天才過ぎて世間から嫌われた男が、異世界にて無双するらしい。

暗喩

第15話 桜の能力。

ーーーーーー

  太陽の形がくっきりと見え始めた早朝、俺達は街へと歩いていた。



  遠くに見えるロンブローシティは、ヘベレスシティとは違い、門の大きさも半分程で、地方都市とも取れる造りなっているのが伺えた。

  俺達は、再び一睡もしていない事もあり、何とか宿に泊めて貰おうと考えていた。

  キュアリスはこの前の様に倒れる事はなく、気丈に振る舞っていたので安心しながら......。

「じゃあ、街に入ったらまず、仮眠を取ろう。それから必要な物資を集めて旅立つとしよう。」

  俺はそんな言葉を、キュアリスに掛けた。

  するとキュアリスは、

「そうしよう! 雄二も戦ったから疲れてるだろうし......。でも私、今日はこの前みたいには、ならなかったでしょ?」

と、褒めて欲しそうな顔でこちらを見つめていた。

  なので俺は、

「そうだな......。よく頑張りました! 」

と、にこやかな顔で彼女を褒めた。

  キュアリスは、それを聞くと、満足そうな顔をしていた。


ーーしかし、そんな和やかな雰囲気を壊すかの様に、俺の背中からは、金切声が聞こえて来た......。


「やだやだやだ!! 遊ぶの!! つまんない!!!」

  そう、桜だけはずっと寝続けていたので、元気一杯なのだ。

  俺は一瞬ビクッとした後で、

「わがままを言うんじゃないぞ! でも......。もし寝ている間大人しく待っていられるなら、後で美味しいもの食べさせてあげるぞ!!」

と、お決まりの食べ物で釣るという提案をした。


ーーあまり、キュアリスに無理をさせたくないから苦肉の策で......。


  それを聞くと少し考えた後で桜は、

「お、美味しいもの......。んー!! じゃあ、それで許してあげる!! その代わり、ハンバーグとか、カレーとかだからね!!! 」

と、ご機嫌になった様だった。

  俺はホッとして、街の中へ入ろうとした。


ーーだが、桜はとんでもない事を言い出した。


「なら、寝れる所作ってあげるね!!」

  俺は一瞬、「?」となった。

  すると桜は、俺の背中から降りた後で、手から土属性の『異能』を出し、すぐ先の所へと放ち始めた。


ーーその土はみるみる内に形を変えて行き、形を作り始めた。


「これは......。」

  俺とキュアリスは、それを見ると絶句した。


ーー目の前には、煉瓦造りの見事な二階建ての一軒屋が出来上がっていたのだ...。


  俺は、思わず、

「何だ、これは......。」

と、驚きを隠せずにいた。

  そんな開いた口が塞がらない俺達を見ると桜は、

「へっへーん!!! どう?! 凄いでしょ!! 桜が作ったんだよ!! 」

と、胸を張ってしたり顔をしていた。

  俺は、確認する様に中に入る。

  内装も完璧だった。

  玄関からキッチン、食卓、リビング、二階に上がると、寝室もしっかりと形になっていたのだ......。

  そして中に入った桜は、

「これが最後の仕上げ!! 」

と言って、草属性の『異能』で木を生み出して、そこからタンスやテーブル、椅子などの家具を作って見せた。

  そしてそれを終えると、見事な「家」が完成していたのだ......。

  まだ十歳にも満たない程の少女が作ったとは思えない程の出来栄えの......。


ーー俺は、焦りつつも、彼女はやはり、複数の『異能』が使えた事を確認した。


ーーこれが、桜の父が言っていた彼女の力だったのか......。


  俺は、そう思いつつ、桜を目一杯褒めてやった。

「桜、凄いな!!一瞬で家を作っちゃうなんて!!」

  すると桜は、

「そうでしょ!! ならば、ゆっくりと寝ていいよ!!桜はクマさんと遊んでるから!! 」

  そう言って、抱えているクマのぬいぐるみを持って、リビングの方へ駆けて行った。

  俺は、桜がいなくなるとキュアリスに、

「びっくりしたな......。だが、これで安心して睡眠が取れる。ここは、ゆっくりと休ませてもらう事にしよう。」

と、笑顔で告げた。

  するとキュアリスは、

「そうだね。これから何があるか分からないし、とりあえず寝よっか!!」

  そう返事をすると、カバンの中から毛布を取り出して、各々の部屋に入って行った。


ーー俺は、余程疲れていたのか、桜の作った木枠のベットの上に毛布を敷くと、そのまま倒れる様にして眠りに就いたのであった......。


ーーーーーー


ーー「雄二!!!雄二!!!」


ーー俺は、その言葉で目が覚めた。


ーー何だろう......。


  体が重い......。

  そんな中、薄っすらとした意識の中で目を覚ますと、そこには桜が俺の上に乗っかっていた。

  そして、俺は寝惚けた口調で言った。

「桜、もう少し寝かせてくれないか......?」

  それを聞くと桜は、

「やだ!! いつまで寝てるの?! もう、一人で遊ぶの飽きちゃった!!」

と、駄々を捏ね始めた。


ーーふと、外の空を見ると、もう既に夕暮れに差し掛かっていた。


ーーどうやら俺は、半日近く寝てしまっていた様だった。


  そして、まだ完全に目の覚めていない状態で階段を降りて、リビングへと向かったのだ。


ーーそこへ着いた時、俺の目に入ってきた光景を見て、衝撃を受けた。


  家の目の前には、生え揃った芝生、その奥綺麗な花が沢山並び、すぐ近くには、たっぷりと実った果実があった。


ーーまさに、そこは庭になっていたのだ。


  周りの大草原の中からすると、もはやそこはオアシスであった......。

  そして桜は、庭先に走り出すと、実った果実を手にして食べながら、

「全く......。全然起きないから一杯食べちゃったじゃん。」

と、少々ご立腹の様子だった。


ーーこの子は、物凄い才能を持っている。


  俺は、そう理解したのだった......。

「ところで......。」

  俺は上を見上げながら、キュアリスの事を思い出すと桜は、

「キュアリスには声掛けなかったの。だって......。泣きながら寝ていたんだもん。」

と、真面目な顔に戻って答えた。


ーーまた無理をさせてしまったのか......。


  俺は、自分の行動をまた、少しだけ後悔した。

  桜は俺のそんな顔を見ると、

「大丈夫......?」

と、不安そうな表情を浮かべていた。

  俺はその顔を見ると、すぐに戻り、

「いや、別に何でもない!キュアリスが起きたら、街に美味しいものを食べに行こうな!」

そう言うと桜は、

「じゃあ、それまで一緒に遊ぼう!!」

と、笑顔で答えた。


ーー夕暮れの中で手を繋ぎながら......。

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