チートで勇者な魔神様!〜世界殺しの魔神ライフ〜

solbird

介錯

「これは…」

ツカサは目を見開く。
これは魔神カインの記憶。

「目が覚めたら憎んでた人間の赤ん坊の体。しかも自分じゃ動かせなくて、もう1つの魂が体を動かしてるってか…」

笑えない…非常に不憫だ。
見た目は完全に人間であり、(実際はライカンスロープだが)あれほど憎んだ相手の体に入るのはさぞかし苦痛だっただろう。

体の所有権すら無かったのだから。
当時は相当悔しかったのだろう。カインの悔しそうな思念が記憶から流れ込んでくる。

だが。

「…?少し感情が変化した?」

成長する自らの体を見守る内に、愛情が芽生えたんだろう。
だんだんと記憶から流れ込んでくる感情が柔らかいものへと変化していく。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

俺が生まれ変わってから10年が経った。
この体の名前はサティナと言うらしい。
自分で動かせない上に話すことすらできないから自分の名前という実感は一切無いが…

「あら!サティナちゃん!今日も可愛いわね!!」
「ありがとう!おばちゃん!!」
「サティナちゃん、今日も眩しいね〜将来が楽しみだよ。ほれ、キュウリが取れたんだ!もってけ!!」
「おじちゃんありがとう!!」

ふふふ…そうだろう、サティナは可愛いだろう………ハッ!?俺は一体何を…!

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

10年の間に随分と親バカに変身したようだ。
ツンデレのオッサン…おえ。

「おっ?」

どす黒いオーラに覆われている小さな蒼の光。
サティナの魂だ。どす黒いオーラはカインのもの。おそらく、あまりにも強力すぎる魔力に侵食されているのだろう。

(さて…どう調理するか……)

ただサティナから魔神のオーラを引き剥がすのは簡単だ。だがカインの魂が死ねば、力が放出され、また同じ事が起こる。
これを起こさないようにするにはサティナにカインの力を適合させるしかない。
だが、その間にどれだけの人が死ぬか分かったものではない。

『…悩んでいるようだな』
「カイン…」

カインの思念が目の前に現れる。
どうやらもう殆ど力は残っていないようで、吹けば消えてしまいそうだ。

『サカツキ殿、俺を殺せ』
「何?」

カインはいきなりとんでもない事を提案してきた。
確かにカインを殺し、カインの魂をサティナの魂に融合させれば能力の制御方法を本能的に理解し、すぐにこの状態は収まるだろう。
だが…

「それは最終手段だ…俺の目的は困っている魔神を助ける事。魔神を殺して魔神を助けるのはできればしたくは…『サカツキ殿』

カインはツカサの言葉を遮り、優しい表情で言葉を紡いだ。

『いいんだ、サカツキ殿…愛する娘を助けられるなら、死に損ないの私の命などいくらでも捨てられる』
「カイン……」
『これ以上娘の苦しむ姿は見たくない…殺してくれ』

ツカサは目を瞑り、少し考えた後、クトゥグアを抜いた。

「いいんだな…?」
『ああ、十分生きた』

ツカサは息を吐き出し、クトゥグアを構える。

「最後に言うことは?」

カインは少し考えるように首を傾げ、やがて笑顔で答えた。

『…アンタの名前は?』

ツカサは少し驚き、目を見開いた。
そして獰猛な笑みを浮かべ、クトゥグアを振り上げる。

「カカッ…魔神カイン!俺の名前はツカサだ!!地獄に行っても覚えてやがれ!!」

ツカサは本当の名をカインに告げ、クトゥグアを振り下ろす。

『ハッ!地獄で会ったら殺り合おうぞ!』

カインもまた、獰猛な笑みで答える。
────そして次の瞬間。カインの首は落ち、一瞬でチリチリと焼滅する。

「あっつ!あっつ!!…ふぅ……」

ツカサは無事カインの魂を回収し、一息つく。カインの魂は全盛期のチリ程度だ。
だが…それでもなお、黄金に力強く輝き続ける彼の魂は彼が間違いなく強者だったと証明してくれる。

「これをサティナにぶち込めば仕事は終わりだな」

ツカサはサティナの魂へと近付き、黄金色の光をかざす。


「《魂魔法:融合》」


カインの魂がサティナの魂へと吸い込まれていき、魂が渦巻く。

《魂魔法:融合》

その名の通り、魂と魂を融合させる魔法だ。
ツカサの竜聖機鎧もこの魔法によって実現されている。
ツカサにとって最も馴染み深い魂魔法と言っても過言ではない。

「変な混ざり方しないようにしねーとな…」

ツカサは突き出した掌の先の光に集中し、細心の注意を払って魂魔法を操作する。

────そして…

「…調理完了!」

一際強く光が輝いた。
そして、光が収まっていくとそこにあったのは…


「サティナ。それがお前の新しい魂だ」


蒼く輝く光の玉、その中心には黄金に輝く小さな光。それはまるで光り輝く星のようであり、美しかった。
どす黒いオーラはもはや消え去っている。サティナが暴走することは無いだろう。

「綺麗な魂だな…おっと、用事が済んだなら早く出ないとな」



ツカサはもう少し見ていたいという欲求に後ろ髪を引かれながら、現実世界へと帰還した。

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