チートで勇者な魔神様!〜世界殺しの魔神ライフ〜

solbird

お姫様のお目覚め

目を瞑り、立ったまま寝たような状態だったツカサが目を覚ます。
《竜聖機鎧》は解けてしまっているようだ。

「…戻ってきたな」

ツカサはだるそうに首を回し、小気味よい音を鳴らす。目の前には髪をたなびかせるいつも通りのサティナの姿。
その目は濁っておらず、真っ直ぐな瞳をツカサへと向けていた。

「…ありがとうございます」
「何がだ?」

感謝を告げるサティナにツカサはとぼけて返す。それを見たサティナはクスクスを笑みを零し、顔を横に振る。

「とぼけても無駄ですよ。…もう一度、ありがとうございます」
「…どういたしまして」

ツカサとサティナはしばらく見つめ合い、耐え切れなくなって同時に吹き出した。

「プッ…あっははは!なんで黙るんですか!」
「クッカッカッ!それを言うならお前もだ!」

2人でひとしきり笑い、大きく深呼吸して息を落ち着かせる。
話を切り出したのはツカサだった。

「ふぅ…今はどんな気分だ?」
「ふふっ…最高です!」

ツカサは、そうか…と腕を組み、満足そうに首を縦に振る。

「あ、あと…」
「ん?」

サティナが言いずらそうに手を上げる。
ツカサは腕を組んだまま、顎を上げて先を促した。

「助けてもらってて無礼だとは思いますが…勝負の決着を付けたいなー…なんて」
「………」

ツカサは面食らったように目を開き、呆れた顔を浮かべる。
ツカサの表情を見てサティナはしどろもどろになるが、それを落ち着かせるようにツカサは微笑んで返事を返した。

「いいぞ。かかってこい」


パアアアァァァァァァァァン!!!!
それは瞬き一回分にも見たぬ一瞬。
ツカサの手のひらに収まっているサティナの拳。一瞬遅れて周囲に風圧が発生する。

「いきますよ!」
「もう来てんじゃねぇか」

2人は獰猛な笑みを浮かべ、試合が再開される。狂気とも呼べるほどの闘争心を瞳に浮かべ、2人は笑顔で殴り合う。

「女の子の顔を殴るなんて酷いですよ!」
「てめぇはもう魔神だろうが。顔に一発入れられたぐらいでピーピー言うんじゃねぇ!」

実際サティナの顔に傷は無い。
シールドが防御しているためだ。
そもそも魔神の防御力は魔法使いであっても半端ではないため、顔を殴ったところで大したダメージにはならない。

…ツカサが本気で殴れば話は別だが。

「さっきまでのは本気じゃ無かったんですか!?」
「意識あったのかよ!たしかに、スキルは使ってなかったな!!」

スキルというのは強力だ。
先程まではパッシブ能力のみを使っての戦闘だったが、今は無詠唱化したアクティブスキルを一つだけ使って戦っている。
それだけでここまで違うのだ。

「産まれたてのヒヨコごときに負けるわけにはいかないんだよ!それに、お前のためにも一度力の差を見せつけてやらんと…な!!」

ツカサのスキルによって強化されたアッパーがサティナの鳩尾に叩き込まれ、サティナが空中に打ち上げられた。

「《ストライク》」

魔法陣がサティナの腹部に展開され、その瞬間サティナの体が衝撃を受けたように吹き飛ばされる。

「うぐ…カハッ…!!」

サティナの体はリングの床をバウンドし、端っこギリギリで止まった。
サティナはなんとか立ち上がるが、足が震えている。憤怒のスキルで無理矢理引き出されていた筋力の反動や、ツカサから受けたダメージの影響だろう。

「まだ…やれる…っ!!」

サティナは震えて今にも崩れそうな足をなんとか動かし、駆け出す。

「倒れそうじゃねぇかよ…お前はよくやった。休め」

ツカサはサティナの下顎に裏拳を掠らせて意識を刈り取る。
リングに倒れるサティナの体。
ツカサは無言で拳を空へと突き上げた。


一瞬遅れて…


『き、決まったァァァァァァ!!!!!勝者、サカツキ選手ゥゥゥゥ!!!!途中で試合の動きが無くなった時はどうしたものかと不安になったが、最後にはしっかりと魅せてくれたぁぁぁぁぁ!!!!』

歓声が闘技場に響き渡り、ツカサはそれを背中で受け止めながらサティナをお姫様抱っこをしながら退場する。

「サティナ。いい試合だったぞ」

ツカサは腕の中で眠る少女に笑いかける。
少女の寝顔は笑っていた。

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