幼女と遊ぼうとしたら異世界に飛ばされた件について
113話目 狩りの時間だ
とまあ、あたしはリョウの後ろを付いていきながら何か失敗でもしやしないかと思っていたんだが、予想とは裏腹にゴブリンの討伐自体は順調に進みついには塒を襲撃することになった。しかし森の中を進んでいた時にも思っていたが、ゴブリンの数があまりにも多すぎる。
こんなに多けりゃ塒が不便だ、って点だけは気付いたようで、リョウもその事をあたしに聞いてきたんで『他の場所から移ってきた』って事だけ話したが……、こいつらはおかしい。村を襲うつもりでここに集まっていたとしても、それならもっと広い場所で寝転がってりゃいいだけだ。なんでわざわざ広い洞窟を探してそこにぎゅうぎゅう詰めになる? 外の木や草を全部引っこ抜いた方が簡単だ。
村を秘密裏に襲う為に身を隠した? ゴブリンにそんな知恵がある訳がない。そうだ、こいつらは襲う為に隠れていたんじゃない、隠れるために隠れていたんだ。ならそいつは誰だ? こいつらは何から隠れていたんだ?
予想外にもシャルが魔法以外で戦える事もあってあたしの意識は目の前のゴブリンの事よりも別の事に逸れていった。事実、あんだけの量のゴブリンを倒したっていうのに姫さんとシャルに疲れの色は全く見えていない。リョウによればもうすぐ残りも倒しきれるということだし、護衛としてはむしろ未知の魔物に対して気を配る方が先決だ。
これだけの数のゴブリンがいて、それがまとめて逃げ出すような魔物の存在はハッキリ言ってあたしからしても脅威だ。だから索敵能力で言えばあたしよりも圧倒的に上なリョウに、確かな証拠が無くともあたしの推測を教えるべきか迷っていると、不意にリョウがその目を見開き動きを止めた。
まさか!
「リョウ! どうした! 何があった!」
あたしにはまだ何があったのか分かんねえが、リョウの様子からして『何か』を見つけた可能性が高え! だというのにリョウはあたしの質問に答えずに呆然としたままピクリとも動かねえ!
「師匠?!」
「どうした?! 何があったのだ?!」
あたしやリョウの様子がただ事じゃねえことを察した二人がこっちに聞いてくるが、もう詳しく説明なんてしてる場合じゃねえ。
「二人ともあたしの近くに戻れ! 逃げるゴブリンは放っておけ! 後でリョウに探させりゃいい!」
何が相手なのか、ここに来るのか、それとも見つけただけなのかは分からねえ。だが二人が離れた場所にいたら咄嗟に助けられねえかもしれねえ。二人に指示を出したあたしはもう一度リョウの方を見るが、肝心のこいつは相変わらず馬鹿みてえに一点を見つめているばかりで……!
「ッ!」
その事に気付いたあたしはその方向を見る。あたしには気配なんてもんは読めねえが、これでも目には自信がある方だ。ここが分岐点だ。ここで見つけられるか見つけられないかがあたしらの命運を左右する。あたしはそこに何かが居ると決めつけ、必死に目を凝らす。
「あそこ! あれを見て!」
そしてそれが何であるかをあたしが分かるのとほとんど同時にシャルがそう叫ぶ。ああ、なんてこったい。最悪だ。
「キラーウルフ……!」
別名、森の死神。何故か魔の森には居ないらしいが、危険と言われる森には大体生息していやがる忌々しい魔物だ。縄張り意識がクソみたいに強いせいで、ヤツの縄張りに一歩でも足を踏み入れれば大抵の冒険者はその圧倒的な暴力に蹂躙されてあっという間に腹ん中に入れられちまう。
そんな魔物がこっち目がけて猛然と走ってきやがっている。まだ距離はあるが、ハッキリとわかるくらいにどんどんとその姿は大きくなっていってる。そして何よりも厄介なのがそれだけつええくせに普通の狼みてえに群れやがることだ。今すぐにでもここから逃げなけりゃ相当に不味い!
