竜神の加護を持つ少年

石の森は近所です

57.ブリッシュ王国の特産品

 「それじゃ、デメストリー後はよろしく頼むよ」


 代官に、後の事を任せ、一路馬車はブリッシュ王国へ。


 先頭に大使のオベンリーの馬車、その後ろをついて行くのだが、
いつもはフロストさんが、飛ばしに飛ばしまくっている為、こうして普通の馬の馬車と一緒というのは非常に遅くだるい。


 それに何と言っても、今回もうちの馬車の御車席は、俺一人である。


たまには誰か乗ってくれれば、いいのだけれど、如何せん乗り心地が最低だし、雨風凌げないしね。


 この速度で、ブリッシュ王国まで行ったら――何日かかる事やら。


ちなみに、ホロウとポチの村があった場所まで、ここから結構かかる。


 この前は、クロに乗って行ったから、あっという間に着いたけれど……。
いざ馬車で、というと本当に飽きる。


 だってさ、周り見渡せば草原と小麦の畑とかだよ?
これ絶対居眠りしちゃうよね!


でも居眠りをすると、フロストさんが冷気を吹きかけて優しく起してくれる訳で――休む暇も無い感じな訳よ!


「ねぇ、誰か隣でおしゃべりでもしない?」


 馬車の車内へと声を掛けると、皆、乗り気が無さそうな感じで……。


 「外は寒いだに!」
「タマも寒いの嫌だにゃ!」
「私も寒いのはちょっと、コータさんすみません」
「中の方が寛げますので」
「じゃ、私がそちらに行きますわ」


お!
一人居たじゃないですか!でも王女様が御車席ってどうなのよ?


 今、俺の隣には、わっち少女では無く、俺よりも3歳年上で、シンプルボブにイメチェンした金髪、碧眼のおねぇさんが座っている。


「メテオラは、御車席とか始めてだよね?」
「勿論、初めてですわ。少し楽しみですの!」


おぉ、じゃ初体験の相手は俺ですね!
何故か、ワクワクしちゃうなぁ。


「でも皆さんが、おっしゃっていた通り、少し寒いのですね」


そんな環境で、俺がいつも御者をやっているんですけどね!


「これが夏なら、少しは涼しいのでしょうけれど、今は秋ですものね」


そうなのだ……この小説始まって以来、確か……季節の話題になりました。


「やっぱり、ちょっと寒いかな、毛布でも出してもらおうか?」
「はい、助かりますわ!」


そんな感じで、しばらく走っていると――周りの景色も、左程良い訳でもなく飽きたようだ。


「少し、体が冷えて参りましたので、中に戻らせて頂きますわ!」


そう言って、メテオラが中へ戻っていった。


きっと、もう誰も座りに来ないだろう。


何故って?


だって寒いから!


車とは違うのだよ!車とは!




はぁ、こんなの10日も繰り返すのか。


俺、耐えられるか心配です!


途中で、おなじみ野営場所にも何度か停泊し、そして遂に馬車は国境へ辿り着いた。


いつも思うけど、旅の情景とか本当に適当だよね!


 前に言っていたが、関所は無い。
本当にあっけなく?
あっさり国境を越え、次第に道は険しくなっていく。


 やっぱ、アルステッド国の初代さんは偉大だね!
国境を越えた途端、道は田んぼの、あぜ道を広くした程度の道に、切り替わった。
何、この道、ガタガタが凄いんですけど!


ちゃんと道路位は整えようよ!


しばらく走ると、道は少し狭くなり、峠に差し掛かる。


 成る程、国境を越えて少し走ると、山脈の稜線に差し掛かる。ここからが峠道になる訳ね。うちの馬車が大き過ぎて落ちないか、心配だが最悪はクロがなんとかしてくれると思うし、フロストさんの馬力で引っ張りあげてくれるかも知れないしね。


 国境まで7日、悪路を走破する事3日で、漸く、ブリッシュ王国の王都へ到着した。
旅の途中の、野営とかの話は無いのかって?
不味い食事の話とか……話して欲しいですか?


うち、料理人居ませんから!


王都の門は、大使の案内があるので荷物検査も無く、あっさり通された。


 王都は賑わっているのかと言えば、あんまりと言うかね、この国、何でこんなに錆びれているの、アルステッドの王都の方が、メチャメチャ賑わっているんですが!
露天では、獣人を縄で縛り付けて、店番をさせているし、街の至る所で、鞭で殴られている獣人を見かけた。


 途中で兎の獣人を見かけた。
小さい女の子の手を、お母さんがギュッと握って、警戒しながら歩いている様に見受けられたが、すぐ細い路地に入っていってしまった。


 この国の獣人差別は、かなり激しいらしく、街で見かける獣人は皆、首輪をつけて力仕事や臭い仕事とかを、させられている様だった。


 もうね、あまりにも酷くて、タマちゃんに見せられないよ!
丁度タマちゃんは、寝ていたから良かったけどさ。


 王城に到着し、王のヘンリー・ギルバート8世との謁見まで、待合室で待機。メテオラ以外の女性陣は、落ち着き無くウロウロしっぱなしで、タマちゃんはさすが幼女ですね。はしゃぎまくっていました。


 執事に呼ばれ、護衛騎士らしき騎士と共に、謁見の間へ入ると――正面に中肉中背の髭だけはかっこよく伸ばした王様と、その左に王妃、右側に第一王子から順に並んでいた。


「そなた等が、新しくアルステッド国、西方の辺境伯に任ぜられたコータ・ミヤギ一行であるか。此度は遠路、遥々よう参った大儀である!」


 だからさぁ、俺貴方の部下でもなんでもないんですけど!
流石に、首飛んだら痛いから言わないけどさ。


本当に、簡単な通過儀礼だけで謁見が終わり、盛大な歓迎会とやらになった。


「うわぁ、このお肉柔らかくて美味しいですね!」
「本当だに!」
「タマでも、ちゃんと噛めるにゃ!」
「私は、もう少し油がのっていた方が……」
「私も、このような柔らかいお肉は、初めてですわ」
「何の肉なんだろうね?」
「あはは、これはですな、この国の特産の、兎の子供を使った肉でして、大きくなると肉質が硬くなるので、小さい子供を調理しているのですよ」


大使が、さも自慢げに語ってくれた。


「それは羨ましいですね。うちの領地の近くは、魔獣が多くて……あまり兎は取れないんですよ」


そんな話から、


「では明日にでも兎狩りでも如何ですかな、馬で追って弓を射るだけなんですがね、中々すばしっこくて難しいですが、楽しいですよ」


 そんな誘いに乗ってしまった事が、今後の問題に発展するとは、その時は誰も思っても見なかった。


 翌朝、皆を引き連れて、狩場だという草原に来てみると、そこには昨日街で見かけた兎獣人の親子が居て、馬で追い掛け回されていた。


 え?


まさか昨日食った肉って……。




「うっぷおぇぇぇぇぇぇー」




 盛大に、皆で吐いた。



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