無能な俺がこんな主人公みたいなことあるわけがない。
二章 2 『魔法騎士団』
「・・・よし、行っていいぞ」
「どうもー!」
アーバンカルの門を馬車が通り抜けていく。
「ふう・・・よかったぁ。タクミさんもう大丈夫ですよ!」
衛兵から離れると少女が安堵したように荷台に話しかける。
「いやー良かった!ちょっと一人じゃ通れなくて困ってたんだ。おかげで助かったよ、ありがとうなマリー!」
荷台の中の荷物に紛れ込んでいたタクミが、隙間から顔を覗かせた。
「いえいえ!こちらこそ危ないところを助けていただいたのでこのくらい全然いいですよ!」
タクミは襲われていた少女を救った礼として、荷台に紛れこんでアーバンカルに一緒に行ってほしいとお願いした。
金髪のポニーテールの少女、マリーは素直にこれを快諾した。
「それにしても通行証になるものを持ってないなんて、それは怪しまれて当然ですよ?私も助けてもらってなかったらきっと協力してませんもん!」
「ハハ・・・まぁちょっと色々あってね、そういうの持ってないんだ。ちなみにマリーの通行証は何なんだい?」
「私の家は運送屋を仕事としているので私の村を出発した時に、もらった通行手形ですよ」
マリーは黄色い紙をタクミに見せた。
「へぇー。これが証明になるのか。他にはどういうの方法で証明したらいいんだ?」
「そうですねー。仕事関係以外なら自分の家の家紋を見せたりとか生まれの村の証明書とかですね。有名な名家の人にもなればそれこそ顔だけでも検問を通れるみたいですよ」
「まさに顔パスってやつだな。それにしてもヤベーな。俺そのどれも持ってないぞ・・・」
「どれも持ってないって・・・タクミさん一体何者なんですか?」
「うーん・・・ちょっと説明しにくいんだけど、今は魔法使いなりたてってところだね。」
「えぇ!?魔法使いなりたてって・・・さっきタクミさんの魔法見ましたけどなんかすごい魔法使ってましたよね?」
「え?やっぱりあれ凄かったの?俺あんまり人の魔法と比べる機会なかったからさ、正直自分でもよくわかってないんだよね」
「ホント凄かったですよ!私もあまり詳しくないんですが、あれなら魔法騎士団にもきっと入団できると思いますよ!」
ん?そういえば前ローゼに聞いたことあるな・・・なんでも厳しい入団試験があるとか。今の俺にはその試験もパスできるかもしれないかも・・・
タクミはあることをふと思った。
「なぁ・・・その魔法騎士団ってどうやったらなれるんだ?」
「え?たしか定期的に大きな都市で行われる入団試験をクリアすれば入れるって聞いたことありますよ」
「定期的って大体どのくらいなんだ?」
「その年でバラバラみたいですけど大体半年に一回とかそのくらいだったと思いますよ」
「そうなのか。ちなみに次の入団試験はいつなの?」
街道を進んでいた馬車が止まる。何かを見つけたマリーが道沿いに立ってる看板を指さす。荷台からタクミが顔を出し指さした先を見る。
「今日みたいです」
そこには
魔法騎士団入団試験 本日正午開始
という文字が書いてあった。
「マジかよ!?もう始まってるのか??」
「えーと・・・どうやらあと一時間くらいで始まるみたいです。」
マリーは胸元にぶら下げていた懐中時計を見た。
「あと一時間って!どこに行ったら受けられるんだ!?」
「おそらくあの建物じゃないですかね?」
マリーは看板のさらに奥の方を指さした。
そこにはひときわ大きな建物が見え、ステンドグラスの丸窓と三角帽子のような屋根が、さらにその上には剣つるぎをモチーフとしたような十字架が見えた。
「あそこがアーバンカルにある魔法騎士団の本部です。だからおそらくはあそこじゃないかなと・・・」
「あれか!?あそこにいけばいいんだな?よしっ!俺はここでいいよ!」
荷台から慌てて飛び降りるタクミ。
「とりあえずちょっとあそこに行ってみることにしたから!ここまでありがとうなマリー!仕事頑張れよ!それじゃな!」
「あっ!あそこに行くって・・まさか入団試験受ける気ですか!?おそらく受け付けには身分証が・・・」
走っていくタクミに声をかけるマリー。しかしもうタクミは遠くにいて声は届いて無いようだった。
「って、行っちゃった・・・なんだろう、不思議な人だったな」
-------------------------------------------------------
「おっ、着いた。ここだな入団テストのある場所は・・・」
目的の魔法騎士団本部に到着したタクミ。入り口から見上げるとさっき遠くから見えた十字架が真上に見えた。その高さはかなりのものだった。
「まだ10分くらいしかたってないだろうからまだ間に合うだろ?さて受け付けはどこかな?」
建物の前でキョロキョロするタクミ。
とりあえずちょうど中から出てきた、制服らしき服装をしている眼鏡をかけた若い男に狙いを決めた。
「あのーすいません。ここ魔法騎士団入団試験の会場で合ってます?」
「わっ!・・・ハ、ハイ!そうですよ。試験を受けられる方ですか?」
いきなり声をかけられビックリする男。
「そうなんです!まだ間に合いますかね?」
「えぇ。ギリギリですけどまだ大丈夫ですよ。とりあえず中にどうぞ」
良かった・・・どうやら間に合ったようだ、安心するタクミ。しかし中の窓口で言われる言葉に焦る。
「ではこちらに名前を書いていただき、なにか身分を証明できるものを見せてもらえますか?」
ここでも身分証かよ!?どんだけ身分大事なんだよ!?
