幼女と遊ぼうとしたら異世界に飛ばされた件について
52話目 お買い物
泣き続けて泣き続けて、止まらない涙を無理矢理に止めて、魔法で耳を隠してから街に向けて一歩踏み出しました。既に夜は明けてしまい、そろそろ人々が活動を始める時間になっています。やがて昨日くぐったばかりの門が見えてきて、門の傍に立っている人もこちらに気付いたのか姿勢を正したのがわかりました。
「おはよう。街に入るには銀貨一……、ってあんた、昨日街に入ったばかりじゃなかったか?」
衛兵が入街税をとるべく私に話しかけてきましたが、偶然なことに昨日私に対応してくれた人でした。
しまった、街の中に直接転移すればよかった。
「えーっと、ちょっと街の外に用事があったのを忘れてて、街から出ていたんです!」
「そうなのか? まあ、銀貨一枚だって安くは無いんだから気を付けろよ?」
衛兵は不思議そうな顔をしながらも私のことを街に入れてくれました。しかし昨日入って、今日も入るとなれば不自然極まりません。こんなことに気付かないなんて先行きが不安になってしまいます。
心の中でため息を吐きながら私は人気の少ない場所を探し、師匠がくれたメモを取り出してこの街の中に居る奴隷の人数や場所、置かれている状況を確認します。
情報の量が多くて確認するのに時間がかかってしまいましたが、今回は奴隷として売られている人たちを全員買うことを目標としました。既に奴隷として買われてしまった人たちを助けるには、買った人と交渉する必要がありますが、交渉が失敗して無理矢理助け出すことになるかもしれません。
その時傍にいる人たちが多ければ私では守り切れないかもしれません。だから今は交渉が必要ない人たちを先に助けることにします。今奴隷として誰かの『物』になっている人たちには申し訳ないですが、必ず助け出しますからどうか耐えてください……。
そうしてある程度の構想を立てた私は昨日訪れた宝飾店へと再度向かいます。昨日は気付きませんでしたが店に入ると心地よい鈴の音が鳴りました。とはいえそれで今の私の気持ちが上向くことはありませんが。
「いらっしゃいませ。本日はどのようなご用件でしょうか」
私が店に入るとすぐに昨日と同じ店員さんが対応しに来ます。この人がいたことにより私は奴隷のことを思い出し、森を出ることとなったので感謝をすればいいのか、それとも恨めばいいのか、複雑な気分です。
「実は昨日見せてもらったエルフなのですが、今日は彼らを買いに来たんです」
私がそう告げると店員さんは喜んだ様子で返事をします。
「かしこまりました。どのエルフをお買い求めになりますか?」
『それと、その耳飾りを作った職人についてなのですが……』と店員さんは続けますが私は首を横に振ります。それを見た店員さんは残念そうな顔をして対応を続けます。
「それでは、正規の値段である金貨四十枚になりますが、よろしいでしょうか」
そう問われた私は背負っているリュックからもぞもぞと袋を取り出して近くにある机にドスンと置きます。
「金貨八百枚ありますので、ここにいるエルフを全てお願います」
師匠がくれたお金は途方もなく巨額でした。金貨だけで見上げる程の山が出来るでしょうし、金貨千枚分の価値がある白金貨でさえ大量にあります。金貨八百枚程度であれば問題なく支払うことが出来るでしょう。
店員さんは呆気にとられたようで目を丸くし、しばらくして我に返ると『少々お待ちください』と私に言うと他の店員さんと共に金貨の確認作業に入りました。やがて枚数を数え終わったのか、先程の店員さんが私の対応に戻ります。
「お客様、金貨八百枚確かに頂戴いたしました。ですがお客様には護衛等がいらっしゃらない様子ですが、こちらから数名お出しいたしましょうか? 無論お代は頂きません」
店員さんの心配はもっともと言えるでしょう。金貨九枚という金額にさえ目の色を変える人たちがいるというのに、ここにいるエルフたちは金貨八百枚という正に桁違いの価値があります。加えて、それを支払うことが出来る私がどれ程のお金を持っているのか。ですが、やはり店員さんの提案を飲むことは出来ません。これから私たちは人のいない、どこかの森へと行かなければならないのですから、それを見られるわけにはいかないのです。
