チートで勇者な魔神様!〜世界殺しの魔神ライフ〜

solbird

稽古

〜訓練10日目〜

「よーし、今日は二人一組の組手形式で訓練だ。自由に二人組作れー…とは言わんぞ?俺が決めた組み合わせで行なってもらう」

ルールは簡単。
魔法班は魔法班と、近接戦闘班は近接戦闘班とで二人一組を作り、組手形式の戦闘を行う。
近接戦闘組は木製の武器で、魔法組はただの魔力の光の玉で行なってもらうので怪我はしない。
そして、戦闘が終わったら対戦相手の得意な点と不得意な点を紙に書いてもらう…というものだ。

「十数人ほど最後の1つを理解してない奴がいるみたいだから、理由を説明しよう。理解出来てる奴らも答え合わせとして一応聞いておいてくれ」

最後の「相手の得意な点と不得意な点を紙に書く」というのは大事な事だ。この訓練において1番大事と言っていいだろう。

魔法職のみならず、戦士職や斥候職等も戦闘には少なからず頭を使う。
特に相手の弱点を見極め、相手の得意な立ち回りをさせないというのは強くなるのに必要不可欠な技術。その技術の基礎は戦闘を行いながらの観察他ならない。
ツカサはその観察能力を鍛えようとこの訓練を思い付いたのだ。

「お前らは勇者の強力なスキルを持っているが、もし相手も同じくらい強力なスキルを持っていたとすれば、勝敗を分けるのは技術と観察だ。それくらい戦闘と情報というのは切っても切り離せないものなんだよ」
「他にも意味はあるぞ。互いの弱点の補強や、長所の把握。情報交換によるコミュニケーションでの連携強化とかな…色々メリットあるんだぞ?」

ツカサが説明を終えると理解出来ていなかった勇者達も成程、と首を縦に振っていた。
ツカサは全員この訓練の意図が理解出来たことを把握すると、組み合わせを発表した。
すると、お互いの相手を理解した者から順番に訓練場のグラウンドで各々組手を始めた。

「サカツキさん」

またもや後から声が聞こえた。
レシィだ。

「どうしました?」
「あの…私の相手は…?」

おやおや、勇者殿は相手がいないようだ。
それもそのはず、レシィの相手ができるのはこの場において1人しかいないのだから。

「目の前にいるじゃないですか」
「え?」
「相手はこの、俺が務めます」

後輩勇者に稽古を付けてやるとしよう。
ツカサはレシィに正面から向き合い、両手を広げる。

「かかってこい」
「!!!?」

ツカサが放った殺気を受け、レシィは一歩退こうとするも、根性を入れて力強い一歩を踏み出した。
その後は簡単だ。
勢いに任せて前進すればよい。

「はああああ!!!」
「…やはり抜けるか!」

ツカサはレシィに少し違和感を感じるも、気にしない事にしてレシィと鍔迫り合いになる。
ツカサは少し力を込めて押し返そうとした……その時。

「なっ!?」

「何か」に阻まれた。
まるで見えない壁に当たったかのように。

「ふっ…!」
「くっ!」

ツカサは違和感を無視するべきでは無かったと反省し、先程までの2倍の力で無理やり何かを破壊し、レシィが後ずさる。

(何が起こった?)

今の抵抗は明らかにレシィの筋力によるものでは無いだろう。ならばスキルだろうか?

「はぁ!」
「ほいっ」

めげずに斬りかかってくるレシィの木剣をはじき続ける。
大した威力は無い癖に木剣と木剣が触れ合う度に手がピリピリする。
まさかこれは……

(退魔の力……それも微弱ではあるが、魔神に影響を与えるレベルで強力な力か…)

これほど強力な力となると勇者としての力かあるいは……

「考え事をしている暇があるのですか!!」
「すまんすまん。ガキ共の今日の夕食を考えててな」

ジト目で見てくるレシィにバカにしたような表情で軽口を返しながらも、裏で眼光を鋭くさせる。
だが、瞳の奥に一瞬鈍い眼光が出てきてしまったのかレシィがドッと冷や汗をかいて後退する。

(おっと…今のはミスったな)

レシィの腰が引けてしまっている。
そんなに怖かっただろうか…

ツカサは顎に手を当てて考える。

「もういいや、貴方の弱点と長所は分かりましたし。これ以上試合は無理そうですし」
「待っ…待て!」
「1つ」
「!?」

ツカサはレシィに木剣を突きつける。

「剣筋が正直すぎる」
「うっ…」

ツカサは剣を突きつけたままレシィの弱点をつらつらと言っていく。

「2つ、たまに動きが大仰だ。騎士系の貴族かなんかに教わった動きか?無駄な動きがたまに出る」
「3つ、身体能力に持っていかれがちだ。もっと体を乗りこなせ」
「4つ、力に頼りがちだ。強者ならもっともっと頭を使え」
「5つ、空気に呑まれやすい。もっと冷静に戦え」

「うぅぅ……」

彼女が今までで1度も無いくらい、つらつらと欠点を言うツカサにレシィはもう涙目だ。

「だが…」

責めるだけではダメだ。

「剣に迷いが無い。日頃の鍛錬による自信か?いい剣だ」
「………!!」

責めてから褒めるからこそ、向上心のある生徒というのは伸びるのだ。

「はい!!」

(まるで先生だな…)

ツカサは内心苦笑いを浮かべ、天を仰いだ。

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