異世界スキルガチャラー

黒烏(クロイズク)

バイオレンス・アウトロー

「さあてと、最後に一回だけ警告して差し上げましょうか。今すぐお帰りください。そうすれば全身骨折は避けられますよ?」

両の拳を打ち付け合いながらイヴはミカエルを挑発する。

「ほらほら、そっちから攻撃していいですよ。ただし、一撃も当たりませんけどね?」

両手を広げて掌を上にし、首を傾げる。
完全に相手を舐めている者の態度にしか見えない。

「調子に乗るなよ、小娘が!!」
「ひゃはっ!危ない危ない!」

超高速で振り下ろされたサーベルを、言葉とは裏腹に余裕で回避したイヴは、一瞬でミカエルの背後に回る。

「んー!やっぱり戦いには緊張感が無いと!はいはいドンドンカモーン!」
「この……!」

ミカエルの剣も異常なほどスピードで振られているはずなのだが、イヴは全て約1秒の猶予をもって避けている。

「うわ、おっそ!500年前なら天界軍の実技試験で落ちるレベルですよこれぇ!」
「小娘……がぁ……!」

ミカエルの攻撃スピードが2倍になった。
が、イヴの回避スピードは4倍になった。

「あっはははははは!!これは笑える!あのミカエルが小娘1人に翻弄されるなんて!」
「天使って時代が進む事にやっぱり弱体化してますよね!ああ、全盛期の戦士さん達は皆私が再起不能に追い込みましたっけ!」

ミカエルの攻撃を全て完璧に避けながら、イヴは嘲笑い続ける。
そして、メリケンサックのはまった拳でミカエルの鎧、腹部をぶん殴った。
鎧の腹部は粉々に粉砕され、腹に直接拳が叩き込まれた。

「ぐ……はぁっ……!!」
「んー!盾やら鎧やらでガチガチに防御固めた人の防具ぶっ壊すのは楽しいですねー!」

イヴはそのままの勢いで腹に回し蹴りをぶち込んだ。
ミカエルの体は数十メートル吹っ飛び、その後地面を転がった。

「弱い!そんなんでよく「ミカエル」名乗れますねぇ!!」
「………この、小娘の格好した……大罪人が」

ヨロヨロと立ち上がったミカエルの目は怒りに満ちていた。
しかし、イヴは1ミリも動揺していない。

「大罪人、結構結構!たった2発でノックダウンしたミカエルサマに比べればまだ無様じゃないですよ?」

人差し指をちょいちょいと動かし、イヴは更にミカエルを挑発する。

「……クク、いいだろう。私を怒らせたこと、後悔するがいい!」

ミカエルの頭上に光る天使の輪、その輝きが増大していく。

「我が中に宿る、天軍の総帥たる天の者の力よ。今、ここに解放を!!」
「【天使聖ノ光輪ミカエルズ・ブライト】!!」

ミカエルの傷が一瞬で完治し、鎧もみるみるうちに修復されていく。
そして、全てが完全に治った瞬間、ミカエルは金色のオーラを纏った。

「さあ、力の差というものを思い知らせてやろう」
「けっ!見掛け倒しはやめた方がいいですよ!?」

イヴは今度は自分から攻撃を仕掛けた。
1秒とかからずこの数十メートルの距離を疾走し、拳を振り上げる。

「フン、所詮は追放者よ!」
「ぶげぇっ!!?」

イヴの拳が当たる寸前に、ミカエルの蹴りが彼女を捉えた。
イヴの小さな体はミカエルより数倍遠くまで吹っ飛んだ。

「……いったぁぁぁい!」
「我はミカエル。天界の秩序と平和を守る者なり。貴様のようなはぐれ者に敗北するわけが無かろう」

そのままサーベルをイヴの胸に深々と突き刺す。

「…え……げぇぇ………」
「この程度では天使は死なん。それは羽も輪も持たぬ貴様でも同じか」

完全に床に串刺しにされたイヴは、目を白黒させながらじたばたもがいている。

「動くな。これ以上抵抗しなければ、片腕か片脚の切断程度で許してやる」
「あへへぇ……そう…ですかぁ……」

しかし、イヴは全く動揺している気配すら見せずに笑顔でミカエルを見つめている。

「貴様、何を面白がっている?貴様の命は、我が手のひらの上にあるというのに!」
「へぇ、そんな風に大天使が上から目線な所はいつの時代も変わんないみたいですねぇ」
「ぷぷ……くくく……あはははははははははは!!!」