先程と同様に首を横に振る私を見て、店員さんはしばらく私の説得をしようとしましたが、最終的には渋々といった様子ですが諦めてくれました。
そして私は同じようなやり取りを繰り返し、総勢百名以上のエルフを連れて街の外へとへと向かうのでした。
「おはよう。街に入るには銀貨一……、ってあんた、昨日街に入ったばかりじゃなかったか?」
衛兵が入街税をとるべく私に話しかけてきましたが、偶然なことに昨日私に対応してくれた人でした。
しまった、街の中に直接転移すればよかった。
「えーっと、ちょっと街の外に用事があったのを忘れてて、街から出ていたんです!」
「そうなのか? まあ、銀貨一枚だって安くは無いんだから気を付けろよ?」
衛兵は不思議そうな顔をしながらも私のことを街に入れてくれました。しかし昨日入って、今日も入るとなれば不自然極まりません。こんなことに気付かないなんて先行きが不安になってしまいます。
心の中でため息を吐きながら私は人気の少ない場所を探し、師匠がくれたメモを取り出してこの街の中に居る奴隷の人数や場所、置かれている状況を確認します。
情報の量が多くて確認するのに時間がかかってしまいましたが、今回は奴隷として売られている人たちを全員買うことを目標としました。既に奴隷として買われてしまった人たちを助けるには、買った人と交渉する必要がありますが、交渉が失敗して無理矢理助け出すことになるかもしれません。
その時傍にいる人たちが多ければ私では守り切れないかもしれません。だから今は交渉が必要ない人たちを先に助けることにします。今奴隷として誰かの『物』になっている人たちには申し訳ないですが、必ず助け出しますからどうか耐えてください……。
そうしてある程度の構想を立てた私は昨日訪れた宝飾店へと再度向かいます。昨日は気付きませんでしたが店に入ると心地よい鈴の音が鳴りました。とはいえそれで今の私の気持ちが上向くことはありませんが。
「いらっしゃいませ。本日はどのようなご用件でしょうか」
私が店に入るとすぐに昨日と同じ店員さんが対応しに来ます。この人がいたことにより私は奴隷のことを思い出し、森を出ることとなったので感謝をすればいいのか、それとも恨めばいいのか、複雑な気分です。
「実は昨日見せてもらったエルフなのですが、今日は彼らを買いに来たんです」
私がそう告げると店員さんは喜んだ様子で返事をします。
「かしこまりました。どのエルフをお買い求めになりますか?」
『それと、その耳飾りを作った職人についてなのですが……』と店員さんは続けますが私は首を横に振ります。それを見た店員さんは残念そうな顔をして対応を続けます。
「それでは、正規の値段である金貨四十枚になりますが、よろしいでしょうか」
そう問われた私は背負っているリュックからもぞもぞと袋を取り出して近くにある机にドスンと置きます。
「金貨八百枚ありますので、ここにいるエルフを全てお願います」
師匠がくれたお金は途方もなく巨額でした。金貨だけで見上げる程の山が出来るでしょうし、金貨千枚分の価値がある白金貨でさえ大量にあります。金貨八百枚程度であれば問題なく支払うことが出来るでしょう。
店員さんは呆気にとられたようで目を丸くし、しばらくして我に返ると『少々お待ちください』と私に言うと他の店員さんと共に金貨の確認作業に入りました。やがて枚数を数え終わったのか、先程の店員さんが私の対応に戻ります。
「お客様、金貨八百枚確かに頂戴いたしました。ですがお客様には護衛等がいらっしゃらない様子ですが、こちらから数名お出しいたしましょうか? 無論お代は頂きません」
店員さんの心配はもっともと言えるでしょう。金貨九枚という金額にさえ目の色を変える人たちがいるというのに、ここにいるエルフたちは金貨八百枚という正に桁違いの価値があります。加えて、それを支払うことが出来る私がどれ程のお金を持っているのか。ですが、やはり店員さんの提案を飲むことは出来ません。これから私たちは人のいない、どこかの森へと行かなければならないのですから、それを見られるわけにはいかないのです。
先程と同様に首を横に振る私を見て、店員さんはしばらく私の説得をしようとしましたが、最終的には渋々といった様子ですが諦めてくれました。
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