天才過ぎて世間から嫌われた男が、異世界にて無双するらしい。

暗喩

第7話 街への進路。


ーーーーーー

  俺達はすっかりと先程の騒めきが嘘の様に静かになった洞窟の前にいた。

  ドラゴンから救ったお礼にと言う屈強な兵士のご厚意を受け入れ、これから彼らの馬に乗って街を目指す......。

  だが、兵士達の馬に乗る直前、俺はこれから一睡も出来なくなる事を懸念していた。

  俺に関しては別に寝なくても、一日くらいならば持つと思うのだが、キュアリスに関しては、どの様な状態なのか、わからない。

  一応、ドラゴンが居なくなった山は、夜であっても比較的安全という話は聞いてはいたが、このまま山を越えて良いものなのかを悩んでいたのだ。

  そこで俺が、キュアリスに向けて、

「これから朝まで一睡も出来ない事になるが、大丈夫なのか?」

と、心配そうな表情で質問したのだが、キュアリスはそれに対して、

「私は大丈夫だよ。もっと疲れているのは、雄二の方でしょ。私は全く問題ないから、雄二が決めて良いんだよ。」

  そう言って微笑みかけてくれた。

  正直言うと、その時も、キュアリスの配慮に泣きそうになったのだが、何とか我慢する事で難を逃れたのであった。


ーー俺は最近、涙脆い......。


ーー そして、彼女の一言で、俺達は山を越える事を決意した。


  俺達の決定を受けて、先程お礼を述べていた兵士は、

「了解した。それでは、今から山を越えるのであるな。ならば先に、名前を名乗らせて貰おう。我の名は、『グレル・グリンデル』と申す。ベリスタ王国にて、ヘベレス地区軍士長をやっている者だ。今回の山越え、責任を持って承ろう。」

と、誇らし気に話していた。

  俺も、グリンデルの自己紹介を聞いた後で、

「俺の名前は、佐山雄二。ここにいるキュアリスと共に、旅をしている者だ。護送、よろしく頼んだよ。」

  そう答えて、握手をしたのだった。

「だが......。この様な有様では、迂回せねばならない。この規模だと、例え馬を使ったとしても、二時間程、到着は伸びしてしまいそうだ。それに、我々の兵士で水属性の者が全員で消火活動をしていては、いつまで経っても埒が開かんからな......。」

  グリンデルはそう言って困った顔をしながら、目の前にある果てなく続く業火を眺めていた。

  俺は少しだけ躊躇したが、自分のしてしまった事に落とし前をつけねばと考えて、グリンデルに向かい口を開いた。

「それなら、この炎を消せば、そのまま行けるという事なの?」


ーー正直な所、ここで悪目立ちしてしまうのはあまり良くない選択なのは分かっていたのだが......。


「そんな事が可能なのか......?」

  俺の話を聞くと、グリンデルは驚愕しながらも
その話を受け入れてくれた。


ーーそして、俺は水のイメージをそのまま具現化する事で、大量の水を何度も放った。


  すると、業火はみるみる内に消えて行き、少しだけまだ煙がかっている物の、道として通るには余裕が生まれた。


  すっかり消火が済み、俺はため息をついて安堵した後で、周りの兵士を見ると、全員が呆然としているのが分かった。


ーーたった一人を除いては......。


「凄い凄い!!水属性まで操るなんて......。やっぱ雄二は最高だよ!!!」

  キュアリスは、俺が水の『異能』までも操れる様になっていたのが余程嬉しかったみたいで、兵士に乗せてもらっている馬の上で、はしゃいでいたのだった。


ーーだが依然、周りの兵士達は皆、沈黙していた。


ーー俺は、批判の目で見られる事には慣れている。


  それも、これだけ多くの兵士達に見られては、前の俺ならば堪える物があったであろう。


ーーしかし、今は俺の隣で喜んでいるキュアリスがいる限り、そんな事は我慢できた。


ーーたった一人でも理解してくれる人がいるのならば......。


  その有様を遺憾無く見せつけられたグリンデルは、驚きながらも、

「まさか、ここまでの業火を一瞬で消し去ってしまうとは......。それに先程の戦闘......。お主は何者かわからぬが、物凄い力の持ち主であるな!」

と、俺に肩を組んで、称えてくれた。


ーー内心は嬉しかった。


  しかし、その表情を隠したまま、俺達は焦土の中を進むのであった......。


ーーーーーー

  ドラゴンの居なくなった山道は、よく鍛えられた馬のお陰もあったのか、三時間程で越える事が出来た。

  それから明け方の大草原を三十分程走ると、グリンデルを先頭にした馬達がピタリと止まった。

「辿り着いたぞ!!」

  グリンデルの叫び声を聞いて顔を上げると、目の前にそびえ立っていたのは俺の身長の十倍以上はあるであろう、城壁だった......。

ーー圧倒的存在感を示す大きな門......。

  
  形容するならば、西洋の名のある街とでも形容べきその圧倒的な佇まいに俺は驚きを隠せなかった......。


  そんな唖然としている俺に向かってグリンデルは、

「それでは中に入るぞ!ようこそ!ヘベレスシティへ!!」

と、俺達を歓迎してくれた。

  そして、大きな門の横にある小さな扉の中に入ると、果てしなく奥まで続く、街があった......。

「ここまで大きな街だったとは......。キュアリス、感動したよ!」

  俺はそう言ってキュアリスに目を向けた。


ーーしかし、彼女は、

「そうだね......。ようやく辿り着いたんだ......。」

と、弱々しい声で項垂れていた。

  キュアリスはクタクタになっていて、今にも倒れそうな顔をしていた。


ーーこの一日で、余程疲れたのであろう......。


  やはり、無理をさせてしまったのかもしれないと、俺は反省をした......。

  
  すると、そんな俺達を見たグリンデルは、

「どうやら、お疲れのご様子だな......。よし、今日の所は、一度ゆっくり休むとしよう!我々の方で宿は手配する!明日は今回の礼も込めて、一つもてなしをさせて頂きたい。その時に話したい事もあるのでな!昼には迎えに行くので、安心して眠ってくれ!」

そう配慮してくれた。


  俺は疲れているキュアリスを横目に、その提案を有り難く受け入れる事にした。


「ごめんなさい......。私、少し疲れちゃったみたい......。」

  そう呟いたキュアリスに向けて、俺は一つ頷いた。


ーー心の中が、少しだけ複雑になった状態で......。



ーー無理させちゃってごめんな......。ーー


  俺は、そんな事を思いながら、宿まで案内すると言ったグリンデルの後をついて行ったのだ......。

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コメント

  • ポムニー

    自分には、気になる所が多すぎて読み続けることが難しそうです。
    文書うんぬんとかじゃなく、キャラ設定にブレがあるのが気になってしまいます。
    ストーリーは面白そうで気になるのですが、頑張ってください!

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  • 真砂土

    あっ!スーモ!

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