天才過ぎて世間から嫌われた男が、異世界にて無双するらしい。

暗喩

第12話 謎解きと悪意。


ーーーーーー

  俺達は、この果てしない森の中で不自然にも迷子になっている、幼い少女を見ていた。

  少女は、俺達が駆け寄ると、一度、人と会って安心したのか泣き止んだ後で、また、泣き出した。

「パパーーー!!!!ママーーーー!!!!」


ーー俺は、戸惑っていた......。


  只でさえ普通の人と話す事も緊張するのに、ましてや子どもなど、言語道断なのだ......。

  そんな風に、泣いている子どもを前にして俺はオロオロと情けない動きをしていた。


ーーキュアリスは、その様子を見兼ねたのか、

「落ち着いて!ところで、おやつ食べる?」

と、少女に向けて言った。

  すると少女はピタッと泣き止み、

「うん......。」

と答えて、俺達の休憩していた木の下へついて来たのだった。

  荷物の元へ戻ると、キュアリスはカバンから昨晩作ったクッキーを二、三枚取り出して、

「はい!これあげるね!」

と、にこやかに少女へ渡した。

  少女はまだ真っ赤な目のまま、無言でそれを受け取った。

  そして、クッキーを口に運ぶ......。

  すると、一瞬、ハッと言う顔をした後で、

「おいしい......。お姉ちゃん!! このクッキー、すごくおいしいよ!! 」

と、先程とは打って変わって表情が晴れたのだった。

  その顔を見てキュアリスは、

「良かった~。まずいって言われたらどうしようと思ったよ! まだあるから、たくさん食べてね! 」

と、少女にクッキーを再び差し出したのだった。

  その光景を俺はただ見ていると、キュアリスはこちらを向いて、一つウインクをした。


ーーキュアリスさん、流石です......。


ーーそれにしても、この少女は、歪だった。


  なぜかと言うと、服や体の汚れ方からして、もう数日程、森を彷徨っているのが分かるからだ。


ーーしかも、この雰囲気......。


ーーもしかしたら、この子も『異世界人』なのでは......?


  例えばたまたま、あちらの世界で遊んでいたら転移してしまったとか......。


  そこで俺は、すっかりご機嫌の直った少女に、質問をしてみた。

「君は、どこの村から来たの?」

  すると彼女は笑顔で、

「ソローリ村だよ!パパとママと村の人と、みんな仲良しなんだ!」

と、誇らしげに答えた。


ーーどうやら、彼女は異世界人ではなかった様だった。


ーーだとすると、この歪な雰囲気は何なのだろう......。


  そんな事を考えたが、俺の勘違いだった様であった。


ーーしかし、そうとなれば、目的の場所は一緒だったみたいなので俺は、

「じゃあ、お兄さんとお姉さんが、ソローリ村まで送り届けてあげるよ!」

と、少女にぎこちない笑顔を向けた。

  それを聞くと少女は、

「やった!!これでパパとママに会えるんだね!」

と、喜んでいたのだった。

  それが決まると、俺達は荷物を纏め、再びソローリ村まで歩き出したのであった。

  歩き出す直前に、キュアリスが、

「ところで、お名前は何?」

と、少女に聞くと、

「観音寺桜だよ!!」

と、誇らしげな口調で名乗ったのであった。

  俺は、その名前を聞いた時、思わず顔が強張ってしまった。


ーー少女は、日本名を名乗ったのである......。


ーーそしてその少女に対する謎は、深まっていくのであった......。


ーーーーーー

  俺達は、再び歩き出してから一時間が経っていた。

  俺は、ひたすらに脳内で少女についての謎解きをしている。


ーーなぜ、この世界の村民が、日本名を名乗るのだ?


ーーもしかしたら、転移した所をソローリ村の人に保護され、育てられたのかもしれない。


  そんな事を考えていると、桜はまた、キュアリスにクッキーをせがんだのであった。

  キュアリスはそれを聞くと、困った顔をして、

「ごめんね......。もう無くなっちゃったの......。また今度作ってあげるから、許してね。」

と、桜に謝罪をしていた。

  桜はそれを聞くと、目にたっぷり涙を溜めた後、

「いやだ! いやだ! いやだ! もう一個食べたいの!! 」

などと、体をバタバタとさせながら駄々を捏ね始めた。


ーー俺は、その光景を見ていると、一度少女についての謎解きをやめ、桜と自分の幼少期を投影していた。


  俺が幼い頃は、何一つとして物をせがんだ事などなかった。

  もっと言うと、せがむ事すら出来なかったのだ。

  物心がついた頃からずっと、他人に引け目を感じながら生きていた。

  なので、弟や妹が両親に向かい、駄々を捏ねて、挙句、物を買ってもらっている間も、俺は常に遠くで見ているだけだった。


ーー桜は俺の兄弟と同じだ。


  子どもらしい子どもなのである。


ーー俺は、素直な少女を見ていると、情けないとは言え、羨望の感情が湧き出していたのだ。


ーー俺は人と違う......。

 
  悪い意味で人と違うと、心の奥底で思っていたから......。


ーーそんな時、森の木陰から、

「やっと見つけたぞ......。」

と言う男の声が聞こえた。

  その声は、悪意に満ちていて、とても、迷子の子どもを探している声とは言えなかった......。

 すると、そんな言葉を発した男は、駄々を捏ねている桜に向かって一直線で走り出すと、そのまま彼女を抱え込んで走り去ろうとした。

  俺はすかさず、水の『異能』を、そいつの背中に向かって撃った。

  すると、その『異能』は見事に男に命中した。

  苦痛から男は桜を手放した後、すこし間合いを取った。

  黒いマントを目深に被っている背の高い男......。

  その男は既に構えていて、戦闘態勢なのが伺えた......。

  キュアリスはそれを見ると、すぐに桜の元に駆け寄り、ギュッと抱きしめていた。

「大丈夫だった......?怪我してない?」

  キュアリスはその状況に困惑しながらも、桜の介抱を最優先していた。

  桜はキュアリスの顔を見ると、小さく震えながら、胸の中に塞ぎ込む様に泣き出した。


ーーどうやら、無事であった様だった......。

 
  俺はそれを確認すると、一瞬だけホッとして、その男に向かい、

「何の用だ!お前はどう考えても、迷子の捜索には見えない......。理由を説明しろ!」

と、問いかけた。

  すると男はニヤッと不適な笑みを浮かべた後、

「お前達には、関係のない事だ......。死ぬといい......。」

と呟いて、土の『異能』の作用と思われる槍を、手から出してきた。

  俺はそれを見ると、目の前に水の壁を張り、槍を弾いた。

  そんな俺の攻撃に対して彼は、少しだけ笑っているのが確認できた。

  そして、男の後ろを見ると、大勢の黒いマントを着た者達がいたのだ。


ーーどうやら何かの組織の様だった......。


ーーなぜ、彼女を狙っているのだろう......。


ーー俺は、そんな疑問を抱えながらも、その組織の者達と戦い始めるのであった......。ーー

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