天才過ぎて世間から嫌われた男が、異世界にて無双するらしい。

暗喩

第3話 新たな一歩を踏み出した。


ーーーーーー

  村へと戻って来た俺は、再びキュアリスの家の中にいた。

  キュアリスによりリビングへ通されると、テーブルの椅子に腰を掛けた。

  俺は、何を話していいのかもわからず、ただ、考え込んでいた。


ーー昨日までの生活。


  俺は日本にいて、学校で授業を受けて、帰宅する為に電車に乗った筈だ。


ーーそれなのに、何故、この様な場所に来てしまったのだろう......。


  全く答えが導き出せないまま、俺は、黙ってしまっていたのだ。


ーーすると、考え込んでいる様子に気づいたのかキュアリスは、俺の目の前にパンと、ホワイトシチュと思われる食べ物を置いて、ニコッと笑いながら話しかけて来た。

「まあ、話すのはゆっくりでいいから。そんな事よりお腹が空いているでしょう。大した食事ではないけど、召し上がってくれると嬉しいな。」

  普段は誰とも関わる事なく、一人で淡々と食事を摂っていた俺にとって、その言葉は、物凄く衝撃的だった。

  それと同時に、やはり、この子の考えている事がさっぱりわからなくなっていった。

  人に対して猜疑心しか持たずに育って来た俺は、この子の行動に裏があるとしか考えられない。

  だから俺は、

「何故、優しくしてくれるのかはわからない。だけど、もし裏事情があると言うのなら、教えてくれないか?」

と、意を決して質問した。

  キュアリスは、俺の疑いしかない濁り切った目を見て、全く信用していない事を理解した様で、その理由を正直に答えた。

「それは昔に、あなたと同じ様な雰囲気の人に会った事があるから。その人は、ある戦いの末に死んでしまったけど......。あなたも、もしかしたらその人みたいに沢山傷ついて、この世界にやって来たんじゃないかなって思ってね。そしたら、居ても立っても居られなくなっちゃって......。」

  話しを終えた後、キュアリスは悲しい過去を思い出した様で、遠目に哀愁の漂う顔になっていった。


ーーそれを聞いた時に思った。


  この子は、裏表のない、優しい子なんだと。

  俺は今まで、そんな人間に会った事がない。

  少しでも疑ってしまった事を後悔した......。

  だが、今の話を聞いていると、どうやら前に、この世界に来てしまった人がいると言うのは、事実としてあるらしい。

  そこで、俺は口を開いた。

「そうだったのか......。野暮な質問をして、本当に申し訳なかった。俺も、その違う世界からやって来た人と、同じだよ。気がついたらこの世界に来ていたんだ。理由はまだ、わからないけど......。」

  俺の言葉を一言一句聞き終えたキュアリスは、

「やはりそうだったんだね......。それならば、あの人と同じ道を辿る事になってしまう可能性があるかもしれない......。私は絶対にそんな事はさせないから!」

と、強気になって言った。

  その後彼女から聞いた話によると、この世界には、『異能』と呼ばれる能力があるらしい。

  詳しく話すと、この世界には一人一人に、火や水、土や草などの属性があって、その能力を操る事が、普通であるらしい。

  そして十年程前から......。

  異世界から人間がやってくる事が増えていった。

  異世界から来た人間は、元々この世界にいる人間よりもその能力が卓越しているらしく、今となっては世界を牛耳っている国王達の大半はその者達になってしまった。

  そして、異世界人達は、戦争をする事で、支配領域を拡大させ、世界の情勢は目も当てられなくなっていると言う事なのだ。

  昔に、キュアリスが会った男は、同じく異世界人であったが、世界を救う為に、国王軍との戦いの末に、最期には死んでしまった様だ......。

  話を聞き終えた俺は、思った。


ーーつまり、俺も例外なく異世界へ転移して来たのであろう。


ーーならば、この世界の為に少しでも生きてやろうではないか。


ーーこの世界を救えるのなら、今までのクソみたいな人生の中で、生きてきた証になるのかもしれない。


ーーもし仮に、こんな俺に少しでもできる事があるならば......。


  キュアリスの様な優しい人のいる世界を壊す訳にはいかない......。


  そこで俺は、

「今までは、不遇すぎる時間を過ごしてきた。思い出すのも、嫌になる程に......。だからこそ、俺は世界を救いたい。俺にどんな能力があるのかもわからないが......。」

