チートで勇者な魔神様!〜世界殺しの魔神ライフ〜

solbird

死合

side:エレナ

(これは…何?)

十字架に磔にされた自らの体など気に止まらないほどの光景が目の前には広がっていた。

(無茶苦茶…)

足元に広がる謁見室の床は、血の海となっていた。否、今も尚血の海はどんどん広がり、深くなっている。
真っ赤なカーペットに血がかかり、その血をまた新しく血が塗り替えていく。
その上で繰り広げられている戦いは、おおよそ人間には不可能であろう戦いであった。

魔神と魔神。
その凄まじく凄惨な戦いは、同じ魔神でも頬を引き攣らせるであろうほど血にまみれていた。

吸血鬼という種族の特徴は血の魔法を扱えること、そしてその圧倒的な治癒能力だ。
今目の前に繰り広げられているのはその力のぶつかり合い。
血反吐を吐こうが、腕が折れようが、首が折れ、首がちぎれようが関係ない。
すぐに治るのだから。

「バケモノ…」

少女の唇は震えていた。





side:ツカサ

「おおおおおおおおおおおお!!!!!!」
「おらああああああああああああ!!!!」

ヴェルスターの顔面を潰すと、自分の顔面に蹴りが入る。
ヴェルスターがツカサの頭を一蹴りで千切ると、ヴェルスターの足が吹き飛ぶ。
そんな戦いが、かれこれ十数分間行われていた。

「ハハハハハ!!!楽しいな!彗星よ!」
「楽しくなんざねぇよ!このクソ野郎!!」

白金色の髪と赤い瞳を持つ吸血鬼の魔神ヴェルスターと、赤黒い血の鎧《彼岸花》を纏っているツカサ。
互いの拳がぶつかると互いの腕が潰れ、互いの蹴りが交差すれば互いの足が千切れる。

ツカサは1度体勢を立て直す為に後ろへ跳ぶ。
ツカサはスキルを複数同時に発動させて何とか戦えている。
だが、ヴェルスターが手加減しているのは明白。できれば手加減している内に殺したいが、難しいだろう。
ならば、できるだけ魔力を温存しながら殺し合う他ない。

(クソっ!フェンの魔石も後少しだ!)

ツカサはフェンの魔石から魔力を補充しながらなんとか戦っていたが、それももう少しすると難しいだろう。

「彗星!俺の仲間にならないか!?お前とならいい殺戮ができそうだ!!」
「断る!」
「なら仕方ない…そらぁぁ!!!」
「グブッ…!!」

ヴェルスターのフックが脇腹に刺さり、抉れた腹から内臓が吹き出すが、それもまた瞬時に再生される。
ツカサはお返しだと言わんばかりにヴェルスターの右腕を掴んで引きちぎると、その引きちぎった腕でヴェルスターの腹の引き裂く。

どちらも互角の戦い。
だが、ヴェルスターが『手加減して』だ。
少しでも本気を出されれば負けるのは目に見えている。

(…手段は選んでられないか……)

パンドラを開ける決意を決める。
だが、先手を打ったのはヴェルスターであった。

「そろそろ本気を出そう」
「!?」

ヴェルスターは自らの刀を自身の腹に突き刺す。そして、グリグリと何度か捻って掻っ切るように抜き放った。
すると…

「その刀…魔剣とかそんな名前だろ?」
「ああ、俺の愛刀。"魔剣ブラッドイーター,,だ」

その刀からは先程とは比べ物にならないほどの威圧感が発せられ、刀身が伸びている。
ツカサは思わずその魔剣を鑑定した。

《魔剣 ブラッドイーター》
この世界では数少ない魔剣の内の1つであり、使い手の血と腸を吸い取ることで真の姿を現す。
真の姿を現したこの魔剣は血を吸う事でステータスを上昇させる。

「チートだな、ほんと」
「俺が最強たる所以の1つはこの剣だ。この剣で何百という神を切り捨てて来た。貴様に勝ち目はない」

ヴェルスターが向けた剣先からは凄まじい魔力がオーラのように溢れ、肌がピリピリと感じる程の殺気が放たれていた。

「行くぞ!」
「くっ…!」

ツカサはヴェルスターが振るった魔剣を人形の腕でガードする。だが…

「何!?」

ツカサの血の鎧は何の抵抗も無くスルリとヴェルスターの刀身を通した。
そしてツカサはある事に気付く。

(あの魔剣、《彼岸花》の血の鎧すら吸ってやがる!!そんなのアリかよ!)

あの魔剣がある限りツカサはトゥループラチナの力を使えない。

「《竜聖機鎧》!!」

ツカサはバックステップで距離を取りつつ鎧を呼び出すが…

「遅い」
「ガッ……ハッ…!」

魔剣は《竜聖機鎧》の装甲を貫き、ツカサの胸に突き刺さっていた。
ツカサは壁に磔にされ、ヴェルスターがツカサの頬に手を当てる。

「今からなら遅くは無い。俺の眷属となれ。お前ほどレベルが高いと強制的な"眷属化,,はできないからな…」
「グッ…断る!」

ツカサはヴェルスターの顔面に唾と一緒に血を吐き掛ける。
だがヴェルスターに気にした様子は無く、自身の口元に付着した血を舐めとった。

「ならば…死ね」

ヴェルスターはツカサの胸に刺さった魔剣を抜き取り、凄まじいスピードでツカサを切り裂いた。
ツカサは瞬く間にミンチのようになるが、不死であるツカサは死なない。
だが、ヴェルスターは不死との戦い方を心得ているようで…

「《氷結魔法:アイス》」

ツカサはミンチの状態で氷漬けにされ、意識が落ちていく。

(このままだと不味い!)

パンドラを開けるしか無いだろう。
だが、何を取り出すかで大きく結果が変わって来るだろう。

("無双魔導外骨格ハンニバル,,ね……)

精神どころか魔力や肉体まで汚染すると書いてあるが、物騒なのしかないのでまだマシなのはこれしかないだろう。
ツカサは少しだけ躊躇いながら、パンドラの箱を開けた────





















真っ黒なボディ。
ゴリラのような上半身と、兎のように太い太ももはどこか袴のようにすら見える。
頭部は卵のように丸く、側面に耳のような突起物が後ろに突き出しておりウサギのような見た目だが、そんな可愛らしい存在ではない。
頭部の中央で光る1つの赤いライトが目のように薄暗い部屋で不気味に光っていた。

「なんだ?それは」

両手に握られたトンファーがギシリと鳴る。
瞬間────





「GRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRYYYYYYYYYY!!!!!」


謁見室の床が爆ぜ、凄まじい魔力が放出された。









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コメント

  • ノベルバユーザー240181

    最高

    2
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