天才過ぎて世間から嫌われた男が、異世界にて無双するらしい。

暗喩

第11話 旅立ちは森の中で。


ーーーーーー

  俺とキュアリスは、朝焼けに照らされた宿の部屋の中で旅の準備を終わらせ、『ヘベレスシティ』を出ようとしていた。

  彼女は丁寧に衣服を畳むと、旅に必要な食物を鞄の中に全て仕舞った後で、俺に完了の合図をしたのだった。

  それを確認した俺は、荷物を背負うと部屋を出る直前に、今回の旅の決意表明をした。

「今日からは、本当に危険な旅になる。もしものことがあったら、そのペンダントで助けを呼んでくれ......。」

  彼女の胸に光っているルビーのペンダントを見つめながら、そう告げた。


  すると、キュアリスは、何故か少しだけ嬉しそうな顔をしながら、

「うん。わかった。今日からが本当の旅になるんだもんね......。心して頑張ります!」

と、昨日、俺から託されたばかりのペンダントを握りしめたまま、抱負を語った。

  俺達はその決意表明が終わると、お世話になった部屋から出て、宿のマスターにお礼を伝えた。

  すると、マスターは、

「今朝早くに、グリンデルさんが来たんだ。その時に、お届け物を頼まれてね。預かっているから受け取ってくれ。」

そう言うと、俺にリュックを差し出した。

  俺は、「何だ?」と、思った後に、中身の検討もつかぬまま、そのリュックを受け取った。

  相変わらず頭に疑問が交錯しながらも中を開けると、そこには一枚の地図と、コンパス、そして、小さな袋が一つ入っていたのだった。

  その袋に疑問を持って開けてみると、十数枚の金貨が俺の目に入ってきた。


ーーその袋の奥には、一通の手紙があった......。


  俺はそれを手に取ると、まだ字を読めないので、キュアリスに代わりに呼んでもらった。


ーーその内容はこうだった。ーー


ーー先日はどうもありがとう。


  我も、とても楽しい時間を過ごす事が出来て、感謝しているよ。

  これから旅をする上で必要な物を、用意しておいた。

  鞄の中に入っている地図は、『ヘベレスシティ』から、『首都リベイル』迄の最短ルートを示した物だ。

  これを参考に行ってくれると、到着までの時間を短縮出来るであろう......。

  後、少ないとは思うが、少しばかり金を入れておいた。

  実は、本当は高級レストランに行くだけの予算を用意してもらったのだが......。

  これからの旅には、必ず必要になる物だと思い、使わずに取っておいたのだ。

  我からも餞別で割り増しをしてあるから、宜しかったら活用して欲しい。

  最後に、最短ルートだと言っても、数週間は掛かるほど遠い道程だ。

  もし何かあれば、昨日渡したペンダントを駆使して、必ず連絡をしてくれ。

  その時は、何処にいようと、我々は参上致す!

  では、ご武運を......。

グレル・グリンデルーー


ーーキュアリスがその手紙を読み終えると、俺は少しだけ込み上げる物があった。



ーーーー俺達の為にここまでしてくれるとは......。



「良い人だったね......。」

  最後に彼女がそう付け加えると、俺は、体を少しだけ震わせながら、

「そうだな......。」

と、感極まっている事を隠す様にして答えた。

  その後ですぐに、グッと体に力を入れて、

「じゃあ、行くとするか!」

と、仄かに流れた涙をかき消す様に、気合を押し出して、号令をかけた。

  そして俺達は、再度マスターに感謝を伝えて、『ヘベレスシティ』を去るのであった......。


ーーーーーー

 
ーー俺達は街を出てもう既に、七日が経っていた。


  グリンデルの書いてくれた地図を道標にして、一番最初に辿り着くと記してある『ソローリ村』を目指し、東へ、ひたすらと歩いていた......。

  その道は、平地と草原、たまにあるのは川だけという殺風景が永遠と続いていた。

  毎日の様に隠れられる岩場などを探しては野宿を繰り返す。
 
  そして、コンパスを頼りに再び同じ景色の中を歩き出す......。


ーーそんな不毛な七日間を過ごす中で、いつしか、俺の楽しみはキュアリスの作る料理だけとなっていた。


  彼女は、軍帥と会う前の二時間の間に、大量の食料を調達していたので俺の背負う荷物は異常に重くなったものの、それが功を奏して、何処にいても絶品の料理を振舞ってくれた。

