天才過ぎて世間から嫌われた男が、異世界にて無双するらしい。

暗喩

第9話 異世界人との対面。


ーーーーーー

  俺は、衝撃を受けていた。

  何故なら今、目の前にいる女は、聞き慣れた日本名を名乗ったからである。

  明らかに雰囲気のあるこの『森山葉月』と名乗る女は、只、真っ直ぐに俺を凝視している。

  その目を見ていると俺は、衝撃を隠せずに呆然と立ち尽くす事しか出来なかったのである......。

  後ろにいるキュアリスも多分、同じ様な感覚であるだろう......。


ーーこの国の軍帥だと......?


  すると森山葉月は、俺の戸惑いを感じ取ったかの様な態度の中で、

「何を固まっているのですか? とりあえず、お掛けになってください。」

そう俺達に、座る様促した。


ーー何故、俺と同じ日本から来た女がここにいるのだろうか......。


  もしかしたら、この森山葉月に関しても、前にキュアリスが話していた、世界の秩序を崩す、『異世界人』の一人では無いだろうか......?


ーーそう考えれば考える程に、俺は彼女を警戒するのであった。


  森山葉月は、それを表情から察したかの如く、

「私は、世界を支配しようなどと言う危険な思想は持ち合わせておりませんよ......? もしや、あなたの方は、その様な考えをお持ちなのですか?」

と、再び不敵な笑みを浮かべながら、逆に俺に向かって問いかけて来た。


ーー奴は、俺を完全に勘ぐっていたのだ。


  そこで俺は、その質問に戸惑いを感じつつも、

「そんな危険な思想は、持ち合わせていない。」

と、自分の潔白を告げた。

「では、何故それ程の力を持っているのに、旅人などとおっしゃっているのですか?」

  森山葉月は、俺が同じ日本人で、同じ『異世界人』である事に強い警戒心を持っているみたいに、強めの口調で問いかけた。

「それは、疑われたくなかったからだ......。」

  俺は、弱々しく言い訳をするかの様に、その質問に答えた。

「そんな言葉、誰が信用すると思いますか?」

  彼女が強気な態度で言葉を締め括ると、俺は何も言えなくなってしまった。


ーー俺の唯一の欠点。


  それは、人とのコミュニケーション能力だった。

  今まで、関わって来た人間の絶対数が余りにも足りない。

  俺は、まず人を疑う所から入っている。

  そんな卑屈な態度こそが、相手にまで猜疑心を生んでしまっているのだ......。

  どんなに真摯な気持ちでいても......。

  俺は、そんな自分の不甲斐なさに反省しているのだった......。


ーー俺は、世界を救いたい。


  それは、本心だ。

  支配された世の中では無く、飽くまで人々の自由のために......。


ーーしかし、伝え方がわからない。

 
  俺は、こんな誘導尋問にさえ答えられない。

  戦争に仕立てる為の......。


ーーそんな言われ方ではまるで、世界を支配しようと企む異世界人達と同じではないか......。


  だが、伝え方がわからない。


ーーもどかしい。


  そう思っている内に、情けない自分に対して無性に腹が立って来た。


ーーそして、段々と頭は混乱していく......。ーー


ーーと、その時。

「そんな訳ないだろ! 」

と言う叫び声が聞こえた。

  俺は、混乱する頭の中で、聞き覚えのある声の方へ目を向けてみた。


ーーその声の主は、キュアリスだった。


「あなたの言っている事は、疑いでしかないじゃない! なんで、こんなに悩んで、頑張っている人が、疑われなきゃいけないの? そんなのおかしいじゃない!  この人は、『世界を救いたい』と言ったの......。そんな優しい考えを持った人を、私は今まで見た事ないよ! だから、絶対にない!」

