竜神の加護を持つ少年
79.水源問題解決の糸口
――王城内のとある一室では。
「まさかコータ殿が、あそこまでガルラード帝国の大使に食って掛かるとは思わなかったぞ。またしてもブリッシュ王国の二の舞かと思われる程じゃったわ」
「そこまでですか? 宿屋で朝、話した時にはそこまで怒っている感じは受けませんでしたが……」
「あれじゃな、過去の侵略は仕方ないが、交渉を断られ続けて、エルフを攫った話から怒気が荒くなったな」
「それでは、娘達が以前盗賊たちに攫われて来た事を、思い出したのでしょうか?」
「そうかもしれんし、違うかもしれん。コータ殿の思いついた手段はガルラード帝国が生き残るには、他国への侵略、自国と運命を共にして自滅、地下水を探す事の3択しか無かったからのぉ。本当にそれしか手が無いなら、もうガルラード帝国は詰んでおる」
「それは不味いですね、元々侵略国家が自暴自棄になったら……」
「うむ、我もそれを危惧しておる。取り敢えずは北東方面の警備を増強させようと考えておるが、ガルラード帝国ならば気づくであろうが、こちらに侵入してくる盗賊対策とすれば問題は起きまいて」
「今はそれが最善ですね」
がははは……いつもの如く。
∞ ∞ ∞ ∞
『ガシャン』壁に投げついけられたグラスが砕け散った。まるで帝国の末路の様に……。
「糞。あの小僧が、我が帝国の現状を知って尚も突き放す発言をしおって! そもそも、エルフに逃げられるとは、我が軍は腰抜けか! だが、今回はアーノルド王から支援物資の提供を受けられただけでも助かったが、あの小僧の言った様に……ここはもう侵略か地下水を探すしか手は無い」
椅子に深く腰掛け、うな垂れながら30半ばの髪に少し白髪の混ざった茶髪を引っ掻く姿が痛々しい。
「しかし侵略か、だがいったい何処へ? エルフの里は森が結界で守られており、入ったが最後出る事は叶わんと聞く。その結界があるお陰で、大使が訪問しても、森の手前の小屋でしか交渉が出来なかったのだ。流石に結界が邪魔で攻め込めん。かといって北西から遠回りして獣人の森へ入るには今からの季節、雪深くて適わん。わが国の東に国は無い。さすれば、この国しか無いではないか」
大使も支援物資を提供してくれた国への侵略は、躊躇われたようだ。
∞ ∞ ∞ ∞
「コータさんお帰りなさい。国王様とのお話は如何でした?」
「アーノルド王との話は特に何も無かったけど、ガルラード帝国大使の方がね、さすがに切羽詰っているのは分るんだけど、他国に来てエルフの悪口を言っていたのでは……いい気分はしないよね」
「そうでしたか。そこまで追い詰められているとアレフ王子の言っていた話は本当だったのですね。ガルラード帝国が挙兵してこの国に攻め入ればトーマズの街が危険に――お父様達大丈夫かしら」
「その心配は無いと思うよ。いくら困窮しているガルラード帝国でも、支援物資を受けた国に侵略は出来ないでしょ?」
「だといいのですが、本当に切羽詰っていれば――何でもしそうで怖いですね」
「最悪そうなったら、俺達で何とかすればいいさ!」
「勝てるでしょうか?」
「確実にね!」
「それなら問題は無いですね」
アルテッザも少しは安心してくれたようで良かった。
翌日にエルフ達を連れて、アイテールの街へ向った。他国に寄る予定でも無かったので懐が寂しく宿に長居は出来ないからだそうだ。
「それじゃ行きますか!また頼むよ。フロストさん」
フロストが任せて! とでも言うように顔を上にあげ『GYAAA』と嘶く。
今回もニョルズ達の馬車が一緒なので、アイテールの街まで5日は掛かる予定だ。
「それにしてもまた寒くなったんじゃないかな? 山脈の上の方なんてもう真っ白だよ」
後、1ヶ月もすればこの辺にも雪がちらつく事は間違い無いだろう。
「本当に、中は暖かいのでまだいいのですが……いつもすみません。コータさん」
「アルテッザは中で寛いでいてよ!」
大事な女性には甘いコータである。
「お前は皆にも同じ事を言わないと駄目なんだぞ!」
はいはい。わかっていますって――ヘメラ様。
ガルラード帝国の水対策を未だに考えているんだけど、全然わからねぇ!
