天才過ぎて世間から嫌われた男が、異世界にて無双するらしい。

暗喩

第14話 哀しみの果てに。


ーーーーーー

  俺は戦いを終え、先程とは打って変わって静寂に包まれた森の中ににいた。


ーーふと見ると、頭の無いボスらしき男の手元に一枚のカードが落ちていた。


  俺は、遺体に手を合わせた後で、そのカードを手に取った。


『ヘリスタディ帝国 暗躍部隊 一番隊隊長 ランドリー・シェム』


ーー俺は、それを見た時、気がついた。


  先日グリンデルが話していた、メルパルク山での誘拐事件との関連について......。


ーーやはり、国家主導の下で何かを企てている事が分かったのだ......。


ーーーー桜以外にも狙われている者がいる......。


  俺はそれに気づくと、一刻も早く戻らねば、と、思ったのだ。


ーーしかし......。


  俺は、その前にどうしても気になることがあった。


ーーそれは、ソローリ村の状況だった。


  先程、ランドリー・シェムという男が村人を皆殺しにしたと言っていた。


ーーだが、もしかしたら奇跡的に生き残っている者がいるかもしれない......。


ーーならば、行かねば......。


  そして俺は、キュアリス達の待つ森の反対方向へと走り出すのであった......。



ーーーーーー

  俺は、二時間ほど走っている。

  決して足を止める事なく......。


ーー誰でもいい......。生き残っていてくれ......。


  そんな事を考えながら......。


ーーすると、辺り一帯に焦げ臭い匂いが漂って来た。


  その匂いの先に走る......。


  そして、目の前は開けた。


ーー俺はそれを見て、目を疑った...。


  ソローリ村は、もうすでに村という概念を捨てて、焦土と化していた。


  本来は家屋であったであろう木材が、煙を上げて崩れている。

  その周りには血塗れになっていたり、黒焦げになって、亡くなった人々の遺体......。


ーー村は、本来の形が分からない程に変わり果てていた......。


ーーやはり、惨劇は本当に起きてしまっていたのだ......。


  俺はグッと顔を強張らせた後で、

「誰かいませんか?!」

と、必死に呼びかけ続けた。


ーー数日前まで幸せであったであろう、村の中を走りながら......。


  しかし、その声は虚しくも、村を抜けて森の奥を吹き抜けて行くだけであった......。


ーー桜、本当にすまなかった......。


ーー俺がもっと早く辿り着いていれば......。


  半ば諦め気味で半泣きになりながら......。


ーーそんな時、男の声が聞こえた。


「だ......誰か......いるのか.......?」

  俺はその声を聞くと、足元に目をやった。

  そこには......傷だらけになり、下半身が倒壊した家屋に埋もれている一人の中年がいた。

「だ、大丈夫ですか!? 今、助けます!! 後少しだけ待っててください!! 」

  俺は、その中年を助けようと、声を掛けた。


  しかし、その中年は、

「いいんだ......。この状態では手当が間に合わん......。このままにしておいてくれ......。」

と、弱々しい口調で話した。


ーーまるで、自分の死期を悟っているかの様に......。


  そして、彼は続けた。

「娘を......森の中に逃した......。もし......見つけたなら......その子を......よろしく頼みたい......。」


ーー俺はそれを聞いて気づいた。


ーーこの中年男性は、桜の父親である事に......。


  それを知った俺は、

「あなた、観音寺さんですよね! 桜なら、もう大丈夫です!だから、一緒に行きましょう!! 俺は、あなたと同じ日本から来た者です! 」

と、涙で視界を曇らせながら必死に説得した。


ーー不幸になんかさせるものか。


  そんな気持ちの中で......。


  しかし桜の父は、口から血を吐きながら、俺に喋りかけた。

「おお......。お前も日本から来たのか......。懐かしいものだ......。俺はこの世界に来てからずっと、この村で過ごしてきた......。桜は元々この世界の住人であった俺の妻との子だ......。あの子の力は底知れん......。守ってやってくれ...。」


