天才過ぎて世間から嫌われた男が、異世界にて無双するらしい。

暗喩

第8話 朝焼けの光の中で。

ーーーーーー


ーー俺は今、夢を見ている......。


  美しい湖畔の目の前に小さな家で、幼い俺が大好きな家族に囲まれて幸せに過ごしている夢。

  そこで父や母、兄弟みんなで、他愛もない話に花を咲かしてるのだ。

  そして、みんなでテーブルを囲って食事を摂っている。

  そこには犬なんかも居たりもして、まさに、絵に描いた様な幸福がある。

  俺はそこで食事をしながら、今日学校で起きた事を話す。

  テストで満点を取った話や、体育のマラソンで一等賞を取った話などをする。
  
  すると、父は、

「良かったじゃないか! やはりお前は、自慢の息子だな! 」

と、俺を抱きしめる。

  母も、その光景を見て、静かに微笑む。
   
  弟と妹は、俺に「兄貴は、最高だ! 」など大袈裟な事を言ってはしゃいでいるのだ。


ーー俺は今、幸せだ......。


  こんなに美しい日々を過ごせて。

  そう思って、柄にも無くニコッと笑った。



ーーすると、突然場面が変わり、周りが真っ暗になって行く...。


  そして目の前には元親友がいた。

「お前といると、自分がどんどん惨めになって行く。」

  そう、無表情のまま俺に向けて告げる。

  その言葉を皮切りに、先程まで笑顔であった皆も、口を揃えて、

「お前といると、自分がどんどん惨めになって行く。」

と、俺に向けて繰り返す......。


  俺は、絶望へと突き落とされて、只、泣く事しか出来ない。


ーー「お前といると、自分がどんどん惨めになって行く......。」ーー


ーー俺は、大量の汗をかいて、勢いよく起き上がった。


  もう既に日の出に差し掛かっていて、窓の外は少しづつ明るくなっていた。


ーーどうやら、俺は一日ずっと寝てしまっていたらしい。


  その後で、ふと、先程の夢を思い出す。



ーーとても嫌な夢だった......。


  そしてまた、哀しい気持ちになる。


  キュアリスのおかげで忘れられていた苦しみが、今、呼び戻されて波の様にして押し寄せて来る。

  俺は何とか気持ちを切り変えようと、深呼吸を二、三度した。


ーーふと、横に目をやると隣のベッドには、まだ寝ている彼女がいた。


ーー曇りのない、安らかな顔で眠っている。


  その顔を見ていると、俺は微笑ましい反面で、嫉妬にも似た負の感情が湧き上がっていた。


ーー俺も、こんな顔で眠られているのかな......。


  そんな気持ちにさせられた。


  俺はふと思った事を心の奥に仕舞った後で、ベッドからソファに移動して腰掛け、只、その寝顔を見ていたのであった......。


ーー暫くすると、キュアリスは目を覚ました。


「......お、おはよう......。」

  まだ眠そうに、瞼を擦りながら体を起こし、俺に挨拶をして来た。

  俺は、その寝起きで乱れた髪やくたびれた顔を見て、少しだけ顔を赤くしながら、

「おはよう......。」

と、彼女から目を逸らして挨拶を返した。

  その後、彼女は一つ伸びをして、顔をパンッと叩いた後、真面目な様子で俺の方へ体を向けて正座をした。

  そして、キュアリスは突然かしこまってすぐに、

「昨日はごめんね。私、足を引っ張るつもりは一つも無かったんだけど......。これからは迷惑を掛けない様に頑張るから......。」

と、頭を下げて、謝罪を口にした。

  その場で下を向いて、涙目になっている彼女を見ていると、感情に真っ直ぐなその様子に俺は、羨ましさを覚えた。

  その後、俺はその羨望の眼差しを隠す様にして窓の方に視線を移して、

「気にするな。俺も気づけなくてごめんな。」

と、本心で謝罪をした。

  逸らした窓の先には、太陽が輝いていた。


ーー俺も、もう少し気持ちに真っ直ぐ生きていれば、何かが変わっていたのかな......。


  そんな風に過去を悔やむのであった......。


ーーーーーー

  先日グリンデルと約束した時間までは、まだ二時間ちょっとあったので、俺はキュアリスに街に繰り出す事を提案した。

  すると、彼女も、

「確かに、それはいい事だと思う! その代わり、絶対に昔の事を思い出しちゃダメなんだからね! 」

と、注意書きを付けて同意してくれた。

  その言葉に俺は微笑みながら、

「ああ、わかったよ......。」

と、返事をした。

