天才過ぎて世間から嫌われた男が、異世界にて無双するらしい。

暗喩

第16話 ハンバーグとカレーライスと魔法使い。


ーーーーーー

  俺は、桜に遊ばされている。

  いや、むしろ遊ばれているのかもしれない......。

  もう既に一時間程も。

  おままごとに始まり、次にお人形遊びをさせられたり......。

   挙句の果てには今、格闘ごっこに変わってしまっていた......。

「とう! これで終わりだー!! 」

  そう言うと桜は、俺に向かってキックをかまそうとしていた。


ーーその時、キュアリスがやって来た。


「おはよう......。いや、この場合は、こんばんは、になるね。」


ーーちょうど同じタイミングで、桜のキックはギリギリで横を向いてしまった俺の股間にクリーンヒットした...。


  俺はその痛みに悶絶しながらも、

「こ、こんばんは......。」

と、苦笑いを浮かべながら返事を返すのであった......。

  その様子を見て、キュアリス少し困惑した後で、

「もう暗くなっちゃったね......。ごめんなさい......。」

と、申し訳無さそうに謝った。


  それを聞くと俺は、

「気にするな! そんな事より、そろそろ街に出て外食をしないか? 」

と、キュアリスに提案した。


  すると彼女は、

「そうだね!桜との約束もあるし......。じゃあ、急いで準備して来るね!」

と言うと、走って二階に上がって準備を始めたのであった......。


「やったーー!! ハンバーグが食べられる!!!楽しみにしてたんだ!! 」

  桜はそう言いながら喜んでいた。


ーーそして、キュアリスの準備が終わると、三人で歩いて二十分程の場所にあるロンブローシティへと、この即席とは思えない家から向かうのであった。


ーーーーーー

  俺達が街に着くと、すっかり夜の賑わいが始まっていて、歩いていると酒で陽気になった人などがポツポツと現れていた。

  その中で俺は、レストラン兼バーの様な雰囲気をした一軒の店に目をつけた。

  その店には、家族連れから酒に酔った冒険者風の者など、バリエーションが豊富で、そこそこ繁盛していた。
 
  そして俺は、確認を取る様に、

「ここでいいか? 」

と、提案した。

  それに対してキュアリスは、
  
「良さげな店だね! ここなら私の肥えた舌も、少しは唸らせてくれるかも! 」

と、料理へのプライドを伺わせながら答えた。

  空腹の桜は、

「どこでもいいから早くして~。もう、お腹ペコペコだよ~。」

と、下を向いてお腹を抑えていた。

  了承を得た俺は、そのまま二人を連れて店の中へ入って行ったのだ。


ーーーーーー

  俺達は店に入ると、椅子が四つ置かれたテーブルに腰を掛けた。


ーーそして、メニューを手に取る......。


  当てずっぽうで入った店だったので、もしハンバーグが無ければ、桜はまた泣き出すからもしれない。

  そうなると厄介なので......。


ーーそんな不安の中、メニューを開いた...。


ーーよし。あるな......。


  ハンバーグがあった事に、俺は安心をした。


  そして俺は桜に、

「ハンバーグあったぞ。」

そう伝えると、彼女は、

「やったー!!!じゃあ後、カレーライスの甘口も!!!」

  そう、純粋無垢な笑顔で追加メニューを要求してきた。


  それを聞くと俺は、

「あんまり頼むと食べられなくなるぞ。」

と、彼女の胃袋を気遣って注意をした。

  すると桜は、

「大丈夫!!これが桜のいつもの量だから!!明日からは良い子にするから~!!」

と、嘆願してきた。


ーーまあ、約束してしまったし、今日くらいは甘やかせてやるか......。


  俺はそう思うと、一つ溜息をついた後、

「残さず食べろよ......。」

と、微笑を浮かべた。


  キュアリスは、そのやり取りをニコニコとしながら見た後で、

「じゃあ、私達もハンバーグでいいかな?」

と、聞いていたので、

「ああ......。」

と、俺は答えてメニューが決まったのだった......。


ーーーーーー

  オーダーを待っている間、隣に座っている桜は待ち遠しいと言う様な表情を浮かべたまま、ソワソワしていた。

  その様子を見た俺は、

「後少しだから待っていろよ。」

  そう、励ますと彼女は、

「大丈夫だよ!! 桜、パパとママと約束したんだもん!! だから、ちゃんと待てるもん! 」

と、未だに落ち着き無さそうに待ちながらも、得意げに言った。


ーー俺は、それを聞いた時、また、父の最期の言葉を思い出してしまっていた......。


  向かいに座っているキュアリスも、それに気づいていた様で、微笑みながらも、小さく首を横に振ったのがわかった。


ーーその時、頼んだハンバーグが三つと、桜のカレーライスがやって来た。


  桜は、余程嬉しい様で、
  
「やったーー!!!ハンバーグだよーー!!カレーライスも!!頑張って待って良かったよ~。」

