幼女と遊ぼうとしたら異世界に飛ばされた件について
98話目 姫(大嘘)
「リーディア様、後ろの方々は?」
「私の連れだ。気にしないでくれ」
門番と思わしき兵士に問われたリーディアは気軽にそう答える。現在俺とシャルには認識を阻害する魔法がかけられているため、俺やシャルの顔を見てもどうにも印象に残らないというか、うっすらとした認識しかできないようになっている。
そのため兵士たち不思議そうにして俺たちの顔を横目に見ているが、俺やシャルが俺やシャルであるとバレることはないだろう。もしもそのことに気付けば彼もこうした態度ではなく怯えて震えているだろうし、少なくとも今は彼が気付いた様子はない。
彼がこうして不思議そうな顔をしているのも、俺達がリーディアに連れられてこの街に来ているという情報は兵士にも伝わっているからこそだろう。何故リーディアが俺達以外の人物をわざわざ城に連れてきているのか、俺達を放置して案内をしている俺達は一体どのような人物なのか。
「それでは城の中に入らせてもらうぞ」
「畏まりました。門を開けさせますので少々お待ちください」
そういった疑問が胸中に渦巻いてるだろうに、職務や立場を優先して兵士は開門のための作業を行ってくれた。俺達がわざわざこの城に来なければいらぬ事で頭を悩ませる必要も無かったであろう彼に対して申し訳なく思った俺は創造魔法であるものを作り出して彼に近づく。
「あのう、これ、つまらないものですが……」
「ああ、これはどうも」
定番の文句を言いつつ日本の銘菓を手渡しする。ただ単にドラ助に貪り食われるよりもこういった場面でこそ使うべきであろう。箱についているのは中身の見える透明な蓋であるため、その中身がどういった物であるかもわかりやすい。後で仲間内で楽しんでもらえればありがたい。
やがて門は開き、リーディアは俺達を先導すべく真っ先に城の中へと入っていったため、俺達も彼女に倣って兵士に見送られつつ城の中へと入る。
さて、俺からお菓子を受け取った彼は怪訝な顔をしつつも俺からの贈り物をしげしげと眺め、そしてぎょっとした様子で目を見開いた。はて、そんなに変な物を送ったつもりは無いのだがと思ったが、よくよく考えればこの世界ではそもそも透明な蓋という物そのものが大変貴重な品であり、こんなに気軽にポンと渡してよいものではない。
間違っても『つまらないもの』なんかではないそれをどうしたらよいか判断しかねてオロオロとしている彼を目の端で捉えていたのだが……、なんかもうやっちまった感が酷いのですまないが放置させてもらうことにした。悩みの種を増やしてしまってすまん。また増やすことになりかねないので謝罪の言葉だけしか渡さないが許してくれ。
「ここが私の部屋だ」
当然ながら城の中では大勢の人達が働いており、そういった人達にすれ違う度に親しげに挨拶されたり、リーディアに声をかけられて喜んだりと彼女の人望の厚さが窺えた。『自分まで魔法をかけられては城の中を案内するのに不便だから』という彼女の意見を受け入れたので俺とシャルだけが魔法を使用しているのだが、彼女のこうした一面を見ることができたのは僥倖だったというべきか。
城の中と言えど見るべき場所はそう多くもないようで、訓練所や庭園などの数ヵ所を回るとすぐに案内する場所が無くなってしまった。もしも彼女が昔からこの城に住んでいて庭園の手入れ等をしていれば『このお花畑は私が育てたんですの、ウフフフ』『なんだってそりゃあすごいじゃないか、ワハハハ』とでもなったのだろうが、庭園についての説明が『ここが庭だ!』の一言で終わってしまえば俺も『そうか!』と返すことしかできない。
クーデターを起こし、その後すぐに俺達の家に住むことになったので城の中の事を詳しく知らなくても無理は無いだろう。まあ練兵所の説明の時は兵士のしている訓練の内容から置いてある器具についてまで詳細に語ったのが彼女らしいが……。
そんなこんなで大体の場所を見て回り、『謁見の間はあちらなのだが――』と言ってそこに向かおうとする彼女を止めて丁重にお断りさせてもらい、『そういえばリーディアのお部屋ってどこにあるの?』というシャルの一言が発端となってここまで来たというわけだ。
いやね、謁見の間に行くとかエンカウント必至ですやん。エンカウントしないために魔法を使っている面もあるのに、何故わざわざ自分からエンカウントしに行かなければならないのか。
そういや娘に近いシャル以外の女性の部屋に入るのは初めてなのか……。
普通なら乙女の部屋の匂いにドキがムネムネするのと舞い上がったり、部屋の小物一つにドギマギしたりするのかもしれないが、そこはリーディアクオリティ。彼女が勢いよく自室の扉を開けたので何の風情も無く部屋に入ることになる。部屋に置いてあったのは前々からここに置いてあったのであろう豪華なベッド、そして彼女の私物であろう武具やその手入れのための道具に丈夫そうな麻袋だけ。
やっぱりね!
