異世界スキルガチャラー

黒烏

ナビゲーターの異世界講座 2

『はいはいじゃあドンドン行きますよ!』
『私が【技能変貌スキルメタモル】のサービスを啓斗様に提供する代わりに、集めていただきたいものの話です』
『「マスターズ・キー」とこの世界では呼ばれてますね。まあ、名前の通り「鍵」でして、結構小さいんですが私にとってかなり重要なんですよ』

一応言っておくが、ナビゲーターはこの約15分の間ほとんど休憩なしで喋りまくっている。

『この世界に5本ありまして、それぞれが重大な役割を持っています』
『1本1本に名前がついており、「ホーリィ・キー」「イヴィル・キー」「パワー・キー」「タイム・キー」「スピリット・キー」です』
『1本1本が半端ない力を秘めてますが、所在がわかっているのは2本だけ。正直、全部集めるのは至難の業です』

そう言ってナビゲーターは頭を掻きながら苦笑いする。

『で、効果なんですが、1本1本また使い方が違うんですよ。具体的な内容は手に入れてからでいいですか? 別に急いでる訳じゃないんで、旅しながら1本ずつ探して頂ければ結構です』
「……そうか。所在が分かってる鍵はどれとどれなんだ?」
『ああ、「イヴィル」と「パワー」です。所在の話はまた機会を待ってからで。今言っても意味ないです』
『ささ、鍵の話は一旦終了です。次は魔法についての解説を致しましょう!!』

ナビゲーターは何やら表のようなものを出現させて啓斗に見せる。

『まず、ステータス画面にも表示されてましたよね。魔法の基本属性は、火・水・風・土・光・闇・無の7つです』
『属性それぞれに適正レベルのランクがあります。ランクが高いほど対応する属性の威力も高くなる仕組みですね』
『ま、啓斗様は魔法の適正とか関係なくガチャで出せば使えるようになりますから、お仲間さんとか敵とかの得手不得手を観察するのに役立つんじゃないでしょうか』
『で、氷とか雷とかそういう魔法は基本属性の複合やらで使うんですよ。詳しいロジック教えてもいいですけど、何千通りってありますよ?』
「………遠慮する」
『ですよねー』
『それと、魔法には階級があります。威力で段階分けされてまして、最下級が「初級魔法」で、そこから「中級魔法」「上級魔法」「超級魔法」「達人級魔法」「戦術級魔法」「厄災級魔法」「禁忌級魔法」の8階級に分かれます』
『例えば【ブレイズ】は初級魔法ですし、ゼーテさんが使ってた【シャイニング・レイ】は戦術級に相当します』
『次にスキルについてですね。スキルは、魔法を含めた「適正がある程度必要な特殊な技」のことです。その上で習得難度が高かったり資質が必要なのが「特殊スキル」で、生まれつきや本当に特別な状態で覚醒したりするのが「固有スキル」です』
『スキルに関してはこの世界では明確な区分があるわけじゃないんです。この特殊とか固有って名称は私が啓斗様のような方々に把握して頂くために用意した名称ですので、あしからず』

そこでようやくナビゲーターは一息置いた。

『ふぅ、ちょっとだけ喋り疲れました。今日はこのへんにしときますか。ということで、はいまたワープ!!』

啓斗はまた視界が眩み、思わず目を閉じた。
また目を開けると、さっきまでいた部屋の中に戻っていた。

「みんなの様子を見に行くか。ついでに朝飯だな」

グイッと伸びをして、啓斗は半壊しつつも機能を保っている城の廊下へと出た。






「ふー、ひと仕事終わったし休憩したいんですけどー……」
「今更なんの御用なんですかねー……わざわざ天界警備隊のボス、ミカエルさんがこんな所に来るなんて」

ナビゲーターが休憩場所にしている真っ白な空間。
その天井らしき場所が扉のように開き、1人の男が降りて来た。
その姿はまさに「天使」と呼ぶにふさわしいだろう。
巨大な純白の翼を背中に持ち、光の輪が頭上に輝いている。
更に、黄金に輝く鎧を身につけており、腰にはサーベルを提げている。
非常に長身であり、顔もかなり端正だ。

ゆっくりと降下して着地したミカエルをじっと見つめるナビゲーター。

(マジでめんどくせぇ。ああいうお偉いさんが私のところに来る時は絶対に私にとって嫌なことが起きるんですよねー)

そんな心の声は一切表情に出さず、ナビゲーターは笑顔でミカエルに声を掛ける。

「おや、ミカエル様ではありませんか。こんな追放の果ての場所にどんな御用でしょうか?」

ナビゲーターの言葉に、ミカエルは低くハッキリとした声で応える。

「貴様の処遇について判断しに来た。話を聞かせてもらうぞ、アズライール・・・・・・
「……懐かしい呼び方ですね。最近は「あの女」とか「小娘」、それ以外には「ナビゲーター」って呼ばれ方しかされませんでしたからね。ちょっと他の方々に注意してくださいよ。連絡してもほとんどの人が態度すごい悪いんですから」
「それは、貴様の罪を考えれば当然のことだろう? 甘んじて受け入れるべきだと思うが」

ミカエルは鼻で笑ってそう言った。

(ああ、嫌だ嫌だ。本当に今の奴らって皆腐ってる。殺してやり……たい……)

内心で毒を吐きまくりながらも、笑顔でナビゲーターはミカエルと会話を続ける。

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