と、宣言をした。

  キュアリスに何度も説得されたが、俺はその言葉に耳を傾ける事は無かった。


ーーすると、彼女は諦めた様で、

「そこまで覚悟を決められてしまっては、何も反論出来ないよ......。でも、私はちゃんと忠告したんだからね!」

と、俺の決意を受け入れてくれた。

  その後で、

「長々と話しちゃったから、ご飯が冷めちゃったね!温め直すから待ってて!」

  そう言って、シチュに向かって、目の前で手から炎を出していた。

  俺は、正直驚いたが、黙ってそれを見ていた。


ーーキュアリスと食事をしている時に、俺は、人の暖かさを感じて、また泣きそうになった......。


  その夜は、キュアリスの家で一晩眠らせて貰った。


ーーーーーー

  翌朝早朝に起きた俺は、昨晩の内にキュアリスから少しばかり分けて貰った食材を学生鞄にしまっていた。

  そして、借りていた寝間着を綺麗に畳んで、制服へと着替え、旅への一歩を踏み出す準備をしていた。

  正直な所、能力すらも試していない行き当たりバッタリの状態ではあったが、俺の本能がそれを止めてくれる事は無かった。

  全ての準備を済ませた俺は、昨日のお礼をしようと、キュアリスの部屋を訪ねてノックをした。


ーーしかし、返事は来ない。


ーーきっと、まだ寝ているのであろう。


  そう思って、起こす事をやめ、静かに旅立とうと玄関のドアを開いた。


ーーするとそこには、大きな荷物を持っているキュアリスが立っていた。


「準備が遅すぎるよ!さっきからずっと待っていたんだから!」

  彼女は、顔を真っ赤にしてよくわからない事を言っているが、その荷物を見て、俺について行こうとしている事が、すぐにわかった。

「何をしているんだ?俺は、一人で旅に出るはずだったんだぞ!」

そう焦りながら言うと、

「昨日の夜に色々と考えたんだけど、やっぱり私は、あなたを見捨てられない......。だから、ついて行く事にしたの!」

と、最高の笑顔で言っていた。


  その後、何度も説得したが、結局聞く耳を持ってくれず、俺達は二人で旅立つ事になったのだった。

「これから色々と大変かもしれないけど、宜しくね!雄二!!」

彼女は、悪意のない澄んだ顔でそう言った。


ーーキュアリスは、俺を雄二と呼んだ。


  人に下の名前で呼ばれるのは初めてだったので、少し感動してしまった。

  その後で、

「お、おう。これからは世界を救う為に、お互い頑張ろうな。」

そう、まだ動揺している状態で、俺は意気込んで見せた。


ーー何にせよ、ここから、俺達の冒険は始まったのだった......。

「天才過ぎて世間から嫌われた男が、異世界にて無双するらしい。」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

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コメント

  • ポムニー

    人を基本的に猜疑してしまうのに、警戒心がなさすぎるような。
    心の機微に疎いのに猜疑的のもちょっと気になる。
    度が過ぎる才能がある事を天才にしてるなら、コミュ力なくても思考能力はあってもいいんじゃないかな?
    あと、なぜ急に異世界救うになるか心理描写もっとほしいです!
    キュアリスに恩を感じて返したいとかではなく、なぜいきなり異世界救うぜ!になったかを。
    気にしすぎかなw

    0
  • ノベルバユーザー89126

    幼なじみにすら下の名前で呼んでもらえんのかい

    0
  • ノベルバユーザー243350

    あらゆる面で才能はあるけど、コミュニケーションの才能は無いみたいですね...

    1
  • トロンボーン吹きの少女

    キュリアス、、、。

    0
  • ノベルバユーザー208197

    キュリアスついてくんなよ…

    8
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