幼女と遊ぼうとしたら異世界に飛ばされた件について
75話目 帝国の誠意()
主に俺が暴走したこともあり、帝国による王都の制圧は迅速に完了してしまった。また、本国に残っていた帝国軍も帝国軍でキラーエイプが取り逃した王国軍の侵略部隊を倒して回ったそうだ。
「君があの時指揮してたの? 何か頼むかもしれないからその時はよろしくね。あ、俺? あのでかいのの操縦者」
そして俺とシャルはすることが無く暇であったので、二人で森に帰る前に俺のロボットに対処していた指揮官に挨拶をした。最初は『誰だこいつ』って顔をしていたのに、俺がロボットを動かしていたと知ると顔を真っ青にして最敬礼をしながら返事をくれた。当たり前と言えば当たり前だが、ものすごいビビられて若干へこんでしまう。
「仕方ないよ師匠。私だってあんなのが迫って来たら怖くなっちゃうもん」
家に帰ってため息を吐いていた俺にシャルはそう慰めの言葉をかける。そうかー、シャルでも怖いかー、ならしょうがないなー。まあ多分シャルの『怖い』と彼の『怖い』はどうしようもない程の差がありそうだが。
王都に残してきた将軍に『何かあったらまた森に来るように』と伝えておいたので、後始末は全て放り投げてシャルといつものように過ごして帝国からの連絡を待つこと数日、妙に覚えのある気配が森にやってきたのを感じた。
「それで、なんでまた皇帝がここに来るんだよ」
「くはははは。そう言うな。今回の最大の功労者に俺が会わなきゃ失礼だろ」
いや、その理屈はおかしい。ボロスの様子からして別に火急の用事があるわけでも無いだろう。というかあったとしても部下を派遣する方が普通だろうし、王国を平らげるならば絶対にこいつは多忙なはずなのだ。
「まさかお前、サボる口実にしたんじゃないか?」
「ふん、そんなはずは無かろう」
俺の問いにボロスは自信満々に答え、ともすれば本当にそう思えてしまうが絶対違う。俺の勘が違うと告げている。さりげなく後ろにいた護衛の騎士が小さくため息を吐いていたし、最早確定だ。
「それよりもだ、今回ここに来たのは帝国の誠意をお前に見せるためだ」
「ああその話か。だがこんな忙しい時じゃなくて事態が落ち着いてからでも良かったんじゃないか?」
「それだといつになるかわからんからな。それに出来る限り早い内に済ませるのも誠意の証と言うものだろう?」
ふむ、もっともな話だ。とすると皇帝自らがここに来たのも誠意を見せるため、ということか? いや、やっぱりそれを出汁にしてサボってるだけだろ。まあそれでも話を遮ってまで言うことでもないため続きを促す。
「それで、その誠意とやらは何なんだ?」
「それはだな――」
ボロスはそう言うと視線を背後にやる。一体何だと思い俺もそっちの方を見ると甲冑姿の人物がこっちに歩み寄ってきた。その人物は兜を付けていないのでその整った顔や、光に照らされた綺麗な銀髪が良く映えている。こいつに何か荷物でも持たせているのだろうか。
「お初目にかかる。ボロスの娘リーディアだ。これからよろしくお願いする」
「はあ、よろしく、って、え? 娘? ボロスの?」
シャルが美しいと可愛いを足した美人とすれば、彼女は美しいと凛々しいを足した感じの美人である。この人が野性味たっぷりの『ガハハハ』という笑いが似合いそうな皇帝の娘とか、何それ全然似てないんですけどー。超ウケるんですけどー……、って皇帝の娘ってことはこの人姫じゃね? というかこれからよろしくってどういう意味だよ。
意味が分からず混乱する俺とは対照的に、横にいるシャルは至って落ち着いた様子であるが顔つきが段々と険しくなっていく。
「そういうわけだ。こいつのことは煮るなり焼くなり……、まあ殺すのは勘弁してやって欲しいが好きにしてくれや」
え、どういうこと、つまりあれか? 帝国の誠意として皇帝の娘を俺に預けると?
