チートで勇者な魔神様!〜世界殺しの魔神ライフ〜

solbird

月明かりの勇者様

「あの人…どこかで見たことある気がするんだよね…」

彼女は眠たげな眼を擦りながら唸る。
誰かは分からないが、とても大切だった人と雰囲気が似ている気がする。

「まあ、思い出せないものはしょうがないよね」

彼女は大きく欠伸をし、城の中を散歩する。
彼女はこの城から出る事ができない。
否、出させてくれないのだ。

「ヒーローでもやって来てくれないかなぁ」

一晩だけでもいいから外へ出たい。
それは彼女の願いだった。
だが、それが叶わぬ願いだと言うのは自分で分かっている。何故なら城門前は吸血鬼の兵が守っており、本でしか見たことの無い高位の冒険者という存在でも彼ら吸血鬼を何人も一度に相手取るのは不可能だろう。
それに、彼ら吸血鬼はアンデッドであるため、感情が無い。
彼女のユニークスキルも効かないのである。

「はぁ…」

ため息が溢れる。
分かっているのだ、彼にとって私はもう仲間ではない事を。
私は所詮道具に過ぎない。

「勇者様…」

エレナはポツリと呟く。
何故かは知らないが、この言葉を言うと心が落ち着くのだ。

そして月の光を見上げて…目を丸くした。

「シケたツラしてんな」

月明かりを背にし、藍色のマントをはためかせるツカサの姿があった。
月明かりに照らされた銀色の仮面がギラリと輝いている。

「何でここに…もう帰った筈じゃ…」
「あー…重要人物っぽいから地下から出た後、本気で気配を消してつけてたんだよ。悪かったな、ストーカーみたいな真似して」
「い、いや…」

エレナは呆然とする。
彼がずっとついてきていたことには特に驚いてはいない。
1番の理由は、彼が1番来て欲しいタイミングで1番来て欲しいシチュエーションで現れた事だ。大切だった人と雰囲気の似ている彼はまるで勇者様のようで…

「お願い…」
「ん?」

エレナは熱っぽい瞳で両手を組んでこう言った。

「私をここから連れ出して!」
「………えええええええぇぇぇぇぇ!!!?!」


「チートで勇者な魔神様!〜世界殺しの魔神ライフ〜」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

  • 颯爽

    ええええええ!笑笑

    1
コメントを書く