「二人ともリョウを引っ張って逃げろ! あたしが囮に――」
三人を守りながらキラーウルフと戦えるなんて考える程あたしは自惚れちゃあいねえ。さっさと逃げてもらえば後ろを気にせず戦える分、あたしも生き残れる可能性が高まる。だからあたしはそう二人に命令しようとして、あたしは言葉に詰まった。
こんなに多けりゃ塒が不便だ、って点だけは気付いたようで、リョウもその事をあたしに聞いてきたんで『他の場所から移ってきた』って事だけ話したが……、こいつらはおかしい。村を襲うつもりでここに集まっていたとしても、それならもっと広い場所で寝転がってりゃいいだけだ。なんでわざわざ広い洞窟を探してそこにぎゅうぎゅう詰めになる? 外の木や草を全部引っこ抜いた方が簡単だ。
村を秘密裏に襲う為に身を隠した? ゴブリンにそんな知恵がある訳がない。そうだ、こいつらは襲う為に隠れていたんじゃない、隠れるために隠れていたんだ。ならそいつは誰だ? こいつらは何から隠れていたんだ?
予想外にもシャルが魔法以外で戦える事もあってあたしの意識は目の前のゴブリンの事よりも別の事に逸れていった。事実、あんだけの量のゴブリンを倒したっていうのに姫さんとシャルに疲れの色は全く見えていない。リョウによればもうすぐ残りも倒しきれるということだし、護衛としてはむしろ未知の魔物に対して気を配る方が先決だ。
これだけの数のゴブリンがいて、それがまとめて逃げ出すような魔物の存在はハッキリ言ってあたしからしても脅威だ。だから索敵能力で言えばあたしよりも圧倒的に上なリョウに、確かな証拠が無くともあたしの推測を教えるべきか迷っていると、不意にリョウがその目を見開き動きを止めた。
まさか!
「リョウ! どうした! 何があった!」
あたしにはまだ何があったのか分かんねえが、リョウの様子からして『何か』を見つけた可能性が高え! だというのにリョウはあたしの質問に答えずに呆然としたままピクリとも動かねえ!
「師匠?!」
「どうした?! 何があったのだ?!」
あたしやリョウの様子がただ事じゃねえことを察した二人がこっちに聞いてくるが、もう詳しく説明なんてしてる場合じゃねえ。
「二人ともあたしの近くに戻れ! 逃げるゴブリンは放っておけ! 後でリョウに探させりゃいい!」
何が相手なのか、ここに来るのか、それとも見つけただけなのかは分からねえ。だが二人が離れた場所にいたら咄嗟に助けられねえかもしれねえ。二人に指示を出したあたしはもう一度リョウの方を見るが、肝心のこいつは相変わらず馬鹿みてえに一点を見つめているばかりで……!
「ッ!」
その事に気付いたあたしはその方向を見る。あたしには気配なんてもんは読めねえが、これでも目には自信がある方だ。ここが分岐点だ。ここで見つけられるか見つけられないかがあたしらの命運を左右する。あたしはそこに何かが居ると決めつけ、必死に目を凝らす。
「あそこ! あれを見て!」
そしてそれが何であるかをあたしが分かるのとほとんど同時にシャルがそう叫ぶ。ああ、なんてこったい。最悪だ。
「キラーウルフ……!」
別名、森の死神。何故か魔の森には居ないらしいが、危険と言われる森には大体生息していやがる忌々しい魔物だ。縄張り意識がクソみたいに強いせいで、ヤツの縄張りに一歩でも足を踏み入れれば大抵の冒険者はその圧倒的な暴力に蹂躙されてあっという間に腹ん中に入れられちまう。
そんな魔物がこっち目がけて猛然と走ってきやがっている。まだ距離はあるが、ハッキリとわかるくらいにどんどんとその姿は大きくなっていってる。そして何よりも厄介なのがそれだけつええくせに普通の狼みてえに群れやがることだ。今すぐにでもここから逃げなけりゃ相当に不味い!
「二人ともリョウを引っ張って逃げろ! あたしが囮に――」
三人を守りながらキラーウルフと戦えるなんて考える程あたしは自惚れちゃあいねえ。さっさと逃げてもらえば後ろを気にせず戦える分、あたしも生き残れる可能性が高まる。だからあたしはそう二人に命令しようとして、あたしは言葉に詰まった。
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