ーーそんな彼を見て俺は、この人がもう助かる事がないと悟った。


  そして俺は、涙を拭った後で、


「わかりました......。俺がこれから桜を守る事を誓います......。」

と、桜を守る決意をした後で、問いかけた。

  すると、彼は、

「頼んだぞ......。最後に...娘に伝えてくれ......。」

と、絞り出す声で俺に伝言を伝えた。ーー

「......。」


ーー俺はそれを聞くと、

「わかりました!! 任せてください!! 」

と、無理矢理笑顔を作った。

「ありがたい......。頼んだぞ......。」


ーーそして、桜の父はその言葉を最後に、息を引き取ったのであった......。


ーーそれから俺は、その村の全ての遺体を埋め、一本の太い木を差して一つの墓地を作った。


  そこに手を合わせると、俺は再び走り出した。


ーー桜とキュアリスの元へと......。


ーーーーーー

  俺が約束の場所へ着いた時には、すっかりと真夜中になっていた。

  キュアリスは俺を見ると、みるみるうちに表情を歪ませた後で、

「良かったーーー!!!! 死んじゃったかと思ったじゃない!! 」

と、泣きながら俺に抱きついて来た。

  俺は少しだけ照れながらも、

「心配させて悪かった......。」

と、彼女に謝罪をした。


ーー本当にごめんな......。


  俺はそんな事を思いながらも......。


  そしてふと、キュアリスの奥を見てみると、そこには、毛布に包まって眠っている桜がいた......。

  俺がそれをぼんやりと眺めていると、

「泣き疲れて寝ちゃったの......。余程疲れていたのかもね......。」

と、キュアリスが俺に微笑みながら伝えた。

  そして俺は、キュアリスに今まであった事をありのままに伝えた。


  まずは先程の集団が、ヘリスタディ帝国の者だった事について。

  その話をすると、キュアリスはペンダントでグリンデルへと事の顛末を伝えた。

  それを聞いたグリンデルは、

「やはりそうであったか...。分かった。それではこちらで何か対応を考える。伝えてくれて感謝する...。」

と、俺達にお礼を言った。


ーーそして......。



ーーキュアリスは、その話を聞き終えると、涙を堪えていた。


「そんな事があったんだ......。」

  彼女は涙声で話した。


  そして俺はそんなキュアリスに告げた。

「これは、桜の父親との約束だ。これから、南に進んで、『ロンブローシティ』を目指そう。本来はここで野宿したいのだが......。森は危険だ......。」

  すると俺の話が終わる前に、彼女は、

「大丈夫だよ!この前はちょっと失敗しちゃったけど、今日は平気だから!早く森を抜けようね!」

と、目を擦りながらも、微笑んでいた。


ーーそして俺は、眠っている桜を起こさぬ様におんぶすると、歩き出したのであった......。


ーーーーーー

  俺達は数時間歩くと、やっと森を抜けた。


ーー目の前には、朝焼けが広がっていた。


ーーそして、遠くには、『ロンブローシティ』が見えていた。


  そんな時、桜が目を覚ました。

「ここはどこ?パパとママは......?」

  俺は、それを聞き終えると、ゆっくりと父からの伝言を伝えた...。

すると、桜は、

「わかった!!」

と、笑顔で答えた。


ーーそんな健気な桜を見ながら、俺は、涙を堪えつつ彼女の父の最期の言葉を思い出していた......。ーー


「パパとママは、暫く遠くに行く事になっちゃったんだ。それまでの間、しっかりとお兄ちゃんの言う事を聞いて良い子にしてるんだぞ。では、愛しき愛娘よ、また会う日まで......。」


ーーお父さん、俺は絶対に桜を孤独にはさせません......。ーー


  そう心に誓った後、俺は、顔をパンッと叩いて、降り注ぐ朝焼けの中、『ロンブローシティ』へと踏み出すのであった。

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