チートで勇者な魔神様!〜世界殺しの魔神ライフ〜

solbird

ランクアップ試験

試験日当日。
俺達はギルドの訓練所に集合していた。
訓練所には試験を見に来た冒険者達や俺達と同日に試験を受ける冒険者が集まっている。

丸い直径20mほどのグラウンド、その外側は少し高くなっており、そこから階段状に椅子が置かれている。
ちょっとしたスタジアムだ。
グラウンドにいるのはランクアップ試験の受験者十数人と試験官同数。
これから挨拶をし、1人ずつ試験を行うらしい。1番強そうな試験官が前に出てくる。

「これより、冒険者ギルドランクアップ試験を開始する!試験官、受験者!礼!」

グラウンドにいる全員が礼をする。
いやはや、こういうのは久しぶりだ。

「では、まず上銅ランク試験から始める!それ以外の受験者は下がっていろ!」


こんな感じで試験は進み、最後は俺の番。
え?アカツキとフェンはどうなったって?
上手く手加減して違和感無く勝ったよ。


「さて、最後は俺達みてぇだな!」
「ですね」

(うわぁ…ゴリラだぁ…)

確か、試験開始の挨拶をしていた1番強そうな奴である。
色黒でスキンヘッド、身長は大体190cm、身につけた鎧の下からは隆起した筋肉が覗いている。

「俺は黒鉄のバルンってんだ!よろしく頼むぜ!彗星さんよ!」
「サカツキです。よろしくお願いします」

向こうさんはこっちを知っているようだ。
にしても…黒鉄か…分かるわぁ…

「噂は聞いてるぜ?フウを襲ったドラゴンを1人でやったんだってな?強いって聞いたぜ?」
「いえ、そんな事無いですよ。噂に尾びれがついて過大評価されてるだけで「いいや」

言葉を遮られる。

「アンタは強い…俺より遥かにな。なるほど…謙遜すんなよ。その言葉遣いだって偽物だろう?素でやろうぜ?」

見破られてしまったようだ。
であれば、この笑顔は気持ち悪いだけだろう。
ツカサは作った笑顔を崩し、無表情になる。

「おっ?それが素か。いいじゃねぇか!ちびっちまいそうだ」
「ふん、素って訳じゃない。ただ、感情を表情に出すのが苦手なだけだ」
「だが、その顔は重宝するだろ?どんな表情でも貼り付けられるんだから」
「まあな」

基本、ツカサは感情を表情に出すのが苦手だ。故に、普段は自分の感情を自分の表情に貼り付けている。
その為、アカツキやフェンと接する時の表情は偽物では無い。だが、別の表情を貼り付けようと思えばいくらでもできてしまうのだ。

「そんなことはどうでもいいだろう?やるぞ」
「おうよ。胸借りるつもりでやるわ」

そして、試験開始の鐘が…鳴った。


────刹那。
バルンが斧を構え、距離を詰めてくる。
(速い)
だが、人間にしては…だ。
ツカサは竜機聖鎧を展開し、土魔法で剣を生成。即座に斧を防ぐ。
その瞬間、甲高い金属音が訓練所に鳴り響き、風圧が大地を舐めた。
金属と金属が互いを押し込み合い、ギリギリと嫌な音を発する。

「こっちが押されてる鍔迫り合いなんてしたのは久しぶりだ!流石は竜殺し!彗星なんて名前が付くのも納得だ!」
「アンタ…上金ランク冒険者らしいが、実力は黒金ランクだろう?」
「ほう…気付いたか」

実際は「気付いた」ではなく、「気付いていた」が正しい。
既にこの訓練所にいる人間は全て鑑定済だ。
バルンも例外ではない。
バルンのステータスの内訳はこうだ。



バルン

年齢:35

種族:人間

Lv.89
評価ランクA
生命力:2859  魔力:786
攻撃力:2765  防御力:2859

スキル:斧術Lv.6、身体強化Lv.1、防御Lv.3

称号:筋肉ダルマ、黒鉄、試す者



人間からすれば驚異的な強さなのだろう。
ちなみに上金ランク冒険者の平均Lvは60だということは鑑定で色々な冒険者を調べた結果から分かっている。つまり、奴は上金ランクの平均を大きく越えているのだ。

(これは…計画を少し変えないといけないな)

バルンを応援する歓声が非常に多い。
恐らく、実力も知れ渡っているのだろう。ここで少しでも目立たず勝つには少し苦戦するフリをしなければならない。

(勝った時点で目立つんだがな…ま、なるようにしかならん。適当にやろう)