「お前それで謝罪になると思ってるの?」
こちとら現在シャルが非常に繊細なことになってるのよ? そこにどうしてこんな爆弾を投下しようとしているのか、これがわからない。
「む? 俺が言うのも何だがリーディアは帝国一の美人だぞ? それにこれはお前の大切な女を危険に晒したことへの誠意だ。ならば俺の大切な娘を預けるのが筋というものだろう」
やばい、予想してなかった事態に直面したことで段々頭が茹ってきたぞ。いかん! 俺がボロスとの交渉で何とか出来たのは事前に情報を集めてたり、俺のスタンスを決めていたからであって、こんな突発的に来られると対処出来んぞ!
「それともアレか? お前実は同性愛者だったとか――」
「んなわけあるかぁ!」
普通に女性が恋愛対象じゃい! シャルに変な誤解を招くような発言はやめてくれないか! ぶっちゃけシャルと違うタイプの美人だからちょっとドキドキしてる自分もいるんだよ! 色々ヤバいんだよ!
「それならいいじゃねえか。それに――」
「リョウ殿、如何様な命にも従いますのでどうかお傍に置いて下さいませんか!」
ボロスの言葉を遮り、いたく興奮した様子でリーディアが俺にアピールをしてくる。若干鼻息が荒くなっており、それでも尚美人と言い切れるのは凄いとは思うが残念な感じである。そしてボロスの方を見るとまるでアメリカ人のように両手を上げて首を左右に振っていやがる。殺すぞ。
「まあ何だ、こいつはこいつで色々と役に立つだろうし、正直に言うと帝国からお前に出せる物がこれくらいしかねえんだよ」
「ぬう……」
恐らくボロスの言葉は本当だろう。金もいらない、権力も面倒だからいらない、そうなれば土地を貰っても面倒であるし、そもそもこの魔の森に住んでいる時点で土地には困らない。好きなだけ化け物を狩れる上に、帝国には見せていないが創造魔法もあるので物資には困りようがない。技術面においても俺の生活を見れば外よりも余程良い暮らしをしていることは一目瞭然だ。
こうして考えてみると俺ってひょっとしてすんごい面倒な奴なのではなかろうか。協力を求めようにも差し出せる対価が存在しないので、脅すか同情を買うかしか手段が存在しない。もしかして今までここに来た奴らもそう考えて俺を脅しに……、いや、それは無いな、あいつらが傲慢だっただけだ。
どうしたものかと考えつつ俺はシャルの方を見やる。俺の右腕にくっついたまま一言も発していないが、彼女はこのことに対してどう思っているのだろうか。やはり俺の彼女としても見知らぬ女性がテリトリーに入るのは不快だろう。
「シャルはどう思う?」
「私はご主人様と一緒に居られればそれで良いので、ご主人様の思う様になさってください」
彼女が何を考えているのかわからないなら、彼女に聞けばいいじゃないと思い聞いたものの全く参考にならない言葉が返ってくる。しかも今の言葉はあの時の奴隷モードであるため、俺と一緒に居られるだけで良いというのも本気だろう。それはそれでやり辛いよママン!
……………………。
「わかった、帝国の誠意としてリーディアに家に来てもらおう」
恐らくは、それがシャルのためになるから。これからもし俺とシャルとドラ助だけで生活をした場合、そこだけで全てが完結してしまう。変わらないことが悪いとは言わないが、やはり新しい何かを加えるべきではないだろうか。
シャルがリーディアに対して良くない感情を持つかもしれないが、それに対して折り合いをつけることが出来るようになることも経験の内だと、思う、多分。それに問題なのは俺が浮気しないかであり、『好きなようにしていい』というのには当然『そういうこと』も含まれているだろうが、それをしないのもまた自由なはずだ。そうならないよう俺が鉄の意思で己を律すれば済む話である。あれ? 途端に自信が無くなってきたぞ?
