竜神の加護を持つ少年

石の森は近所です

2.突然の邂逅

 うちの両親は二人共、宮城県の出身では無い。


 父は20代の頃に家族を亡くしており、親戚付き合いも無かった事で、転職の多いサービス業について各地を転々としていた。
 ちょうどその頃、その勤務先のお店に、児童養護施設で育ち学費を稼ぐ為、アルバイトの面接に来た母さんと出会ったらしい。
 二人とも両親がいないもの同士惹かれ合うものがあったのだろう。


 二人の子供は俺一人。
 両親はもう一人は欲しかったみたいだったが……。
 こればかりは神のみぞ知るで、生憎と子宝には恵まれなかった。


 両親が残した、わずかな貯金と生命保険は入った。
 両親の車に追突した大型トラックの運転手は交通刑務所に収監されていて、慰謝料を支払う余裕も貯金も無いらしかった。
 両親を売ったお金みたいな感じがして……。
 支払われても受け取りたいとは思わなかっただろうけど。
 別に、14歳の俺には親が残してくれた貯金だけでも大金だった――。


 ただ肝心の住居が問題だった。
 借家住まいだったため家賃は払えても――。
 14歳の子供の一人暮らしを懸念した大家が契約更新を断ってきた。
 宮城でも田舎のこの地域には児童養護施設などは無い為、学校の先生からは仙台にある施設を紹介された。


 ある程度の荷物を整理しベランダから外を眺めながら隣のクロに話しかける。


「なぁクロ、なんでこんな事になったんだろうな……両親も天涯孤独だったし、神様って何か俺に恨みでもあるのかな?」


 瞳からぼろぼろ涙を流しながらクロに問いかける。
 どうせいつもの様に――。
 クロは応えてはくれないだろうと思って何気なく言った言葉だった。
 だが、予想に反して……。


「神など人間の事など気にかけん、人間が蟻を気にしないで踏んづけて歩くのと何も変わらん」


 隣から聞こえた聞いたことの無い、威厳のありそうな声が……。
 声の出所を注視する。
 そこにはクロしか居ない――。
 驚きで声も出せない俺にクロが言う。


「そんなにこの世界の神が収めるこの星が嫌いか? なら我のいた世界に行くか?」
「えっ……クロってオウムだよな? なんで普通に喋っているの?」
「我の現在の姿は幻影なり、我のいた世界に行けば真実の姿を見せよう」


 突然の事で、瞳から溢れ出ていた涙も止まってしまった。
 仙台に行ったら友達とは恐らくもう会えなくなる。
 ならいっその事クロの冗談? に付き合ってみよう――。


「じゃクロ、その世界なら俺でも幸せになれるかな?」
「幸福かどうかなんてものは歩んだ人生の結果にすぎん。ただ少なくともこの世界の神よりもマシな神が治める世界ではあるな」


 その言葉を聞いて決断する。冗談でも夢でも現実でもどうでもいい!
 この偉そうな話し方のオウムに付き合ってみよう。


「じゃその世界に行くよ!」
「我が主たるコータの願い確かに受諾じゅだくした」




 クロの厳かな声と共に視界が光に包まれた。

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