そしていきなり彼女は大爆笑を始めた。
その行為は、ミカエルに無意識に恐怖を与えるのには充分だった。

「何がおかしい!!」
「ふふ、何がって?そりゃ1つですよ!目の前の「ミカエル」さんが余りにもアホだって分かったからです!」
「おいで!「スナっち」!!」

イヴの呼び声が聞こえた瞬間、ミカエルの左腕の肘までが切断された。
いや、「喰われた」のだ。

「何ぃぃぃぃ!??」
「ガルルルルルルル!!!」

子犬姿のスナっちが、ミカエルの左腕を齧りとったのだ。

「ナーイス!さて、今のうちに……」

イヴは体からサーベルを引き抜いて投げ捨てると、ヒョイっと立ち上がった。
体に穴が空いているのに、血が一切出ていない。

「スナっちー、もう下がっていいよ!」
「ワン!」

スナっちは元気に向こうに走っていってしまった。
肘から下が消え去った左腕を抑えて膝をついているミカエルを見下ろすイヴ。
その顔から笑みが消え、目が険しく睨みつけるものに変わった。

「ああ!?こんなもんかコラ!!私が何の為に「奪魂魔」なんて配送させたかまだ分かってなかったとはねぇ!」
「貴様……最初から、我々に敵対する気でいたのか!」
「ハッ!今更分かったところでもう遅い!あそこまで成長すりゃ生半可な部隊は全員喰らい尽くせますよ!」

そのままミカエルの腹に数発蹴りをぶち込む。

「ゲブッ!!」
「ほら、分かったらとっとと帰った帰った!向こう帰って腕は治してもらえっつの!!」

最後に一発、側頭部をサックのついた拳で殴り付ける。
「メシャッ」という鈍い音が聞こえ、ミカエルは顔面から出血しながら盛大に吐血して床に倒れた。

「ブバアッ!!」
「うるせーんだよ!オラ、立てよ!立てっつってんだ!!」

横腹にゲシッ、ゲシッ、と蹴りを入れ続けるが、ミカエルが起き上がる様子はない。

「チッ、クソ雑魚が。面倒なことさせやがって」
「よい……しょ」

毒づきながらイヴはミカエルを担ぎ上げる。

「さようなら!一昨日来やがれ!!!」

そのまま真上に向かって思い切りぶん投げた。
すると天井が開き、そのままミカエルを吸い込んで閉じた。

「…………あー、まずは血の掃除ですかねー」
「久しぶりにバイオレンスな気持ちになりましたよ。ったくもー」
「さーて、モップどこにしまったっけかなー」

啓斗たちの「ナビゲーター」。
本名「イヴ・アズラーイール」は、いつもと変わらない表情に戻って、歩き出す。

「ワンワン!」
「あっ、スナっちも掃除、手伝ってくれるの?ありがとう!」















「あの小娘……やってくれる」
「流石は「プリズンコロシアム」の無敗出獄者、と言った所でしょうか」
「奴を褒めるな、吐き気がする」
「これは申し訳ございません。それで、如何なさいますか?」
「あの「支部」の入口は大軍を侵入させられる大きさではありませんし、例の異世界人についても、制約が邪魔をします」
「ぬう、「天使が特殊な加護を施した場所以外の地上に降りれば、能力が消え、更に再び昇天できない」、か」
「どうしますか?」
「…………む、ならばこういうのはどうだ?「異世界人の始末は異世界人にさせる」という案だ」
「………ほう!それはまた!」
「あの異世界人の周辺を徹底的に調べろ。クク、面白くなりそうだ」

「異世界スキルガチャラー」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く