考えれば考える程自分がやらかしてしまった気がしてきたが時既に遅し。俺の返事を聞いた皇帝達は既にこの場を去っており、リーディアはシャルと共に家に住む準備をしてしまっている。部屋を増やしたり家具を増やしたり、そういったことを結局は俺も手伝いリーディアが住む環境は整ってしまった。
やべえよやべえよ……。シャルが上手く出来るかよりも俺が上手く出来るかの方が心配になってきたよ……。とにかく変な空気にならないように早くリーディアのキャラを掴まないと……。
「あの……」
そうしてリビングで頭を抱えている俺に対してリーディアの方から声をかけてくる。一体どうしたのだろうかと思いそちらを見ると彼女は顔を輝かせて言葉を放った。
「よろしければ、私と手合わせ願えないだろうか!」
キラキラと、念願のおもちゃを手に入れた子供のようにそう言う彼女は何とも可愛らしい。ああ君、そういうキャラなのね。うん、わかった。
「君があの時指揮してたの? 何か頼むかもしれないからその時はよろしくね。あ、俺? あのでかいのの操縦者」
そして俺とシャルはすることが無く暇であったので、二人で森に帰る前に俺のロボットに対処していた指揮官に挨拶をした。最初は『誰だこいつ』って顔をしていたのに、俺がロボットを動かしていたと知ると顔を真っ青にして最敬礼をしながら返事をくれた。当たり前と言えば当たり前だが、ものすごいビビられて若干へこんでしまう。
「仕方ないよ師匠。私だってあんなのが迫って来たら怖くなっちゃうもん」
家に帰ってため息を吐いていた俺にシャルはそう慰めの言葉をかける。そうかー、シャルでも怖いかー、ならしょうがないなー。まあ多分シャルの『怖い』と彼の『怖い』はどうしようもない程の差がありそうだが。
王都に残してきた将軍に『何かあったらまた森に来るように』と伝えておいたので、後始末は全て放り投げてシャルといつものように過ごして帝国からの連絡を待つこと数日、妙に覚えのある気配が森にやってきたのを感じた。
「それで、なんでまた皇帝がここに来るんだよ」
「くはははは。そう言うな。今回の最大の功労者に俺が会わなきゃ失礼だろ」
いや、その理屈はおかしい。ボロスの様子からして別に火急の用事があるわけでも無いだろう。というかあったとしても部下を派遣する方が普通だろうし、王国を平らげるならば絶対にこいつは多忙なはずなのだ。
「まさかお前、サボる口実にしたんじゃないか?」
「ふん、そんなはずは無かろう」
俺の問いにボロスは自信満々に答え、ともすれば本当にそう思えてしまうが絶対違う。俺の勘が違うと告げている。さりげなく後ろにいた護衛の騎士が小さくため息を吐いていたし、最早確定だ。
「それよりもだ、今回ここに来たのは帝国の誠意をお前に見せるためだ」
「ああその話か。だがこんな忙しい時じゃなくて事態が落ち着いてからでも良かったんじゃないか?」
「それだといつになるかわからんからな。それに出来る限り早い内に済ませるのも誠意の証と言うものだろう?」
ふむ、もっともな話だ。とすると皇帝自らがここに来たのも誠意を見せるため、ということか? いや、やっぱりそれを出汁にしてサボってるだけだろ。まあそれでも話を遮ってまで言うことでもないため続きを促す。
「それで、その誠意とやらは何なんだ?」
「それはだな――」
ボロスはそう言うと視線を背後にやる。一体何だと思い俺もそっちの方を見ると甲冑姿の人物がこっちに歩み寄ってきた。その人物は兜を付けていないのでその整った顔や、光に照らされた綺麗な銀髪が良く映えている。こいつに何か荷物でも持たせているのだろうか。
「お初目にかかる。ボロスの娘リーディアだ。これからよろしくお願いする」
「はあ、よろしく、って、え? 娘? ボロスの?」
シャルが美しいと可愛いを足した美人とすれば、彼女は美しいと凛々しいを足した感じの美人である。この人が野性味たっぷりの『ガハハハ』という笑いが似合いそうな皇帝の娘とか、何それ全然似てないんですけどー。超ウケるんですけどー……、って皇帝の娘ってことはこの人姫じゃね? というかこれからよろしくってどういう意味だよ。
意味が分からず混乱する俺とは対照的に、横にいるシャルは至って落ち着いた様子であるが顔つきが段々と険しくなっていく。
「そういうわけだ。こいつのことは煮るなり焼くなり……、まあ殺すのは勘弁してやって欲しいが好きにしてくれや」
え、どういうこと、つまりあれか? 帝国の誠意として皇帝の娘を俺に預けると?