  そうと決まったので、俺達は手早く支度を済ませ、街に繰り出したのである。

  もうすっかり夜の明けた街は、大いに賑わっている。

  果てしなく続く中世西洋風の建物、その中の通りには、色々な種類の商店が出店を構えていて、野菜や肉などの食品関係や、衣服、アクセサリーなども売っている。

  その一つ一つが新鮮で、俺は、昔の世界との比較の中で、驚きを隠せなかった。

「どう? この街は大きいでしょ! 私も村から、数ヶ月にいっぺん買い出しに来ていたんだ!良かったら少しの時間だけど、案内してあげるよ! 」

キュアリスが得意げに胸を張っていたので、俺はそれに同意して街を歩き出したのであった。


ーーその後は、色々と回った。


  彼女の良く行く青果店や花屋を回り、ちょっとしたカフェの様な佇まいの店で、コーヒーを啜りながら、談笑をしたりもした。

  そして、楽しい二時間はあっという間に過ぎて行ったのであった......。

「付き合ってくれてありがとな。本当に楽しかったよ。じゃあ、時間も近いし、そろそろ宿に戻るか。」

  俺がそう言うと、キュアリスは最高の笑顔で、

「うんっ!こちらこそありがとね!」

と、返事をして、俺達は宿へと戻るのであった...。


ーーこんなに楽しい時間を過ごしたのは、初めてなのではないか......?


  そんな事を考えながら......。


ーーーーーー

  宿に戻ると、もう既にグリンデルが部下二人程を連れて待っていた。

「悪いな、待たせてしまった様で......。」

  俺がそう謝罪を述べると、グリンデルは、

「いやいや、全く問題はない。我々も丁度到着したところだ!」

  そう笑いながら俺に告げた。

  俺は、その言葉に安堵した後で、

「そうだったのか。では、行こうか。」

そう号令をかけた。

  するとグリンデルは、少し部が悪そうな顔をして、俺を一度引き止めた。

「そ、そこでなのだが、お主に一人会って欲しい御人がいるのだ。」

  グリンデルは、どもりながらそう伝えた。

  その話を聞いて俺は、

「いや、全然良いよ。」

そう、快諾した。

「そ、そうか!ならば、向かうとしよう!」

  彼はそう言うと、俺達を馬の後ろに乗せ、彼等の駐屯地まで走らせたのであった。


ーーーーーー

  俺達は、グリンデル達の馬に揺られる事数分程で、目的の地である『ベリスタ王国軍ヘベレス支部』に到着すると、馬から降りた。

  キュアリスはその施設を見て、

「凄いね!この街の駐屯地は綺麗になったんだね!」

と、かなりはしゃいでいた。

  そしてグリンデルは俺達に、

「こちらだ。案内致そう。」

そう言って、先導した。


ーー何故か重苦しい空気の中で、広い施設の内部を真っ直ぐ奥の方へ進んで行くと、突き当たりのドアの前でグリンデルは止まった。


  そして、

「こちらの部屋だ。」

そう言って、ドアを開けたのだった。


ーー静かにドアが開いて行く。


ーーそして、その先には、黒いロングヘアーの茶色い目をして、軍服を纏った美しい女性がテーブルに両肘をついて待っていた。


  彼女は、精悍な顔つきをして、俺を見ている。


ーーとてつもない雰囲気を醸し出しつつ......。


  すると、その女は口を開いた。

「此度の『スケアリー・ドラゴン』の件は、ありがとうございました。佐山雄二さん。」


ーーどうやら、俺の名前も伝えられている様だった。


  そこで、俺はその女に、

「とんでもないよ。それよりも、俺に用事って何なんだ?」

と、素朴な疑問をぶつけた。

  すると、彼女は、

「たまたま用があってこちらに来た時、あなたの功績を耳にしたので、一つお礼をと思いまして......。」

そう答えた。

ーーそして、その後続ける様にして、

「あ、申し遅れました。私は、ベリスタ王国、国王軍軍帥を務めさせて頂いている、『森山葉月』と申します。」

と、名乗った後、不敵な笑みを浮かべた。


ーーどうやらその女は、俺と同じ日本から転移して来た、異世界人の様だったのだ......。ーー

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コメント

  • 真砂土

    やっぱり少しぐらい失敗しないと共感を持てないよね…でも俺は天才でも馬鹿でも紙一重だからと解釈して仲良くすると思うww

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