チートで勇者な魔神様!〜世界殺しの魔神ライフ〜

solbird

善悪の定義

side:勇儀

その時、自らの意識の低さを思い知った。
昨日は訳も分からないまま倒された。強いのは分かった。だが、頑張ればあれくらいできると思っていた。

(違う…)

サカツキさんはもっと絶対的で…理不尽なものだ。殺気を当てられて本能が理解したのだ。
自分は主人公では無いと。

「あぁ…」

だが、主人公でないなら世界を救っちゃいけないのか?そんな理不尽認めない。
僕には立ち上がる理由があるんだ。

「僕は…この世界の人々を救いたいんだああああああああああ!!!!」

僕は震える膝に喝を入れ、目の前の理不尽に向かって走り出した。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

side:ツカサ

「ん?」

殺気を振り切って走ってくる勇者が1人いた。
まさか抜ける奴がいたとは。

(昨日のイケメン勇者君か…)

どうやら世界を救う者としての覚悟はあるようだ。だが…

「実力が伴ってないんだよ」
「ぐっ…!」

ツカサは勇儀が振り下ろしていた剣を蹴りで上に弾き、頭の上の高さでキャッチする。

(いい剣だな…)

ツカサが勇者君の剣をマジマジと眺めていると、下の方から声が聞こえた。

「………うんだ…」
「ん?」

声が小さくて聞こえない。

「世界を…救うんだ……」
「ハァ……」

ツカサは半目でため息を吐き、勇者君の髪を掴んで顔の高さまで持ってくる。

「勇者君、世界を救いたいのか?」
「ぐっ…そうです……世界を…救いたいです」

「ヒーロー気取りがあんまり調子に乗らない方がいい。目先の悪を狩るだけで世界が平和になる訳じゃねーんだぞ?」
「それでも…正義が悪に負ける訳にはいかない…だから、強く……」
「ハァ……」

今日はこの世界に来て1番ため息が多い日な気がする。
ツカサは勇者君の頭をグイッと自分の顔の近くまで持っていき、正面から目を睨みつける。

「いいか?お前はな、今のまま行っても世界を救う事なんざ出来やしねぇよ」
「くっ…だから、強くなりたいです…」
「そうじゃねぇよ」
「?」

ツカサはキョトンとした顔の勇者君に向かって言葉を紡ぐ。

「この世界には正義と悪が存在するが、それの定義には2種類ある。世間の善悪の定義と個人における善悪の定義だ」
「世間における善悪…これはお前の掲げる随分と崇高な善悪だ。悪い奴が悪、いい奴が正義というものだ。ここまでは分かるな?」
「(コクリ)」

勇儀が頷いたのを確認し、ツカサは話を続ける。

「次に、個人における善悪の定義…これは人それぞれだ。自分にとって都合のいい奴が正義と言う者がいれば、勝った奴が正義だと言う者もいる。お前はどっちの善悪の定義を掲げて世界を救おうとしているんだろうな?」

「もちろん…自分の意志と定義で世界を救おうと…「んな訳ねーだろ」!?」
「お前は世間における善悪の定義に取り憑かれて世界を救おうとしている。ロクに世界を見てねークセにな」

コイツの正義は薄っぺらいのだ。
正義だ正義だと言って掲げるだけで中身はスカスカだ。

「いいか?正義を語るなら世界全体を見ろ。そして正義と悪を見分け、己で判断して正義を掲げろ。そうせず正義を掲げて悪を討ったところでロクな結末なんてありゃしねぇよ」

実際、俺は知らない間に世間の善悪に取り憑かれ、後悔した。
こいつはまだ若い。取り返しならいくらでも効く。

「自分の正義なんて簡単に見つかるもんじゃねーだろうさ。一生掛けても見つからないかもしれないさ。だがな、せめてその時その時の善悪の判断は自分でしろ…後悔する事になる」
「サカツキさん…」
「今日の授業はここまでだ。ガキなんだからお昼寝してな」

ツカサは勇儀の髪を掴んでいた手を離し、勇儀の意識は暗闇へと落ちていった。

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コメント

  • 真砂土

    王様殺気で死んでない?

    1
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