普通に考えたら当然のことである。ましては治安を守るための部隊にどこの誰ともわからない人間を入れるわけがない。
ヤバい・・・また持ってないってってバレたら騒ぎになる!
「あー・・・。ハイハイ・・・身分証ね・・・あれ!?あれれ!?」
わざとらしく自分の服をいろいろ探すふりをする。
「どうされました?」
「いやーどうやら身分証を無くしたみたいで・・・おかっしいなぁー。さっきまではあったんだけどなー?」
しらじらしい演技が続く。受付の男からは疑いの目を向けられているのがわかった。
「うーん・・・それは困りましたね。身分を証明できなければ試験を受けることは出来ませんよ?」
「マジで!?それは俺も困るよ!?どうしても試験受けたいんだけどどうにかならない!?」
「と言われましても、規則なので・・・」
「そこをなんとかお願いできませんかねー??」
窓口でタクミと男の押し問答が続く。
「どうしたんだい?何か問題でも?」
タクミの後ろからどこかで聞いたことあるような声がした。
「どうもー!」
アーバンカルの門を馬車が通り抜けていく。
「ふう・・・よかったぁ。タクミさんもう大丈夫ですよ!」
衛兵から離れると少女が安堵したように荷台に話しかける。
「いやー良かった!ちょっと一人じゃ通れなくて困ってたんだ。おかげで助かったよ、ありがとうなマリー!」
荷台の中の荷物に紛れ込んでいたタクミが、隙間から顔を覗かせた。
「いえいえ!こちらこそ危ないところを助けていただいたのでこのくらい全然いいですよ!」
タクミは襲われていた少女を救った礼として、荷台に紛れこんでアーバンカルに一緒に行ってほしいとお願いした。
金髪のポニーテールの少女、マリーは素直にこれを快諾した。
「それにしても通行証になるものを持ってないなんて、それは怪しまれて当然ですよ?私も助けてもらってなかったらきっと協力してませんもん!」
「ハハ・・・まぁちょっと色々あってね、そういうの持ってないんだ。ちなみにマリーの通行証は何なんだい?」
「私の家は運送屋を仕事としているので私の村を出発した時に、もらった通行手形ですよ」
マリーは黄色い紙をタクミに見せた。
「へぇー。これが証明になるのか。他にはどういうの方法で証明したらいいんだ?」
「そうですねー。仕事関係以外なら自分の家の家紋を見せたりとか生まれの村の証明書とかですね。有名な名家の人にもなればそれこそ顔だけでも検問を通れるみたいですよ」
「まさに顔パスってやつだな。それにしてもヤベーな。俺そのどれも持ってないぞ・・・」
「どれも持ってないって・・・タクミさん一体何者なんですか?」
「うーん・・・ちょっと説明しにくいんだけど、今は魔法使いなりたてってところだね。」
「えぇ!?魔法使いなりたてって・・・さっきタクミさんの魔法見ましたけどなんかすごい魔法使ってましたよね?」
「え?やっぱりあれ凄かったの?俺あんまり人の魔法と比べる機会なかったからさ、正直自分でもよくわかってないんだよね」
「ホント凄かったですよ!私もあまり詳しくないんですが、あれなら魔法騎士団にもきっと入団できると思いますよ!」
ん?そういえば前ローゼに聞いたことあるな・・・なんでも厳しい入団試験があるとか。今の俺にはその試験もパスできるかもしれないかも・・・
タクミはあることをふと思った。
「なぁ・・・その魔法騎士団ってどうやったらなれるんだ?」
「え?たしか定期的に大きな都市で行われる入団試験をクリアすれば入れるって聞いたことありますよ」
「定期的って大体どのくらいなんだ?」
「その年でバラバラみたいですけど大体半年に一回とかそのくらいだったと思いますよ」
「そうなのか。ちなみに次の入団試験はいつなの?」
