チートで勇者な魔神様!〜世界殺しの魔神ライフ〜

solbird

ヴェルの闇

エレナはあの後も少し取り乱したがなんとか落ち着きを取り戻し、ツカサ達はエレナに説明を求めた。
すると、エレナは語り出す。
アカツキが封印された時の事や、エレナが知る限りの今の現状等だ。

「元々、私とヴェルちゃんは神と魔神の戦争で知り合った友達で仲間なの。そして、戦争は神が勝った。でも、生き残った私達はなんとか逃げ延びて戦争から生還したの」
「すげぇな…」
「神から逃げられたとは……」

神から逃げるのは並大抵の事ではない。
何故ならば、神は魔神と同じく特殊な力を持つ物が大量にいる。
その中には索敵や追跡に優れた者もいるというにも関わらず生き延びたのだ。

「その後は大変だったな…逃げて逃げて逃げて……そしてヴェルちゃんが貴族の体を借りて逃げてた時に、アカツキちゃんに出会ったんだよ」
「…え」
「今思えば、その頃からヴェルちゃんはおかしくなってたんだろうね…ヴェルちゃんはアカツキちゃんに嫌な目を向けてた。魔神としての力が欲しいのもあっただろうけど、それよりもアカツキちゃん自身を欲しがってた気がする」
「………」

ツカサの心に昏い感情が芽生える。
自然と拳を握る力が強くなり、そのあまりに手が軽く震える。

「だから…アカツキを封印したってのか」
「……そう。死んだフリして罪を着せさせ、しばらく封印して心が壊れた頃に助けに行って仲間として迎え入れる…って言ってたけど、あの目はもっと違うものを見てたね…!!」

ツカサの全身から殺気が溢れ出す。
瞳が狂気に狂ったように昏く、赤い眼光が零れる。
部屋の中に緊張感ピンと張り詰め、エレナの額に冷や汗が現れた。
だが、次の瞬間起こった現象で空間を支配していた緊張感は霧散した。

「ツカサ様」
「…!」

アカツキに頭を抱かれる。
アカツキの豊満な胸が顔に押し付けられ、頭を撫でられていると心が段々と落ち着いてくる。

「大丈夫、私は大丈夫ですから…」
「…すまん、取り乱した」

アカツキの胸クッションから顔を出すと、アカツキの可愛い顔が現れる。

「私はツカサ様の物です」
「ありがとう……すまん、続けてくれ」
「あっ…はい」

エレナは呆気に取られたような表情からハッとした表情になり、首をブンブンと振って続けた。

「アカツキちゃんの話はこんな所かな。その後もずっと逃げ続けて…とある1つの街に辿り着いたの」
「それがこの国か」
「うん。でも確かにそうだけど、正しくは無いかな」
「どういう事ですか?」

アカツキがエレナに疑問を投げかける。
アカツキはエレナに恨みなどは無いようだ。
…ヴェルとやらには怯えているようだが。

「この国は、最初私達が来た頃はただの街だったの。そこから私達がどんどん発展させていって国になった。いわば、私達が作った国なんだよ」
「そうだったのか…」

いや、冷静に考えれば違和感は無いかもしれない。何故ならアカツキが封印されたのはかなり昔だ。
それは1000年など容易に超える程前だろうからそれだけの時間があれば国になっていても不思議ではない。

「そして私はこの前、とある計画を聞いたんだ…ホムンクルスを吸血鬼の血液供給源にして兵士を吸血鬼にしようって計画。家族はおらず、感情が存在しないホムンクルスなら誰かが悲しむことは無いって言われて渋々協力したのに…まさか本物の人間を…」
「ああ、使ってるみたいだな。エレナは牢獄エリアまで行ったことはあるか?」
「…そういえば無い。この先は汚いからっていつも管理人さんに通せんぼされてたから……!」
「故意だな。素晴らしいくらいクズクズしいやつだ」

兵士の吸血鬼化に反対しなかったのも恐らく死ぬ訳ではなく、この国の守りを固められるから…と言った調子で説得されてしまったんだろう。
この子はこの国の事を誰よりも想っている。
だが、ヴェルとやらは全く違うようだ。

(まるで道具扱いだな)

上に立つ者としての資格が無い。
クズ中のクズだ。
そして、エレナの話を聞いて予想がついた。
この国が武器防具を密輸入しているのは戦争なんかの為じゃない。

(アカツキが仲間になるのを拒否した時の保険だ)

どこまでもクズ野郎だ。
アカツキに惚れた者同士だからこそ分かるこの思考に吐き気がする。
ツカサの目が据わり、殺気が漏れ出る。
だが今回は自重して殺気を抑えた。

「すまんなエレナ」
「?何がすまないの?」

エレナが不思議そうな顔をしてツカサを見上げる。ツカサはその顔を真正面からしっかりと見つめて言った。

「とりあえず、ヴェルとやらを殺すのは確定だ。悪かったな、宿まで連れて来て」


エレナはショックを受けたような…それでいて諦めたような、複雑な表情を浮かべていた。

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