と、ナイフとフォークを持ちながら、喜びを全身で表現していた。

  そして、まずハンバーグを口に頬張ると、

「ん~!!美味しー!!」

と、幸せに満ち溢れた様な顔をしていた。

  更にフォークのままカレーライスに手をつけると、同じリアクションをしていた。

  俺とキュアリスは、食べる事も忘れて桜の顔を見ては、フフッと笑っていた。

  そんな俺達の様子を見て、桜は一度食事の手を止めて不安そうに言った。



「何で、二人とも泣いているの......?」



  俺とキュアリスは、お互いの顔を見合うと、自分の目元を確認した。

  そして、慌ててその表情を隠した。

  その後で俺は、慌ててハンバーグを口に運んだ後で、

「いや、ハンバーグが美味しすぎてな!!このハンバーグは、泣ける程美味しい!!」

と、何とか取り繕った。

  キュアリスも、

「そ、そうだね!このハンバーグは絶品です!」

と、俺に合わせるかの様にしていた。
 
  それを見ると桜は、笑顔に変えて、

「だよねぇー!!桜の舌は、誤魔化せないからね~。」

と、すっかり不安を忘れて、また食事を始めたのであった。


ーーこの笑顔を守りたい。


  桜の素振りを見て俺は、そんな気持ちにさせられた......。


ーーそんな時、隣から怒鳴り声が聞こえて来た......。


「本当だって!!!昨日まで何もなかった場所に突然、立派な家が建っていたんだって!!」


  俺はびっくりして横に目をやると、そこには、青いローブを纏った弱々しい体型をした青年が、仲間と思われる者達に向かって立ち上がり熱弁していた。

「そんな事、あるわけないだろう......。お前、嘘も大概にしておけって。たとえどんなに凄い『異能』が使えたってそんな事できる訳がない!」

  仲間が、冷めた口調でその熱弁を全否定していた。

  すると青年は、再び熱くなって続けた。

「なら、本当かどうか、見に行って見るか?!この街から北西に......。」

  俺はそこまで喋った所で、彼の口を押さえて無理矢理外まで運んで行った。

  仲間達に聞こえる様に、

「おう、久しぶりだなー!!元気にしていたか?!」

と、大声で言いながら......。


ーー無駄な目立ち方はしたくない。これからの旅に於いては。


  それが得策と考えて......。


ーーそして俺は、その青いローブの青年を外に強引に運び出すと、解放した。

  青年は、息を荒げながら、

「ハアハアハア......。何なんですか!訳がわかりません!僕は今、仲間達に自分の正当性を訴えていた所なのですよ!邪魔しないでください!」

そう言って、怒りが冷めていない様子だった。

  そこで俺は、彼の見た物について正直に説明をした。


ーー俺の見立てでは、余り悪い者には見えなかったので......。


「実際に、あの家は存在する。だって、俺達の住居なんだから......。」

  すると青年は、

「やっぱりあそこには、家があったんですね!じゃあ、僕の言っていた事は正しかったんだ!」

と、喜んだ後で、そのまま仲間の元へ戻ろうとしていた。

  俺は、それを再び強引に引き止めて、

「だけど、その事は余り沢山の人には知られたくないんだ。理由があってな......。だから、黙っていてほしい......。」

そう、少し怪しさは混ざっているものの、意を決して頼んでみた。


  それを聞き終えると青年は、

「そこまで言うなら......。わかりました。」

と、納得した様な素振りを見せた。

  そして、俺は一安心した。


ーーやはり俺の予想は正しかったんだ......。


ーーしかし、彼はとんでもない事を言い出した。


「でもその代わり、一度あの家を見せて下さい!!それでないと、みんなに言いふらかしますよ......。」

  俺はそれを聞いた時、一瞬戸惑ったものの、彼の悪い顔を見て観念した。


ーーどうやら俺の見立ては間違っていたみたいだった......。


  その後俺は、自分の失敗を悔やみながら、絞り出す様な声で伝えた。

「なら、見せてはやるけど、絶対に秘密だからな。」

  俺がそう念を押すと、その青年は笑顔で、

「わかってますよー!!良かったです!これからの研究に役立ちそうなので!!」

と、はつらつとした表情を浮かべていた。

  そして続けて、
 
「とりあえず、名乗っておきますね!僕はこの街で、魔法使いをしております、ラバスト・フリードと、申します!」

と、ニヤニヤしながら、自己紹介をした。


ーー魔法使い......。


  俺はその言葉を聞くと、先日の戦いで、ランドリー・シェムと言う男が使っていた、あれを思い出した。


ーーこの世界の『魔法』という概念にも知識を深めなくては、今後の戦いにて足元を掬われかねない.....。


  そう考えると彼から情報を仕入れねば、と、強く思うのであった......。
 

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