竜神の加護を持つ少年

石の森は近所です

73.仲裁

「とぅ!いくにゃ!」
「そっちに逃げても無駄だに!」
「コータさん、前の盗賊をお願いします」


 タマちゃんも段々慣れて来たのか?少し手加減を覚えたようで、
 盗賊の足の脛に狙いを付け、低い姿勢のまま、素早く相手の懐へ飛び込み、
 脛へ木の棒で攻撃を食らわす。
 当然、今のタマちゃんのステータスから打ち出される威力は、達人クラス。
 脛の骨を粉砕されて、地面に転がる事になる。


 ポチも相変わらず、石突をわき腹や鳩尾へ打ち込んで、あっさり倒す。
 他の娘達もほとんど似たようなものだ。


 これまでに遭遇した盗賊の総数は約120人。その全てを裸にひん剥いて、
 塒や道の端にある木に縛り付けた。


「しっかし王都を出てから3日で5組の盗賊とは、思っていた以上に多いね」
「まさかこの国が、これ程荒れていたとは、王宮に居た時には思ってもみませんでしたわ」


 おれ自身もまさかこれ程の盗賊との遭遇は予定外。予想すらしていなかった。


「なんで急に増えたんだろうね」


 恐らく、景気が回復する前に職にあぶれた農民や、腕の悪い冒険者が、盗賊を結成しており、景気が回復してきて、交通量の増えた街道に狙いをつけた為に、増えたように感じるのだろう。


 そんな事をする位なら、真面目に働けばいいのに。


 そう言うとアルテッザが


「今必要な人材が、造船、建築関係が殆どなので、力や体力も無い人や根気の無い人にはきつい仕事だと思いますよ」


 確かに、俺が今のステータスじゃなく普通だったら土木、建築、造船なんて見るからに体力仕事は忌避していただろう。


 やっぱり農業改革とかして、貧しい人を何とか減らさないと厳しいのかな?
 それにしても俺の知識では精々、二毛作とかすれば畑の栄養が減りにくくていい。位の事しかわからない。だって俺14歳だもん。


 そんな事で、盗賊5組を討伐して得たお宝は、金貨30枚。銀貨340枚、小銭。やすっぽい武器しか手に入れてない。
 トーマズの街まで後4日、いったい何組の盗賊に会う事やら。


 そして真っ直ぐ進めば東方の国、右に曲がればトーマズの街という場所に差し掛かった時にそれは居た。
 前方では1台の馬車の周りに兵士の様に鎧を統一した者達が馬車を囲んで、その一行らしき人たちと激しい戦闘を繰り広げていた。面倒ごとか?


「双方剣を納めてください、繰り返します双方剣を収めてください!」


 俺が馬車を手前で停止させ叫ぶが、一行に双方剣を収める様子が無い。俺は威嚇の意味を込めカラドボルグへ魔力を少しだけ込めて上空向けて打ち出した。


「どばぁぁぁーん!」


 突然の音に驚いた双方が、やっとこちらに振り向いたが、やはり思ったとおり馬車の方はエルフらしき一団、兵士の方は盗賊というよりも何処かの軍に所属する兵隊の様であった。


「双方、剣を納めてください。まだ戦うというならこの剣があなた方へ向けられると思ってください」


 双方は困惑しながらも剣を降ろした。さて話を聞かないとね!


「まず兵士の方から伺います。所属と何故こんな往来で馬車を襲っているのですか?」


「我等はガルラード帝国の帝国南方軍である、ここが他国とは知っているがどうか見逃して欲しい」
 他国まで入ってきて、戦闘までしておいて見逃せって事は無いでしょうよ。


「見逃す事は出来ません。ここはすでにガルラード帝国の領土からだいぶ南西に入った、アルステッド国の領土です」


「我等はその馬車が不正にガルラード帝国を抜けた為、追って参ったのだ、よって見逃す事は出来ぬ!」


 この世界にはそれが許される法律でもあんのかな?ちょっとメテオラに聞いて見るか。


「メテオラちょっと・・・」


 メテオラに確認すると、例え族であったとしても、この国に逃げ込めば追尾は出来ない事になっているらしい。と言う事は、ガルラード帝国の話を突っぱねる事が出来る訳だ。
 でもどの様な事情があるかは知らないが相手のエルフらしき一行にも聞いておかないとな。


「そちらの馬車の方々はどちらから?」


「アルフヘイムからこの国にやってきた、リョースアールヴのニョルズ・フレイと申します」
「同じく、スヴァルトアルフヘイムからこの国にやってきた、スヴァルトアールヴのユミルじゃ」


 俺の感覚ではエルフとドワーフって感じなんだけど・・・この2種族って仲悪いんじゃないのか?


「それでそのお二方は、なんで追われてこの国に?」


「われらはガルラード帝国によって攫われた一族を奪還して逃げる最中で、アルフヘイムへの道を塞がれた為、仕方なくこの国に逃げてきたのだ」


 話だけ聞けばガルラード帝国の方が悪く聞こえるが。いったいどういう状況でこうなっているんだか。


「双方の話は分りました。ガルラード帝国の兵の方、一度兵を引いて下さいませんか?」


「ここはすでにあなた方の国では無い。この国の法によってアルフヘイムの民達の安全は保障されます」


「後で、国際問題に発展しても知らんぞ!」


「国際問題も何も、当方にはあなた方の事情など知った事ではありませんから。ただ当国内でこれ以上の戦闘を望まれるのでしたら 」


 カラドボルグを見せつけわかるでしょ?と言ってみた。


「後で後悔しても知らぬぞ!」


 そう捨て台詞を残し兵士達は北東へ去っていった。


 さてと、次はエルフとドワーフに聞き込みか。また厄介ごとに手を突っ込んじゃったな。



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