は、魔王?そんなのうちのブラコン妹の方が100倍危ないんだが

プチパン

15話 無知識だけど両手に華



「それよりさっきのスキルはなんだったんですか?」
「あぁあれは⋯⋯ 」


 ハクヤはクレアを背中におぶり、左右を二人の少女に挟まれる形で、街への帰路に着いていた。


「あ、す、すみません! いきなりスキルについて聞くのは失礼ですよね⋯⋯すみません⋯⋯」


 ユリアはそう言うと、肌をほんのりとピンクに染め手を振り否定を示してくる。
 その反動で揺れる澄んだ薄めの金髪がハクヤの鼻先を掠め、ほのかに甘い匂いがハクヤの鼻腔をくすぐってくる。
 クレアと違い、優しく包んでくれそうな香りにハクヤは緊張感が緩んで行くのを感じでいた。
 なんせつい十数分前に出会ったばかりの他人である、いくら命の恩人と言ってもそこまでは心を許すものでもない、だがこの二人はどこか信頼できる、安心できるそんな気がしていた。
 どうしてか、他人には見えないそんな気がするのだ。


「そ、そうなのか? 別にいいけど⋯⋯あまり口にしたくないんだけど⋯⋯あのスキル、【無窮の愛】は簡単に言えば自己強化の類で、五感や運動能力、剣技とかの技術まで底上げされるらしいんだ」


「無窮の愛⋯⋯何そのスキル⋯⋯五感の強化に運動能力の強化、二つを一気に底上げなんてスキルA並みじゃない! それに剣術を強化って⋯⋯なんかチート過ぎじゃない!?」
「そうなのか? 」
「はい⋯⋯あんなスキル見たこともありません。あの時の魔力は私が見てきた中でも一番だった様に感じました」


 ユリアがそう言うとレイラも同調する様に頷いてみせる。


「そうなのか⋯⋯力がみなぎるなとは思ったけど」


 確かに、剣術強化は並みの身体強化の、枠を超えているだろう。
 二人のおかげでようやく自分達の実力が、分かってきた気がする。


「二人は色々と詳しいみたいだけどいつから冒険してるの? 」
「三年程⋯⋯ですかね。まだ全然強くは無いんですが」


 三年⋯⋯こちらの世界もハクヤ達と同じ年感覚だとすれば、中学時代から命をかけた冒険をしていることになる。
 ハクヤはおもわず目を見開き感嘆の声を上げた。
 この世界での実力が分かるわけでは無いが、そう二人が弱く無いことぐらいはハクヤにも分かる。


「すごいな⋯⋯」
「さっきの見た後で褒められても逆に惨めなんだけど⋯⋯」


 そう言って苦笑いを浮かべるレイラ。


「私達まだランクDですし」
「ごめんランクDがどれくらいなのかがよく分からなくて」


 ハクヤが申し訳なく呟くと、今度は二人が目を見開いた。


「え? ランクを知らないんですか?」
「あ、あぁ⋯⋯」


 まるで、絶対にありえないものを見る様な驚き様にハクヤはバツが悪そうに首を振る。
 ハクヤ達からすれば、ここは来て二日の世界だが、二人からすればそんなこと分かるはずがないし、そんな簡単に説明出来るものでもないだろう。


「ハクヤ達はなら何でこんな所にいたの?」 
「どんなスキルかの確認だけど」


 ハクヤが答えると、またしても二人は固まってしまう。


「「え? 」」


「そのスキルっていつ分かったんですか?! 」
「昨日だけど⋯⋯ 」
「ごめん私よく分からなくなって来ちゃった⋯⋯うーん、とりあえずハクヤは世の中の常識をほぼ知らず、突然覚えたスキルを武器に冒険者を目指してるって事?」
「そうだけど」


 改めて言われると怪しさ全開すぎた。


「冒険者は何をする人なのか知ってますか?
「魔王を倒すことを目標に仲間と冒険するんじゃないのか?」


 2人は呆れるように首を揃り、ため息をついてくる。
 ハクヤは苦虫を潰した様な顔をし、どこにでもなく「ごめんなさい⋯⋯」と呟いた。


「簡単に説明するよ、冒険者は基本ギルドというクエストを依頼、承諾をする場に属していて貼ってある依頼などの仕事をしてお金を貰ってる人達の事なの」
「なら俺達もギルドに入れば冒険者になれるって事か? 」
「まぁ、そうゆう事です」


 二人のおかげでようやくこれからの道筋が見えて来た。
 ようやく見えてきた街を見つめ、ハクヤは呟いた。


「そうなのか⋯⋯ならとりあえずギルドに俺達は行く事にするよ」


 そう言うと2人は顔を見合わせて頷くと


「私達もご一緒します!」
「私達も一緒にいかせてよ!」


「本当か!? よろしく頼むよ」


 予想外な申し出に驚くが、これは願っても無い事だ。
 そうしてハクヤは二日目にして、三人の美少女と共に街に帰るのであった。


 

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