「私の連れだ。気にしないでくれ」
門番と思わしき兵士に問われたリーディアは気軽にそう答える。現在俺とシャルには認識を阻害する魔法がかけられているため、俺やシャルの顔を見てもどうにも印象に残らないというか、うっすらとした認識しかできないようになっている。
そのため兵士たち不思議そうにして俺たちの顔を横目に見ているが、俺やシャルが俺やシャルであるとバレることはないだろう。もしもそのことに気付けば彼もこうした態度ではなく怯えて震えているだろうし、少なくとも今は彼が気付いた様子はない。
彼がこうして不思議そうな顔をしているのも、俺達がリーディアに連れられてこの街に来ているという情報は兵士にも伝わっているからこそだろう。何故リーディアが俺達以外の人物をわざわざ城に連れてきているのか、俺達を放置して案内をしている俺達は一体どのような人物なのか。
「それでは城の中に入らせてもらうぞ」
「畏まりました。門を開けさせますので少々お待ちください」
そういった疑問が胸中に渦巻いてるだろうに、職務や立場を優先して兵士は開門のための作業を行ってくれた。俺達がわざわざこの城に来なければいらぬ事で頭を悩ませる必要も無かったであろう彼に対して申し訳なく思った俺は創造魔法であるものを作り出して彼に近づく。
「あのう、これ、つまらないものですが……」
「ああ、これはどうも」
定番の文句を言いつつ日本の銘菓を手渡しする。ただ単にドラ助に貪り食われるよりもこういった場面でこそ使うべきであろう。箱についているのは中身の見える透明な蓋であるため、その中身がどういった物であるかもわかりやすい。後で仲間内で楽しんでもらえればありがたい。
やがて門は開き、リーディアは俺達を先導すべく真っ先に城の中へと入っていったため、俺達も彼女に倣って兵士に見送られつつ城の中へと入る。
さて、俺からお菓子を受け取った彼は怪訝な顔をしつつも俺からの贈り物をしげしげと眺め、そしてぎょっとした様子で目を見開いた。はて、そんなに変な物を送ったつもりは無いのだがと思ったが、よくよく考えればこの世界ではそもそも透明な蓋という物そのものが大変貴重な品であり、こんなに気軽にポンと渡してよいものではない。
間違っても『つまらないもの』なんかではないそれをどうしたらよいか判断しかねてオロオロとしている彼を目の端で捉えていたのだが……、なんかもうやっちまった感が酷いのですまないが放置させてもらうことにした。悩みの種を増やしてしまってすまん。また増やすことになりかねないので謝罪の言葉だけしか渡さないが許してくれ。
「ここが私の部屋だ」
当然ながら城の中では大勢の人達が働いており、そういった人達にすれ違う度に親しげに挨拶されたり、リーディアに声をかけられて喜んだりと彼女の人望の厚さが窺えた。『自分まで魔法をかけられては城の中を案内するのに不便だから』という彼女の意見を受け入れたので俺とシャルだけが魔法を使用しているのだが、彼女のこうした一面を見ることができたのは僥倖だったというべきか。
城の中と言えど見るべき場所はそう多くもないようで、訓練所や庭園などの数ヵ所を回るとすぐに案内する場所が無くなってしまった。もしも彼女が昔からこの城に住んでいて庭園の手入れ等をしていれば『このお花畑は私が育てたんですの、ウフフフ』『なんだってそりゃあすごいじゃないか、ワハハハ』とでもなったのだろうが、庭園についての説明が『ここが庭だ!』の一言で終わってしまえば俺も『そうか!』と返すことしかできない。
クーデターを起こし、その後すぐに俺達の家に住むことになったので城の中の事を詳しく知らなくても無理は無いだろう。まあ練兵所の説明の時は兵士のしている訓練の内容から置いてある器具についてまで詳細に語ったのが彼女らしいが……。
そんなこんなで大体の場所を見て回り、『謁見の間はあちらなのだが――』と言ってそこに向かおうとする彼女を止めて丁重にお断りさせてもらい、『そういえばリーディアのお部屋ってどこにあるの?』というシャルの一言が発端となってここまで来たというわけだ。
いやね、謁見の間に行くとかエンカウント必至ですやん。エンカウントしないために魔法を使っている面もあるのに、何故わざわざ自分からエンカウントしに行かなければならないのか。
そういや娘に近いシャル以外の女性の部屋に入るのは初めてなのか……。
普通なら乙女の部屋の匂いにドキがムネムネするのと舞い上がったり、部屋の小物一つにドギマギしたりするのかもしれないが、そこはリーディアクオリティ。彼女が勢いよく自室の扉を開けたので何の風情も無く部屋に入ることになる。部屋に置いてあったのは前々からここに置いてあったのであろう豪華なベッド、そして彼女の私物であろう武具やその手入れのための道具に丈夫そうな麻袋だけ。
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