ツカサはバルンの斧を剣で押し返し、バックステップで逃れる。
そして開いた間合いを詰めてくるバルンにツカサは剣を投げつけた。

「何!?お前何のつもりだ!?」

バルンは驚きながら、投げつけられた剣を斧で叩き折る。
次の瞬間、バルンの表情がさらに驚愕に染まった。
バルンの視界に映っていたのは剣を投げる姿勢のツカサではなく、剣によって視界が塞がった一瞬で距離を詰め、拳を振りかぶるツカサの姿。

バルンは直感する。
これを食らえば自分は確実に倒れると。

「うおおおおおおお!!!!」

ドッと額に冷や汗を浮かべたバルンは体を横に反らして拳を回避する。
だが、焦りすぎた。
ツカサは素早く拳を引くと同時に左手でバルンの鎧を掴んで回転。
バルンを背負い投げの容量で地面に叩きつける。

「ぐはっ!?」

だが、バルンも簡単にやられはしない。
バルンは地面に叩きつけられた瞬間にツカサの腕を引き剥がし、転がってなんとか距離を取る。
バルンは回転を止め、ツカサを見ようと顔を上げるが…

視界にはツカサのつま先。
バルンは急いで頭を後に反らしてなんとか回避する。

「くっ…!」

ツカサの足が掠ったバルンの鼻先から赤い液体が流れ出すが、バルンは流れる血を気にとめずツカサの足を掴んでツカサを地面に叩きつけた。

「ふっ…!」

しかし、ツカサは地面に叩きつけられる寸前に指で大地を掴み、ブレイクダンスのように回転してバルンを壁へと放り投げる。
バルンは尻尾を掴んで投げられたトカゲのように乱回転しながら壁に激突。

「ぐぇあ!!!」

バルンは潰されたカエルのような声を上げてズルズルと壁から地面にずり落ちていく。

(終わったかな…)

ツカサは頬をパンパンと叩き、表情を切り替えた。
…しかし、ツカサが後ろを向こうとした瞬間、バルンが壁を支えにして立ち上がる。

「あ"あ"ぁ"…まだだぁ…」
「うっへぁ…まだ立つのかよ…」

タフな奴だ。普通の人間なら内臓がグチャグチャになって死んでるだろうに。

「ほいっ」

ツカサはバルンに飛び膝蹴りを決めてトドメを刺す。
バルンの頭が壁にめり込み、バルンの体から力が抜け落ちた。

「あっ…やりすぎた…ま、いいか」

────しばし、沈黙が続き…審判の声が沈黙を遮った。

「しょ…勝者!サカツキ!!」


数秒経ち…歓声が上がった。



「「うおおおおおおおおお!!!!!」」

訓練所が震えるかのような大歓声だ。
観客席はハイテンションである。

「すげぇ!アイツ…バルンに勝ちやがった!」
「歴史に残るぞ!!金ランクが黒金ランク相当の実力者を倒すなんて!」
「彗星って二つ名は伊達じゃなかったんだな!」

観客席は大賑わいだ。
やはり、バルンは黒金ランク級の強さだったらしい。

(んー…ま、いっか。もうどうにでもなれ〜)


ツカサは審判に歩み寄り、笑顔で尋ねる。

「審判さん。これで今日は終わりって感じでいいですかね?」
「はい。明日、冒険者ギルドにて上金ランクのギルドカードをお渡ししますので明日また来ていただければ」
「分かりました。では、失礼します」

ツカサが審判の元を離れると、アカツキとフェンが駆け寄ってきた。

「ツ…サカツキ様!お疲れ様です!」
「ああ、アカツキもお疲れ」

おい、アカツキ。今ツカサって言いかけただろ。

「おつかれさんツカサ!いや〜いい試合だったぜ!」
「おう、ありがとよ」

フェンは相変わらずだ。
ツカサはアカツキの頭を左手で撫で、フェンと右拳を合わせる。
こうして俺達のランクアップ試験は何事も無く終了したのであった。

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コメント

  • 落合  葱

    色黒…スキンヘッド…エギrあ、頭がぁぁぁぁぁ!!!

    1
  • solbird

    ペンギンさん

    フェンはこの時点だとまだサカツキ呼びに慣れてないので『相変わらず』という表現を入れました。
    わかり辛くてすいません。

    周囲の反応としては一瞬引っ掛かりはすれども特に気にしてなかったということで

    1
  • ペンギン

    フェンは「ツカサ」って言ってるんですけど...大丈夫なんですか?

    1
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