街道を進んでいた馬車が止まる。何かを見つけたマリーが道沿いに立ってる看板を指さす。荷台からタクミが顔を出し指さした先を見る。
「今日みたいです」
そこには
魔法騎士団入団試験 本日正午開始
という文字が書いてあった。
「マジかよ!?もう始まってるのか??」
「えーと・・・どうやらあと一時間くらいで始まるみたいです。」
マリーは胸元にぶら下げていた懐中時計を見た。
「あと一時間って!どこに行ったら受けられるんだ!?」
「おそらくあの建物じゃないですかね?」
マリーは看板のさらに奥の方を指さした。
そこにはひときわ大きな建物が見え、ステンドグラスの丸窓と三角帽子のような屋根が、さらにその上には剣つるぎをモチーフとしたような十字架が見えた。
「あそこがアーバンカルにある魔法騎士団の本部です。だからおそらくはあそこじゃないかなと・・・」
「あれか!?あそこにいけばいいんだな?よしっ!俺はここでいいよ!」
荷台から慌てて飛び降りるタクミ。
「とりあえずちょっとあそこに行ってみることにしたから!ここまでありがとうなマリー!仕事頑張れよ!それじゃな!」
「あっ!あそこに行くって・・まさか入団試験受ける気ですか!?おそらく受け付けには身分証が・・・」
走っていくタクミに声をかけるマリー。しかしもうタクミは遠くにいて声は届いて無いようだった。
「って、行っちゃった・・・なんだろう、不思議な人だったな」
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「おっ、着いた。ここだな入団テストのある場所は・・・」
目的の魔法騎士団本部に到着したタクミ。入り口から見上げるとさっき遠くから見えた十字架が真上に見えた。その高さはかなりのものだった。
「まだ10分くらいしかたってないだろうからまだ間に合うだろ?さて受け付けはどこかな?」
建物の前でキョロキョロするタクミ。
とりあえずちょうど中から出てきた、制服らしき服装をしている眼鏡をかけた若い男に狙いを決めた。
「あのーすいません。ここ魔法騎士団入団試験の会場で合ってます?」
「わっ!・・・ハ、ハイ!そうですよ。試験を受けられる方ですか?」
いきなり声をかけられビックリする男。
「そうなんです!まだ間に合いますかね?」
「えぇ。ギリギリですけどまだ大丈夫ですよ。とりあえず中にどうぞ」
良かった・・・どうやら間に合ったようだ、安心するタクミ。しかし中の窓口で言われる言葉に焦る。
「ではこちらに名前を書いていただき、なにか身分を証明できるものを見せてもらえますか?」
ここでも身分証かよ!?どんだけ身分大事なんだよ!?
普通に考えたら当然のことである。ましては治安を守るための部隊にどこの誰ともわからない人間を入れるわけがない。
ヤバい・・・また持ってないってってバレたら騒ぎになる!
「あー・・・。ハイハイ・・・身分証ね・・・あれ!?あれれ!?」
わざとらしく自分の服をいろいろ探すふりをする。
「どうされました?」
「いやーどうやら身分証を無くしたみたいで・・・おかっしいなぁー。さっきまではあったんだけどなー?」
しらじらしい演技が続く。受付の男からは疑いの目を向けられているのがわかった。
「うーん・・・それは困りましたね。身分を証明できなければ試験を受けることは出来ませんよ?」
「マジで!?それは俺も困るよ!?どうしても試験受けたいんだけどどうにかならない!?」
「と言われましても、規則なので・・・」
「そこをなんとかお願いできませんかねー??」
窓口でタクミと男の押し問答が続く。
「どうしたんだい?何か問題でも?」
タクミの後ろからどこかで聞いたことあるような声がした。
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