  俺は、その度に彼女を褒めた。

  すると、キュアリスは必ず、

「だから、料理だけは誰にも負けないって言ったでしょ!」

などと、誇らしげな顔をして胸を張っていたのだ......。


  更に俺はそんな退屈な日々の中で、キュアリスから寝る前に簡単な読み書きを教えてもらっていた。


ーーお互いが左手に『異能』で火を灯しながら......。


  そこで登場するのが、『度が過ぎる才能』である。

  俺は初めてその才能に感謝しつつ、人外なスピードで、言語を覚えて行った。

  その結果、ものの数日で新聞を読めるまでに上達をしていて、キュアリスからは驚きを隠せない様子が伺えた。


ーーそして、今もまた、明るくなったばかりのこの不毛の地にて、歩いている......。


  だが俺は、もう直ぐにはこの景色が変わると確信していた。

  その根拠は、グリンデルの地図の端書である。


ーー七日ほど歩くと、森が見えてくる。

そこを半日かけて抜けると、そこは『ソローリ村』だーー


  彼は、地図にわざわざ説明まで書いてくれていて、そのおかげで道を見失う事はなかったのだ。


ーー俺達と別れた後すぐに、全て書いてくれたのだろう......。


  そう考えると、俺は彼に対して感謝の気持ちで頭がいっぱいになったのであった......。

  そして俺は、

「もうそろそろ森に到着するな......。」

と、キュアリスに対してそう呟いた。

  すると彼女は、

「長い七日間だったね。何だか、あっという間と言えば、あっという間だったけど......。」

と、見慣れた景色の中で、俺が未だに見慣れない笑顔でそう答えた。


  そんな話をした後、暫く歩いていると先には、広大な森が見えてきた。


ーーやっと、この代わり映えのない景色から抜け出せる......。


  俺は、その変わりばえの無い風景からの脱出を、心から喜んだ。

  キュアリスは、俺を超える喜びを見せた。

「やった!!やっと見えたよ!!森だよ!!森!!!ねえ雄二!!見えるよね?!」

  キュアリスは、興奮を全身で表現していたのだ。

  俺はそれを見て、


ーー相変わらず、感情に正直な奴だ。


ーーしかし、彼女は哀しみを心の奥に抱えている......。


ーーそんな気持ちを俺は、どれだけ支えられるのであろうか......。


  そんな複雑な気持ちを持った。


  その後、俺達は風景の変化に喜びながら森へと足を踏み入れたのであった......。


ーーーーーー

  森に入って数時間程経った所で、俺達は、大木の隅を借りて、一休憩を取っていた。

「もうそろそろ、目的の村まで辿り着けるはずだ。ようやくだな......。」

  俺は、彼女に向かってこの七日間の大団円を告げかの様に伝えた。

  するとキュアリスは、

「そうだね...。これからどんな出会いが待っているのか、楽しみで仕方がないよ! 私、ずっと一人だったから......。」

と、一瞬だけ哀しい顔をした後、笑って答えた。



ーー俺は、その言葉を聞いた時、彼女の過去について、少しだけ気になってしまった。



ーーーーお前には昔、一体どんな事があったのだろうか......。


  その感情は、体の奥底から押し寄せ、俺は、その流れを止める事は出来なかった......。




ーーそして、思わず口にしてしまったのだ......。




「あの......。ずっと聞きたかった事があるんだけど......。」


  俺は、キュアリスの方を向いてその、禁断の質問を問いかけようとした。

  するとキュアリスは、

「いきなり真剣になって、どうしたの?」

と、あっけらかんとした顔をしていた。


  そして、俺は、意を決した様に質問を続けた。

「あのさ......。」ーー


ーーーーと、その時だった。


「うわーーーん!!!!ここ、どこーー????」


そんな幼い女の子の泣き声が、辺り一帯を支配したのだ。



ーーそして俺達は、声のある方向に目を向ける......。



ーーすると、その視線の先には、茶髪ロングで真っ青なワンピースを着て、熊のぬいぐるみを抱えた、小学生低学年くらいの年齢と思われる少女が泣きながら歩いていたのだ。


  その幼い少女は、俺達の存在に気づくと、

「......お兄さん、お姉さん......。ここは何処なの......?」

と、涙で真っ赤になった目を抑えながら、呆然としている俺達に質問してきたのだ......。


ーー何故この子は、こんな深い森の中で迷子にでもなったのだろうか......。ーー


  そんな疑問を抱きつつ、俺達は少女の方へ駆け寄っていたのであった。

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