竜神の加護を持つ少年

石の森は近所です

3.やって来ました異世界??

 目が眩む様な光が収まるとそこは奥深い山脈だった――。


 周りを見渡せど山、山、山。
 あ……遠くの方に湖っぽいのが見えた。


「ちょ……クロ、ここ何処?」


 さっきまで俺の右側に居たクロが居ない――。
 さすがにこんな山の中に独りじゃ詰んだ。
 そう、思っていると頭の上から声がした。


「コータよ何を焦っておる」


 首を目いっぱい上に反らすとそこには、全長100m、全幅50mはありそうな巨大な漆黒の竜がいた。
 頭のデカサだけでも大型ダンプ位ある。
 俺は声も出せない、夢でも見ているんじゃなかろうか……。
 戸惑っているとクロらしき竜が言う。


「この姿こそ我の本来の姿よ!コータの生まれた世界の時の姿は幻覚魔法と縮小魔法で目立たぬ様にしておったからな」


 それにしても訳がわからない。
 そもそも母さんは傷ついたオウムだと思って保護した筈だった――。
 声には出さずに考えていると、内心を見透かした様に……。


「確かに傷ついておったからの……」


 傷付いていたって、こんなデカくてミサイルでも死な無そうな竜が傷を追ってオウムに変化って。
まったくもって…… 信じられん。


「信じられなくても事実だ! 受け入れろ」


 受け入れろって言っても……なんで俺の考えている事が分るんだ?


「この姿の時は、主と認めた者と思考がリンクしておるからな、隠し事など出来んぞ?」


 えっ……俺からは考えが読めないんだけど……。


「未熟な子供の精神で、我の思考とリンクなど出来る訳がなかろう?」


 なかろうって……。
 じゃ俺だけ考えが読まれるって事?


「まぁそう言う事じゃな。だが、主であるコータを害する事は竜神である我には出来ぬからのぉ」


 なんで害せないの?


「我はこの世界の他の神とのいざこざで、傷を負って治療の為にコータの世界に非難したからな、向こうの世界で主人と認めた以上、その頸木はコータの命尽きるまで永遠である」


 なんか言っている事が良く分らないが、まぁ俺の味方ならいいかな?
 クロが呆れ顔の様な顔をしてこちらを見ているがその眼は優しげだ――。


「それでこれからどうするの?」


 思考が読めるらしいが、取り敢えず物足りなさを感じたので聞いてみた。


「うむ、まずは住処を作らねばならないな」


 家か! でも材料とかどうするんだろう?
 14歳の子供にそんな知恵も体力も当然技術もないよ――。


「家といえば洞穴にきまっておろう!」


 いやいや……流石にこんな山奥で洞穴住まいは無いでしょうよ。


「ん、この先の湖の近くに良さそうな洞穴があるぞ! 人間もいるみたいだし行ってみようではないか」


 だから洞穴は……って人間?
 こんな山奥の湖に人間が住んでいるの?


「うむ、我の遠視によれば人間のオスが30人とメスが3人、獣人が2人おるな」


 クロからすると人間は男女じゃなく、雄雌なんだ――。
 と言うか……獣人? あのネトゲで出てくる獣人がいるの? この世界には――。


「あー、コータが家のTVで遊んでいたげーむにも出てきておったな。あっちの世界にも獣人がおるものだと思っていたが……」


 いやいや……リアルじゃ居ないし。ゲームの話だって架空だし――。


「そーなのか? 魔王やらエルフやら獣人が出ていたんで、てっきり居るものだと思っておったわ」


 クロは傷ついて森林公園に転移してその後、家で保護された後は――。
 ずっと自宅警備員だったから、ゲームを真実だと思った訳だ。


「自宅警備員は余計だが、コータの母君の出す飯があまりに美味だったからな、外に出る気すら起きなかったわ」


 ガハハと豪快に笑いながらそんな事を言う。
 魔王、エルフが居るものって事は……この世界には?


「当然おるに決まっておろう」


 決まっているんだじゃねーよ!


 まぁその話はまた後でじっくりするとして。
 まずは人の居る場所に行って見るか。
 でも巨大な竜が人間の前に出て大丈夫なのか? と考えていると――。


「我の様な竜神がこのサイズで人前に出たら畏怖と恐怖でショック死するやも知れんのぉ」


 駄目じゃねーか!


「だが我には幻影の魔法とサイズ変化の魔法があるからな」


 そっか、それならオウムに変化してもらえば!


「オウムの姿はコータの世界だけの変化だ。この世界ではピクシーサイズの竜も、この様な山奥にはおるからな、もっとも滅多にはお眼にかかれない筈だが……。今回は湖の近くまで行ったらそれに変化してれば問題なかろう」


 そんなご都合主義なと思いながらもクロの意見に同意する。


「じゃコータよ、我の頭に乗るが良い」


 なんかネトゲの、異世界ファンタジーそのものの様な感じだけど悪くない。




 ワクワクしながら頭に乗り込んだ。

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