「お前それで謝罪になると思ってるの?」
こちとら現在シャルが非常に繊細なことになってるのよ? そこにどうしてこんな爆弾を投下しようとしているのか、これがわからない。
「む? 俺が言うのも何だがリーディアは帝国一の美人だぞ? それにこれはお前の大切な女を危険に晒したことへの誠意だ。ならば俺の大切な娘を預けるのが筋というものだろう」
やばい、予想してなかった事態に直面したことで段々頭が茹ってきたぞ。いかん! 俺がボロスとの交渉で何とか出来たのは事前に情報を集めてたり、俺のスタンスを決めていたからであって、こんな突発的に来られると対処出来んぞ!
「それともアレか? お前実は同性愛者だったとか――」
「んなわけあるかぁ!」
普通に女性が恋愛対象じゃい! シャルに変な誤解を招くような発言はやめてくれないか! ぶっちゃけシャルと違うタイプの美人だからちょっとドキドキしてる自分もいるんだよ! 色々ヤバいんだよ!
「それならいいじゃねえか。それに――」
「リョウ殿、如何様な命にも従いますのでどうかお傍に置いて下さいませんか!」
ボロスの言葉を遮り、いたく興奮した様子でリーディアが俺にアピールをしてくる。若干鼻息が荒くなっており、それでも尚美人と言い切れるのは凄いとは思うが残念な感じである。そしてボロスの方を見るとまるでアメリカ人のように両手を上げて首を左右に振っていやがる。殺すぞ。
「まあ何だ、こいつはこいつで色々と役に立つだろうし、正直に言うと帝国からお前に出せる物がこれくらいしかねえんだよ」
「ぬう……」
恐らくボロスの言葉は本当だろう。金もいらない、権力も面倒だからいらない、そうなれば土地を貰っても面倒であるし、そもそもこの魔の森に住んでいる時点で土地には困らない。好きなだけ化け物を狩れる上に、帝国には見せていないが創造魔法もあるので物資には困りようがない。技術面においても俺の生活を見れば外よりも余程良い暮らしをしていることは一目瞭然だ。
こうして考えてみると俺ってひょっとしてすんごい面倒な奴なのではなかろうか。協力を求めようにも差し出せる対価が存在しないので、脅すか同情を買うかしか手段が存在しない。もしかして今までここに来た奴らもそう考えて俺を脅しに……、いや、それは無いな、あいつらが傲慢だっただけだ。
どうしたものかと考えつつ俺はシャルの方を見やる。俺の右腕にくっついたまま一言も発していないが、彼女はこのことに対してどう思っているのだろうか。やはり俺の彼女としても見知らぬ女性がテリトリーに入るのは不快だろう。
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彼女が何を考えているのかわからないなら、彼女に聞けばいいじゃないと思い聞いたものの全く参考にならない言葉が返ってくる。しかも今の言葉はあの時の奴隷モードであるため、俺と一緒に居られるだけで良いというのも本気だろう。それはそれでやり辛いよママン!
……………………。
「わかった、帝国の誠意としてリーディアに家に来てもらおう」
恐らくは、それがシャルのためになるから。これからもし俺とシャルとドラ助だけで生活をした場合、そこだけで全てが完結してしまう。変わらないことが悪いとは言わないが、やはり新しい何かを加えるべきではないだろうか。
シャルがリーディアに対して良くない感情を持つかもしれないが、それに対して折り合いをつけることが出来るようになることも経験の内だと、思う、多分。それに問題なのは俺が浮気しないかであり、『好きなようにしていい』というのには当然『そういうこと』も含まれているだろうが、それをしないのもまた自由なはずだ。そうならないよう俺が鉄の意思で己を律すれば済む話である。あれ? 途端に自信が無くなってきたぞ?
考えれば考える程自分がやらかしてしまった気がしてきたが時既に遅し。俺の返事を聞いた皇帝達は既にこの場を去っており、リーディアはシャルと共に家に住む準備をしてしまっている。部屋を増やしたり家具を増やしたり、そういったことを結局は俺も手伝いリーディアが住む環境は整ってしまった。
やべえよやべえよ……。シャルが上手く出来るかよりも俺が上手く出来るかの方が心配になってきたよ……。とにかく変な空気にならないように早くリーディアのキャラを掴まないと……。
「あの……」
そうしてリビングで頭を抱えている俺に対してリーディアの方から声をかけてくる。一体どうしたのだろうかと思いそちらを見ると彼女は顔を輝かせて言葉を放った。
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