どうやって地下水を地上に出すか……日本みたいにポンプとかあれば穴掘るだけでいいんだけど、この世界にそんな設備は無い。かといって手押しのポンプじゃ量が少なすぎる。
畑の作物にも使えて、上水道にも使える水ね。竹で水を引いてくるってのは結局他から水を分捕るのと変わらないし。やっぱり地下水しか無いのかな?
「コータがお得意の、図鑑の知識とやらには無いのか?」
「治水工事とか穴掘りの知識なんて載って無いよ。載っていたのは穴を掘る機械とか、特殊作業車とかだし……」
でも地下水の汲み上げが原因で、地盤沈下とか水脈の枯渇とかしたらもっとまずいな。
日本では東京とかで、地下水の汲み上げを止めたら今度は地下水の浮力で土地が持ち上げられてアンカーまで打ち込んで押さえているらしいけど。地下水頼みも色々問題は多いのか。
これじゃ打つ手が全く無くなる。くそ、魔法で何でも出来る異世界生活じゃないのかよ!
「魔法だって万能ではないからのぉ」
大雨とか降らせる魔法は、出来るけど問題はため池か。
あれ?
なんか引っ掛った。
大雨、ため池。水を溜め込む?
ダム!
そうだ! これだ! ダムを作って水を流せばいいんだよ。
「それの何処が名案なのだ?」
えっと、山脈にダムを作って人力でもいいから門を築いて水を好き勝手に流れないようにすれば、水の無駄な放流も無く他の場所の水も枯渇する心配は無くなる。
後はその場所と、穴をどうやって作るか?
だね。
アイテールの街に戻ったら早速、エルフ達とダムを作れるか相談してガルラード帝国の水問題を解決しよう!
「まさかコータ殿が、あそこまでガルラード帝国の大使に食って掛かるとは思わなかったぞ。またしてもブリッシュ王国の二の舞かと思われる程じゃったわ」
「そこまでですか? 宿屋で朝、話した時にはそこまで怒っている感じは受けませんでしたが……」
「あれじゃな、過去の侵略は仕方ないが、交渉を断られ続けて、エルフを攫った話から怒気が荒くなったな」
「それでは、娘達が以前盗賊たちに攫われて来た事を、思い出したのでしょうか?」
「そうかもしれんし、違うかもしれん。コータ殿の思いついた手段はガルラード帝国が生き残るには、他国への侵略、自国と運命を共にして自滅、地下水を探す事の3択しか無かったからのぉ。本当にそれしか手が無いなら、もうガルラード帝国は詰んでおる」
「それは不味いですね、元々侵略国家が自暴自棄になったら……」
「うむ、我もそれを危惧しておる。取り敢えずは北東方面の警備を増強させようと考えておるが、ガルラード帝国ならば気づくであろうが、こちらに侵入してくる盗賊対策とすれば問題は起きまいて」
「今はそれが最善ですね」
がははは……いつもの如く。
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『ガシャン』壁に投げついけられたグラスが砕け散った。まるで帝国の末路の様に……。
「糞。あの小僧が、我が帝国の現状を知って尚も突き放す発言をしおって! そもそも、エルフに逃げられるとは、我が軍は腰抜けか! だが、今回はアーノルド王から支援物資の提供を受けられただけでも助かったが、あの小僧の言った様に……ここはもう侵略か地下水を探すしか手は無い」
椅子に深く腰掛け、うな垂れながら30半ばの髪に少し白髪の混ざった茶髪を引っ掻く姿が痛々しい。
「しかし侵略か、だがいったい何処へ? エルフの里は森が結界で守られており、入ったが最後出る事は叶わんと聞く。その結界があるお陰で、大使が訪問しても、森の手前の小屋でしか交渉が出来なかったのだ。流石に結界が邪魔で攻め込めん。かといって北西から遠回りして獣人の森へ入るには今からの季節、雪深くて適わん。わが国の東に国は無い。さすれば、この国しか無いではないか」
