起きるまでは......。


  俺はその日、休日という事もあり彼と遊びに出掛ける予定を立てていた。

  そして、約束の場所で待っていた。


ーーしかし、そこに彼が来る事はなかった。


  不審に思って、俺は電話をかけた。

  だが、幾ら電話しても、出ることはない。


ーーそんな時、彼から電話が掛かってきた...。


「もしもし!もう何時だと思っているんだよ!!流石に待ちくたびれたぞ!!」

  俺は、電話越しに少し怒りながらもコンタクトを取れた事に喜んでいた。


ーーだが、返ってきた声は、彼の声では無かったのだ......。


「ごめんなさい......。母です。実は息子は......。」

  俺はそれを聞くと、走り出した。


ーー交通事故なんて、嘘だ!!


  そんな事を強く思いながら......。

  病院に着くと、彼は、手術中であった。

  俺は息を荒げながら、手術室の前にある椅子に腰を下ろした。


ーー絶対にそんな訳がない......。


  すると、隣に座っている彼の母が俺に一言だけ言った。

「ごめんね、雄二くん......。」

  俺はその言葉を聞いた時に、親友が事故に遭ったと言う現実を痛いほどに理解したのだ。

  余程酷い事故だった様で、手術時間はとても長い時間だった。

  日付が変わっても、俺はそこに残り続けた。


ーー長らく待ったその時、『手術中』のランプが消えた。


  そして医師が彼の母に向かって告げた一言は、

「手術、成功です。」

という明るい報告だった。

  それを聞くと母は泣き崩れ、

「ありがとうございます!!」

と、何度も医師に言っていた。


ーー本当に良かった......。


  俺は、それを知ると、安心をした後で、帰途へ就くのであった...。


  それからと言うもの、俺は毎日、病院に訪れた。

  そして、意識が戻った彼とくだらない話をしたりして過ごしていた。

  彼は、至って元気だった。


ーー動かなくなった足を除いては......。


  俺は、その事を敢えて追及する事もなく平静を装い、いつも通りに振る舞っていたのだ。


ーーそんな日々が一年くらい続いたある日、彼は俺に言った......。


「もう、ここには来ないでくれ......。」

  その神妙な表情から、俺は彼が本気で伝えている事が分かった。

  しかし俺は、

「何の冗談だよ!今までだってずっと、俺達は仲間だろ?」

と、少し引きつった顔をしながらも、明るく返事をした。


ーー絶対に認めたく無かったから......。


  すると彼は、今まで見た事の無い程暗い表情を浮かべた後で、俺に向け怒鳴った。

「俺はもう、普通じゃないんだよ!だから、これ以上関わらないでくれ!!お前を見ていると、俺は惨めで仕方がなくなる......。」

  俺はそれを聞くと、もう彼と友達で居られなくなる事を自覚したのだった。

  そして、親友は告げた。

「もう、俺に関わらないでくれ......。」

  俺は、その言葉を最後に何も話す事なく、静かに部屋を出て行くのであった。


ーー俺の気遣いは、彼をどんどんと傷つけていたのだ。


ーー俺は、彼から放たれた言葉から、やっとそれを理解した。


ーー俺が唯一の親友を失った瞬間だった。


  その後、俺は今まで以上に塞ぎ込む様になり、周りからの悪意のある悪口は、それに拍車をかけて行った。


ーー俺は、最低で弱い男だ......。


  そんな事が、心の奥底から悲鳴の様に叫び続けているのが分かった。ーー


ーー「雄二、肩車して!!」


  気がつくと、桜が俺にしがみついていた。


  俺は、フッと一つ笑った後で、彼女を持ち上げて肩の上に乗せた。

  肩に乗った桜は、キュアリスに向けて、

「やったー!!!桜、キュアリスよりも大きくなったよ!!!」

と、俺の肩の上でジタバタとしていた。

  するとキュアリスは、

「そうだね。桜、私よりも大きくなっちゃったね。」

と、微笑んでいた。

  その後彼女は、俺の方に視線を移し、

「なんか、こう言うの楽しいね。」

と、幸せそうな顔で囁いた。


ーー俺の一抹の不安。


ーー俺の失敗。


ーー俺の最低な行動。


  俺は、それを優しく包み込んで隠してくれるキュアリスのその言葉を聞くと、俺はまだ続く旅の号令を取った。


「じゃあ、旅に出るか。」

  俺がそう伝えると、二人は頷いた。


ーー俺の心の傷は、癒えることはないだろう。


ーーだけどそれを、鎮める事は出来る。


  俺は、そう思うと、ロンブローシティの門に一つ挨拶をした後、家へと荷物を取って旅への気合を入れるのであった......。


ーーーーーー

  俺達は荷物を取りに戻ると、玄関には、フリードが立っていた。

「昨日はありがとうございました!本当に良いんですか......?」

  彼は俺を見ると、再び確認を取ってきた。

  それに俺は、

「何回も聞かなくても良いよ!大丈夫だって言ってるだろ!」

と、笑顔で答えた。

  すると彼は、笑顔になって、

「本当にありがとうございます!大事に使わせてもらうので、もしまた此処に来る機会があったら、立ち寄ってください!」

と、答えた。

  そして、俺達は荷物を持って、再び首都を目指すのであった。


ーー俺は、去り際にフリードへ伝えた。

「この街は、良い街だな。」

  それを聞くと彼はニコッと笑った後で、

「はい!この街は最高の街です!!次来る時はきっと、もっと大きくなってますよ!!」

と、これからの復興に意気込んでいた。


ーーそして俺達は、ロンブローシティを去るのであった......。

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