  彼女は、目を潤せて、小刻みに震えながら、俺を必死に擁護した。


ーー俺は、驚いた。


ーーキュアリスは今、俺を助けてくれているのだ。


  その余りにも真剣じみた目は、曇りが無く、一つの嘘も感じさせない。


ーー俺はその言葉で目を覚ました。


  そして、俺は顔を上げた後で森山葉月を真っ直ぐに見つめ、はっきりとした口調で告げた。

「俺は世界を救いたい。」


ーーその言葉を聞いた森山葉月は、一度固まった。


  その後で、大きく息を吸い込んで、口を開いた。


「ふう......。良かったです。世界を支配しようと企んでいる方達では無いみたいで......。もしその様な者ならば、今ここで倒さねばと思っておりました......。」

  その顔は、安堵の表情が浮かんでいた。

「私は、戦火の激しいこの世界を救いたい。あなたと同じで......。だから、危険な思想は持ち合わせていないですよ。あなたは疑っていた様ですが......。」

  軍帥はそう言うと、俺に向かってニコッと笑っていた。


ーーどうやら彼女は、俺の心の中を読み通していた様だった......。


  ならば、先程の俺の言葉が真実だとわかった筈だ......。

  そう俺が考えていると、森山葉月は、

「戦争において疑う事は、絶対条件ですからね。」

と、腕をついて笑顔で答えた。


ーー彼女は、全て分かっていたのだ。


  分かった上で、答えを求めていたのだ。

  すると、俺達が呆然としているのを横目に、彼女は立ち上がった。

「我々国王軍は、あなた達の旅を応援します。世界を救おうと思う者同士、共に頑張りましょう。」

  彼女は、そう答えると、部屋から出て行こうと歩き出した。

  その時俺は、

「待ってくれ!お前は日本人だよな?どうやって、どう言う経緯でこの世界にたどり着いた!教えて欲しいんだ!」

と、彼女に向かって必死の形相で問いかけた。

  すると軍帥は進み出していた足を止め、

「その話はまた今度ゆっくりと......。日本人同士、仲良くしましょうね。」

  そう一言告げて、部屋から出て行った。


ーーやはり彼女は日本人だった。


  俺と同じ故郷である......。

  俺は張り詰めた空気が柔らかくなっていく事を感じつつ、一つ溜息をした。

  すると、キュアリスは、

「あの人、いい人そうで良かったじゃん。雄二の気持ち、分かってくれたみたいだし!」

と、俺に向かって明るい口調で言ってきた。

  俺はそんな彼女に向かって、

「お前のおかげだよ......。」

と、微笑みながら小さく呟いた。

  キュアリスは、俺の一言が聞こえていなかった様で、

「えっ?」

と、とぼけた顔をしていた。

  その顔を見て、俺は、

「なんでもないよ!」

  そう、先程の言葉を掻き消す様にして声を荒げた。
  

ーーキュアリスのあの発言のおかげで俺は、森山葉月に本心を語る事が出来たのだから......。


  すると、俺達の顛末を後ろで見ていたグリンデルは、

「ま、まあ、何事も無くて良かったな!では、今日は街で先日のお礼にご馳走をする!街へ戻るぞ!」

 と、雰囲気が穏やかになった事を確認した後で答えた。

  それに対して俺は、

「ご厚意に感謝するよ。」

  そう答えて、街へと戻るのであった......。


ーーーーーー

  森山葉月は、部屋を出た後に側近と話をしていた。

「やはり、あの者は『異世界人』だったのですね......。」

  側近がそう言うと、

「そうですね。やはりあの男は私の睨んでいた通り、同じ故郷の者でした。」

  森山葉月はそう答えた。

  彼女は彼の言葉を思い出す......。


ーー「俺は、世界を救いたい。」ーー

  その後で、続けて、

「あの男が口にしていた言葉は、結局顔を見れぬまま姿を消してしまった、『初代聖騎士』と同じでした。」

   そう、驚いた様な表情を一瞬浮かべた後で言った。

「あの男だけは守らねば......。」

  彼女はそう呟くと、王都への帰路に就いたのであった...。

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コメント

  • ポリプロピレンs

    所々口調が変わっているのが気になって仕方がない

    1
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