大使も支援物資を提供してくれた国への侵略は、躊躇われたようだ。
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「コータさんお帰りなさい。国王様とのお話は如何でした?」
「アーノルド王との話は特に何も無かったけど、ガルラード帝国大使の方がね、さすがに切羽詰っているのは分るんだけど、他国に来てエルフの悪口を言っていたのでは……いい気分はしないよね」
「そうでしたか。そこまで追い詰められているとアレフ王子の言っていた話は本当だったのですね。ガルラード帝国が挙兵してこの国に攻め入ればトーマズの街が危険に――お父様達大丈夫かしら」
「その心配は無いと思うよ。いくら困窮しているガルラード帝国でも、支援物資を受けた国に侵略は出来ないでしょ?」
「だといいのですが、本当に切羽詰っていれば――何でもしそうで怖いですね」
「最悪そうなったら、俺達で何とかすればいいさ!」
「勝てるでしょうか?」
「確実にね!」
「それなら問題は無いですね」
アルテッザも少しは安心してくれたようで良かった。
翌日にエルフ達を連れて、アイテールの街へ向った。他国に寄る予定でも無かったので懐が寂しく宿に長居は出来ないからだそうだ。
「それじゃ行きますか!また頼むよ。フロストさん」
フロストが任せて! とでも言うように顔を上にあげ『GYAAA』と嘶く。
今回もニョルズ達の馬車が一緒なので、アイテールの街まで5日は掛かる予定だ。
「それにしてもまた寒くなったんじゃないかな? 山脈の上の方なんてもう真っ白だよ」
後、1ヶ月もすればこの辺にも雪がちらつく事は間違い無いだろう。
「本当に、中は暖かいのでまだいいのですが……いつもすみません。コータさん」
「アルテッザは中で寛いでいてよ!」
大事な女性には甘いコータである。
「お前は皆にも同じ事を言わないと駄目なんだぞ!」
はいはい。わかっていますって――ヘメラ様。
ガルラード帝国の水対策を未だに考えているんだけど、全然わからねぇ!
どうやって地下水を地上に出すか……日本みたいにポンプとかあれば穴掘るだけでいいんだけど、この世界にそんな設備は無い。かといって手押しのポンプじゃ量が少なすぎる。
畑の作物にも使えて、上水道にも使える水ね。竹で水を引いてくるってのは結局他から水を分捕るのと変わらないし。やっぱり地下水しか無いのかな?
「コータがお得意の、図鑑の知識とやらには無いのか?」
「治水工事とか穴掘りの知識なんて載って無いよ。載っていたのは穴を掘る機械とか、特殊作業車とかだし……」
でも地下水の汲み上げが原因で、地盤沈下とか水脈の枯渇とかしたらもっとまずいな。
日本では東京とかで、地下水の汲み上げを止めたら今度は地下水の浮力で土地が持ち上げられてアンカーまで打ち込んで押さえているらしいけど。地下水頼みも色々問題は多いのか。
これじゃ打つ手が全く無くなる。くそ、魔法で何でも出来る異世界生活じゃないのかよ!
「魔法だって万能ではないからのぉ」
大雨とか降らせる魔法は、出来るけど問題はため池か。
あれ?
なんか引っ掛った。
大雨、ため池。水を溜め込む?
ダム!
そうだ! これだ! ダムを作って水を流せばいいんだよ。
「それの何処が名案なのだ?」
えっと、山脈にダムを作って人力でもいいから門を築いて水を好き勝手に流れないようにすれば、水の無駄な放流も無く他の場所の水も枯渇する心配は無くなる。
後はその場所と、穴をどうやって作るか?
だね。
アイテールの街に戻ったら早速、エルフ達とダムを作れるか相談してガルラード帝国の水問題を解決しよう!
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