は、魔王?そんなのうちのブラコン妹の方が100倍危ないんだが

プチパン

13話 一体あなたは何者なんですか?

「貴方は何者なのですか?!」
「あんなスキル見た事ないよ! あれ何?  自己強化にしては効果が強すぎるよね!」


 二つのフードが眼前に迫り、そうまくし立ててくる。
 現在、どうにかスレイムの討伐に成功したハクヤは、その際に使用したスキルについてフードの少女に問いただされている最中だ。


「えぇと⋯⋯俺ら・・は冒険者になる為に遠い所から来た、ただの兄妹だ⋯⋯。 あと、スキルに関しては俺ら・・も良くわからないんだよ。このスキルもつい最近使えるようになってて⋯⋯。固有スキルらしいけど、出来れば固有スキルについて知ってる事があれば教えてくれないか? 」


 ハクヤがそう返すと敬語口調の少女の方が首をかしげた。


「あの⋯⋯二人は兄妹なのですか? その割にはあまり似ていませんね」


 そう言って直ぐに、手を大袈裟に振ると「いや、これは侮辱ではありませんよ!?」


 手をひらひらと振り、苦笑をかえしつつハクヤは疑問を口にした。


「なぁ、兄妹っていう関係はあるんだよね」


 二つのフードが何を言ってるの? と言うふうに首を振る。


「でも結婚も出来るんだよね?」


 再びフードが揺れる。


「やっぱりあんたらは付き合ってたりするのか?」
「ちょっとレイラ、失礼だって!」
「いや、良いよ全然。俺らきょうだ⋯⋯いやもちろん付き合ってないよ」


 冷静に答えると、レイラと呼ばれた少女がふーんと頷き何か言いかけたが、それをもう一人が遮るように話し出した。


「初対面でいきなりごめんなさい! 話が逸れましたね。固有スキルについてですか⋯⋯ 私もあまり詳しくは知らないのですが、固有スキルという物は特別なスキルでありその個人個人専用のスキルという事ぐらいは知ってます 」


「あぁ」 


「まぁ基本的に普通のスキルと違って、強力な効果のものが多いんだよ。同じ固有スキル持ってる【個】が世界には複数いたりする事もあるらしいけど、基本はその個特有のスキルだし」


「個?」


 聞き慣れたようで、聞き慣れてない単語にハクヤは首を傾げる。


「あなた本当に何も知らないんですね⋯⋯どこ出身なんですか? 【個】というのは様々な種族が暮らすこの世界で、一人一人全ての個人を表す時の通称ですよ」


「て事は⋯⋯ 俺ら人間だけなら【人】で表せる所が全種族になると【個】になるって事で良いのか? 」


「大体そんな感じでokだよ!」


 親指を突き出しグッドポーズを決めるレイラ。
 まだ会ったばかりなのだが、この少女は明るくて絡みやすい性格なのだろう。


「いろいろと教えてくれてありがとう。えーっと⋯⋯二人のことはなんて呼べば良いのかな?  てか、俺らが同じ固有スキルってのも意味深だな⋯⋯」


「「⋯⋯えっ! ?」」


 突然二人が呆けたような声を上げ、数巡の沈黙そして二人して身を乗り出すように詰め寄ってきた。


「そこの女の子もさっきあなたが使ったスキルを持っているんですか?! 」


「そこの女の子もあんたと同じスキル持ってるの?!」


 見事に二人がシンクロする。
 そんなに驚く事なのだろうか⋯⋯いやそうなのだろう。


「あ、あぁそうだけど⋯⋯それより名前」


 ハクヤが一歩後ずさりつつ聞くと、また一歩詰め寄ってくる。
 頬に冷たい汗が流れた。


「スキルの名前とかって聞いてもよろしいですか?」
「二人同じスキルって⋯⋯君達本当にどんな関係なの? 」


「いや、あ、あの⋯⋯それより名前は! 」


 思わず叫ぶと二人は肩をビクッと揺らす。


「あ、すいません⋯⋯いきなりこんなに取り乱してしまって⋯⋯私の名前はユリア・アーラス。 呼び方はユリアでもアーラスでもご自由に⋯⋯でも、エッチな呼び名とかは⋯⋯ダメですよ⋯⋯?」
「君は俺をなんだと思ってるのかな?」


 ハクヤが汗を浮かべ、引きつった笑いで問い返す。


「あ、ごめんなさい! 男の方は女性の事をよこしまな目で見てると認識してたのですが、違いましたか?」


 手をぶんぶんと振り、首をかしげる。
 その仕草は初心さがあり非常に可愛らしい。


 ハクヤがそう思った直後顔まで隠されていたフードが外された。
 途端、輝くように美しい金髪の髪が涼しげな風に煽られるようにして広がった。
 だがハクヤが釘付けにされてしまったのには別の要因があった。
 それは圧倒的なまでの美貌だ。
 目は透き通った海のようなエメラルドグリーン色、少し目尻が上がっていて長いまつ毛が非常に女性らしく、肌はまるで新雪の様に白い。
 その少女は瞬間頬を朱色に染め、フードを剥いだであろうレイラに非難の声を上げると肩をぽかぽかと叩く。


 当のレイラはそんな可愛いらしい攻撃など全く気にしてない様で、「ははは」と笑うと今度は自分のフードを剥いだ。


 その日の天候、清々しいほどの晴天に合わせたかの様な、明るい水色の髪は肩に触れないほどの長さでボーイッシュな髪型に切られ、黒い瞳と笑っているからか見える八重歯が妙に可愛らしい。
 肌の色はユリアよりは若干肌色が強く、顔立ちは負けず綺麗だ。


 これらから分かるだろうが、二人ともいわゆる超絶美少女だった。


(異世界ってやっぱりみんな可愛いのか⋯⋯? いやこの二人は多分特別だろ。クレアと同等ってどんだけだよ)


「まぁ、さっきユリアが言ってたから分かるだろうけど私の名前はレイラ、レイラ・ユートラシス。気軽にレイラって呼んでよ。で、君の名前は?」


「⋯⋯⋯⋯」


「どうしたの?」


「、!? あぁまだ言ってなかったね。 俺の名前は八神 白夜、でそこで寝てるのが八神 紅麗亜だ。 さっきは本当に助けてくれてありがとう」


 思わず、見惚れていたなんて恥ずかしくて死んでも言えないわけで、あくまで平常を装いつつハクヤは改めてお辞儀をすると、二人は神々しいほどの笑顔を返してくれた。



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